第41話 最強の力、最高のスキル
「リミオ、やったね……!」
「ええ、あなたたちのおかげよ!」
それはもう嬉しそうに、レイアと人間態のリミオがハイタッチをした。
最初こそは微妙な関係だったのにあんなに仲良くなっちゃって。サーベイさんが見たら喜ぶだろうなぁ。
「はい、フユマも! あなたがいなかったら本当に危なかったわ。ありがとうね」
「ああ」
リミオの挙げた手にパンと叩いた。もちろんレイアにも同様にだ。
と、奥の扉が自動的に開いていく。その奥には見慣れた制御装置がどかんと置かれていた。
しかも、その装置が今までのと比べてやけに大きい。まるで特別版と言いたげだ。
『よくやったな、これで新たな力がフユマに宿る。さぁ、遠慮なくその装置に剣を突き刺すのだ』
「言われなくても。それさえあればエレシュキガルを倒せるんだな」
『絶対とは言えないが……何、貴様ならやれるさ』
買い被られているな。でもそれだけ俺のことを期待しているってことなんだな。
確かにエレシュキガルという魔龍と戦えるのは俺たちくらいだ。ならば突き進むしかないだろう。
それにほんのちょっぴり、ほんのちょっぴりだけど、どんなスキルなのかって期待マシマシだ。
誰にも負けない、それこそ魔龍に対抗できるようなスキル。
一体どんなものなのか確かめたいものだ!
「……頼みますよ!」
期待を込めてソードで制御装置を刺すと、
急に身体がぐらつくのを感じた。
「うっ……!?」
何だこれは……? 立ち眩みでもしたのか……!?
立っているのも困難で、制御装置に寄り掛かるように倒れてしまった。
何か身体が熱い……!
「フユマ!」
レイアとリミオが駆け付けてきたものの、俺は返事することもままならかった。
ファフニールの奴、まさか変なものを仕込んだんじゃないだろうな!? くそっ、こういう時になんてことを……!
「ぐううう……!! うおおおおお!!!」
「!! フユマの身体から!!」
リミオが叫んでいた。
俺にも分かる。自分の身体から赤いエネルギーが放出されていることに! まるで制御されていないエネルギーが外に出されているかのようだ!
これは……これは……!!
――Lv……獲得
――スキル……獲得
――……龍……得
今のは……もしかして。
しばらくすると、身体中に溢れていた赤いエネルギーが消えていくのを感じた。
というかこの感触からして、どちらかといえば体内に収まったと言うべきか……。
『……これは意外だ。フユマは大当たりを引いたみたいだな』
「ファフニール、一体何をしたの……!?」
驚くような声を出すファフニールに対して、珍しく声を荒げるレイア。
『今のは強力な力によって、一時的な身体異常が起きたようだ。それが今のようにようやく身体に馴染んて、体内に吸収されたらしい。フユマ、具合はどうだ?』
「あ、ああ……だいぶよくなったかな……」
『これは我ながら驚いた……今すぐステータスカードを確認してみろ』
そう言われてステータスカードを見てみる。するととんでもないことが書かれていて、俺は目を疑ってしまった。
こんなんのってあるのか……? これは夢なのか……!?
横から覗いていたレイアやリミオも、仰天という文字を最大限に出した表情をしていた。
「何……えっ? 何これ……!?」
「まさかこんなのって……!?」
「ファフニール、これって!!」
『ああ、本物だ。フユマ、貴様はどのハンターよりも素晴らしい力を手に入れたんだ。こんなのを持っているのは、私の下半身をなくした人間くらいだ』
俺はもう一回ステータスカードを見た。
うん、夢じゃない。ちゃんと記載されている。
俺だけの……俺だけの……!
『喜んでいる場合じゃないぞ。エネルギーの影響で枯渇した【エリアポイントテレポート】が使えるようになった。それを使ってエレキシュガルの元へ向かうんだ』
「そりゃあ助かる! じゃあ2人とも、俺の周りに集まって!」
「うん」
実はダンジョン近くの湿地帯まで行ったことあるから、そのまま直行できる。
2人が集まった所で、ファフニールダンジョンからある森に瞬間移動した。
ここがグランドドラゴンが治めるダンジョン……が存在する湿地帯だ。辺りには沼がいたるところに存在し、湿気の影響か苔が地面に生えている。
ここにいるだけでも、湿気特有のムシムシさが伝わってきた。
「こんなところにダンジョンがあるのかしら……?」
「ああ、こっちだ」
リミオに返事したあと、その湿地帯の中を走った。
奥にある丘を越えればすぐにダンジョンが見えるはず。また魔物はダンジョン周辺に集合しているので、この湿地帯にはあまり姿を見せない。戦闘の手間が省けるというものだ。
「……ん。フユマ、音が聞こえる」
「ああ、俺にも分かる」
さっきから聞こえてくるのは分かっていた。それもこの場に似つかわしくない金属音と人の声。
丘を上がっていくと、その音の発生源がやっと分かった。
「ギャアアアアアアアアア!! 痛い!! 助けてええ!!」
「仲間が!!」
「もう諦めろよ!! 早く足を斬るんだよ!!」
「この野郎!!」
戦場だ。
まず数十人のハンターがいる。
そのハンターたちを相手にしているが、ドロドロに腐敗したアンデッド系魔物たち。
ダンジョン前では、その両者の熾烈な戦いが始まっているのだ。そしてその戦況は、魔物の方が優勢であることに他ない。
ある者は、哺乳類系らしき魔物の鋭い牙によって喰らい付かれて。
またある者は小型魔物の群れに囲まれて。
そしてある者は魔物の剣術によって押されている。
そして相手が全員アンデッド系。
弱点の火属性魔法でやられる個体もいるが、それでもアンデッド系特有のしぶとさや数の多さで押されている。
そういった化け物の犠牲者が、周りに転がっているハンターの成れの果てのようだ。
「どうもギルドが招集させたみたいだな。サージア街のハンターは平均30くらいらしいけど、やっぱりアンデッド系が相手だときついか……」
「どうするの? 加勢する?」
「じゃないとこのまま全滅するしな」
リミオに返事しながらロングソードを引き抜く。
さて、ここからだ。今さっきのステータスカードから察するに、これはとんでもない力のはず。それを今この場で出そうとしている。
しかし躊躇している時間はない。
「……ファフニール、感謝するよ。こんな力を授けてくれて」
『礼はいい。それよりも早くスキルを』
「分かっている。【
それはさっきファフニールを呼ぶのとは違い、スキルを意識しての呪文だ。
唱えた瞬間、ロングソードが【
ソードだったそれが、まず俺の右腕を包み込んだ。次に俺の身丈はあるだろう大きさまでに肥大化。
そしてとんでもない……しかし俺たちにとって見慣れた形になった。
そう、ファフニールの頭部だ!
さすがに目に相当するものがなかったり、いくらか細部が簡略化されていたりとそのままではない。これがファフニールの頭部と言われてもピンとくる者はいないだろう。
それを抜きにしてもこいつはとんでもない。何せ龍の頭部を右腕に装着するというイカれたデザインをしている!
「これが……【
『戦闘力については保証しよう。そしてその威力はあらゆる武器を超える。……それよりもフユマ、貴様は何も気が付かないのか?』
「分かっているよ。俺を通してスキルを試しているんだろ。俺を利用しているって」
そんなことなんてとっくのとうに気付いている。
「でもお前は俺にチャンスをくれたんだ。俺はお前と出会えて本当によかったと思うよ」
『……フッ、お人よしが。でもまぁ……嫌いじゃないな』
「……そういうお前も嫌いじゃないよ」
軽く会話してしまったが、そろそろ時間だ。
俺は【
「行こう、レイア、リミオ!」
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