第31話 閑話休題
雲によって空が暗くなっている。その下界に存在する、とある岩山の斜面。
草木が何もない荒れ果てた山肌を、巨大な影がゆっくりと進んでいる。
それは人間にとって害悪とされている魔物……しかも魔物の中でも強大なドラゴンだ。
正式名称は『スカイドラゴン』。
その名を示す通り、空戦に特化した種族の一個体であり、それを示すように4枚の翼を持っている。
決して弱くない個体ではあるが、今の彼は身体中に無数の傷と血を帯びていた。そのせいか空を飛ぶことも出来ず、地面を這いつくばっている
「おのれ……何故俺がこんな目に……」
人間の言葉を発するスカイドラゴン。
彼はいわゆる野良の魔物であり、生まれた当初から1体あるいは仲間数体で生きてきた。これまでに自分を殺そうとしてきたハンターを返り討ちにしたこともある。
しかしやはり数体で生きていくには限界がある。その為、彼は自ら発見したダンジョンを己のものにしようと画策していた。
もちろんダンジョンには、ダンジョンマスターなる『グランドドラゴン』とその部下が居座っている。
そこで彼は同種異種構わず、なるべく自分に賛同する魔物をかき集め、ダンジョンへの襲撃を試みた。
そうしてマスターを討ち取ったあとは自分に従わない連中を粛清し、完全にダンジョンの頂点に立つつもりだった。
しかし……結果は惨敗だった。
ダンジョンマスターのグランドドラゴンの方が、一枚上手だったようだった。必死にかき集めた軍勢は彼の炎によって消されてしまった。
スカイドラゴンはその攻撃から命からがら逃げてきた。そして自分も知らないこの辺境にたどり着いたのだ。
「俺が負けるはずなんてない……俺が……」
未だにスカイドラゴンは、自分の敗北を認めていなかった。
別にそのグランドドラゴンが上位種という訳でもなく、むしろスカイドラゴンと同等の存在だ。その辺理解していたからこそ襲撃していたのだが、どうもそういう訳にもいかず。
だからこそ何故勝てなかったのか、彼には理解できなかった。
しかも身体中に痛みが走っているから、正常な思考も出来ていない。今の彼が支配しているのは、負けたことへの悔しさ、そして敵への憎悪。
「……?」
そんな彼が、ふとあることに気が付く。
この何もない岩肌の山から、妙な
人間ではない……かといって魔物とは違う。色んな生物の匂いを嗅いでいたスカイドラゴンでも、この匂いは初めてのものだ。
スカイドラゴンは匂いがする場所へと向かった。痛みで重い身体を引きずりながら。
そうしてたどり着いた場所には特に何もなかった……かと思いきや、それが地面の中からしてくるのに彼はすぐに気付いた。
不審に思い、地面を鉤爪で掘るスカイドラゴン。
そして地面の中から白い固形のものが出てくる。さらに掘り出してみると、それは何と骨。
巨大な獣の頭部だ。
「何だこれは……」
そのサイズはドラゴンよりも大きい。また骨にも関わらず、言い知れない『何か』を放っている。
スカイドラゴンはその『何か』に疑問を抱いた時、骨に黒いもやが掛かった。
「グ、グワアアアアアアアアアア!!」
誰もいない山に、スカイドラゴンの悲鳴が上がった。
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