第2話 その身の上に何があったのかを推理
警察はこの事件を顔見知りによる犯行と断定している。私もそう思っている。押し込み強盗の類なら300万円が手つかずということはありえないだろう。
警察は被害者の人間関係のラインからいろいろ捜査をおこなったと思うものの、事件発生が2000年で、現在に至るもまだ犯人逮捕とはなっていない。
私が考えるに可能性としては二つ。
〇 警察の捜査対象のなかに犯人は含まれているが、その人物は鉄壁の(偽装した)アリバイ等を持っている。
〇 犯人は被害者の顔見知りであるものの、警察の捜査対象に含まれていない人物
私は二つ目の可能性が高いと思っている。そして三つの犯人像をイメージしている。
可能性の高い…と思っているものから説明していく。
● 不倫トラブル説
不倫というのはその性質上周囲に隠れておこなわれるものだから、当事者以外そのことを知らない場合が多い。だから警察はそのこと自体を認識することができない。
ドラマじみた展開で、現実にもよくあることだとは思うが、被害者が犯人に結婚を迫り、言うことをきかなければ配偶者のところにまで出向いて話をする…とでも言ったのではないのだろうか。それもかなり強く。
しかもそのことは何も事件の日に初めて切り出された話ではなくて、以前から何度も繰り返された会話であり、犯人としてはもうこれ以上先延ばしにできず、かなり焦っていたのではないだろうか…結婚生活と家庭が破綻することに。
犯人なりにいろいろ悪知恵を絞って殺害を検討…そう、不倫の関係だから相手以外に自分の存在は誰も知らないぞ、と。
そして、愛の営みをするような素振りで被害者が油断しきっているところを絞殺。
● 同性の恋人から殺害された説
この説には「え?」と思うわれるかもしれないが、私の推理を聞いてほしい。
被害者は同人漫画の制作を生業としていた。美少年同士の同性愛を題材にした…俗に言う「やおい漫画」を制作していた可能性がある。
この方面は制作者も客層も女性が大半だと思われる。私の手元に確たる統計資料がないので、独断と偏見での推理ではあるが。
購読者や、あるいはアシスタントのなかには、作品に登場するキャラクターの延長線上に作者である被害者の存在があり、性別を超えた恋愛感情が生じていたのではないのだろうか。
つまり熱烈なファンにとって作者(被害者)は二次作品に登場する美少年キャラそのものなわけである。このような心理は常人にはちょっと理解しがたいものがあるのかもしれない。
で、作者(被害者)もそのような作品を手がけているからには、同じような思考の土壌があり、自分自身を作品に登場する美少年キャラと同一視していたのかもしれない。
熱烈なファンと作者(被害者)がどこかで知り合い、そして意気投合して恋人へと至ったわけである。
裏づけもなく想像だけで推理を言っているので本当に申し訳ないが…恋人同士でお互いがアニメの美少年キャラクターになりきったイメージプレイにのめりこんでいたのかもしれない。それは純粋に愛し合うという意味もあり、女同士が男同士の愛を演じる倒錯感もあり、そして作者(被害者)が生業としていた同人誌制作のためのアイディアを生み出す一環でもあったのかもしれない。
お互いが深い思い入れのあるキャラクターのことで言い争いになったのか、あるいは作者(被害者)が新しい恋人を別のファンのなかに見つけだして別れ話になったのか、女同士の感情のもつれになって、結果的に殺人事件と至る…。
警察の捜査担当者はアニメオタクでもない限り「やおい」のことは理解できないだろうし、それに犯人が女だとは思わないだろうから、この方面での捜査には至らなかった…これが私の第二説の概要である。
● 浅い間柄の知人による殺害説
被害者と知り合ってそれほど期間が経過していない者による犯人説である。極端な話、被害者の死亡日にアニメショップ等で知り合った間柄とかいうものだ。
だから被害者の周囲はその存在(真犯人)を認識していない…警察も人間関係から洗い出しができない。
同人作品の元アニメの話題が意気投合して、驚くべきほど急激な短時間に親密な間柄になる…予め断っておくが、この場合、相手の性別は男性である。
そして被害者宅で肉体関係にまで関係が向上したものの、じつは男性の側がその方面のことに未熟で、被害者から耐え難いようなことを言われて頭に血がのぼった。あるいは常人にはどうでもいいようなマニアックな論争でついカッとなってしまったとか…そのようなことが動機で殺害(絞殺)に至る。
正気に戻った男は、自分のなしたことに恐れをなして早々に退散。
しかし、ウィキペディアには死体発見時の状況で、『顔に白い布がかかっていた』と記載されている。これはものの見方のひとつとして…真犯人が被害者に思い入れがあったようにも受け取れる。短期間で知り合った間柄ならそこまでには至らないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます