勇者に「レベル」がないっっっっ!?

たじ

第1話

 ゴゴゴゴゴゴッッ!!空では稲光が閃き、黒い雲がいまにも雨を降らしそうなそんな中。


 街はずれの、かつて神殿のあった「聖地」。その聖地で今まさに10年ぶりに召喚術式が組み上げられつつあった。


 …所々には神殿のあった頃の名残である、もとは立派な柱であったであろう白い大理石のような石が散見される。


 そして、これまた白い大理石のような石がびっしりと敷き詰められていたであろう(現在ではそれも長年の風雪ですっかり薄汚れている)かつての大広間では、地面に巨大な方陣が描かれその中心と周りには白いローブ姿の魔導師がなにやら口々に呪文の詠唱を行っている。


 「アァル・リベ・メパートラ!どうか、天空におわします我らが神々よ!邪を滅す光の勇者を顕現させたまえ!」


 魔方陣の中心に陣取った魔導師が一際大きな声をあげた!その瞬間、物凄い雷鳴と共に辺り一面が白く染まった。


 ドーンッッッ!!!「クッ!!」思わず魔導師はきつく眼を閉じ、耳を塞いだ。

 ゴゴゴゴゴッッッ!!空では相も変わらずくぐもった雷鳴が尾を引いている。


 最前、魔方陣の外側に落ちた雷のせいで辺りは未だもうもうと土埃が舞っている。…やがて、少しずつ視界が晴れてゆく。

 果たしてそこには異界から召喚された勇者の姿があった……。


 

「…ここは何処だ?」もうもうと立ち込めた土煙から、姿を現したのはまだ高校生くらいのどこかあどけなさを残した青年だった。


 「おお、勇者よ!我らが下に遣わされた光の者よ!どうか、この邪に侵されし世界を救いたまえ!」魔方陣の中心にいる魔導師逹のリーダーである、白いローブ姿の女が声高く青年に懇願する。


 「…えっ、誰?」キョトンとした顔で一人ごちる青年。


 「主は我ら魔導騎士団が魔王討伐の為、この世界に召喚した救世主である!」なぜか自信満々に胸を反らせる女。


 「ハァッ!?嘘だろ!?これって、まさか……噂の異世界転生!?でも俺死んでないんだけど…。」


 「これから主には魔王討伐の為のレクチャーを行う!然るのち魔王討伐の為、各地を旅してもらうことになる!先立っては、我らが城に来てもらおうか!」白いローブの女は一方的にそう告げると部下に顎をしゃくる。


 「はっ!!」青年の周りにいた同じく白いローブ姿の屈強そうな男逹が返事したか、と思うと一斉に青年に襲いかかる。


 「ちょw待って…」皆まで言わせず男逹は青年をあっという間にふんじばる。


 「暴力はんたーい!!暴力…もがっ!?」…かくして、異世界へと召喚されてしまった哀れな青年は、異を唱える間もなく城へと拉致されたのであった……。

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