第15話 目立ちたがり屋の友人は急展開を迎える


「ギルドに入れば睨まれる、町を歩けば警官に目をつけられる、そろそろ神様にも目をつけられそうで嫌っス~!!」


「異世界版の立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花だな!」


いや違うだろ。ポジティブか。


俺達はトールの一件以降、完全に居場所を無くしていた。

ただでさえ村社会じみたこの国で、それなりの立場の奴をあんな目に合わせたんだ。当然だろう。


「ま、この都全体が俺達に注目してるってわけだろ?たまんねぇな。全裸で歩く?」


「なんでそんなに目立ちたがりなん…?」


「でも姐さんみてると、悩んでる俺達が馬鹿らしくなってきますね。」


「おう。そうだそうだ。この状況を楽しめ!」


何故か一番堂々とした天音がニコニコと楽しそうに話すのを見て、ヒートとチルハは目を合わせて苦笑した。


しかし、この二人もアマネに合う以前はほぼ村八分状態だったという。

弱弱しく見えて、それなりの修羅場を掻い潜ってきたのも想像に難くない。

こんな人間に巻き込まさせて申し訳ないとすら思ったこともあるが、存外、この状況を楽しんでいるように見える。


そんな会話をしつつ、溜まり場となっているヒートの部屋でヒートは筋トレに、天音とチルハは意外にも美容の話といった女子らしい会話をし、俺はそれを眺めると言った三者三葉の過ごし方をしていた。


そんな時


「はーーーーーーーーーーーーーーーーはっはっはっはははは」


あまりにも唐突に

どこからともなくヒートに負けず劣らずの声量の笑い声が聞こえてきた。


誰かが外で騒いでいるのだろうか?

俺はアマネの肩から頭上に登り、窓に目を移す。


「!?」


その信じられない光景にアマネの頭をバシバシと叩く


「痛っ!?なんだよ轟介って、は!?」


アマネに続いて二人も窓の外に目を移す


「飛んでる!?!?」


「いや、ぱらぐらいだーや!?」


そう。漫画の登場人物みたいな仮面をし、スーツを着込む男が高らかに笑いながら、まっすぐ俺達の部屋にめがけて飛んできているのだ。


「何これ!?追撃した方が良い奴!?」


どこからどう見ても不審者である。さすがのアマネも狼狽える。


「いや、ヒート君あれって…」


「う、うんそうっすね、あれは…」


「多分大丈夫やね…」


異世界原住民組が顔を見合わせてなんとも言えない表情で大丈夫との結論を出した。


「信じていいんだな!?信じていいんだな!?」


一人慌てふためくアマネをよそに不審な男はフハハハハハと息継ぎなく笑い続けながらどんどん近づいてくる。


「窓を開けてくれ!Trick ster達!俺の名前はアラン・ビスケス!この街で最もトレビアンな男だ!」


ぐんぐんと近づきながら男は叫ぶ。


「そして貴様たちの頼もしくトレビアンな仲間になる男!!さぁ窓を開けてくれ!!」


「マジ?仲間になってくれんの?」


「そうさ!!トレビアンな活躍をすることを約束しよう!だから窓を開けて…」


「俺達今めっちゃ孤立してんだけど」


「あの、それはいいから窓を…聞いてる?あの窓を!!開けてくヘブゥッッツ!!!!」


アランと名乗った不審な男は見事窓にぶつかりこれまた無様に墜落をした。


妙な間が空く。


「え、なんで開けてあげなかったん…?」


チルハが震え声で言った


「なんか怪しいし…」


「いや、それより助けにいかないとかわいそうッス!!ゴースケさん手を貸してくださいっす!!」


慌ててヒートの肩に飛び乗り、一階に降りて救助をしに行った。


「ふ、やはり一筋縄ではいかない子猫ちゃん達だ…」


思ったより元気だった。


チルハが錬成した絆創膏を鼻に張ってやるが、仮面に絆創膏に顔面が全体的に騒がしい。


「で、なんだっけアレン?俺達のパーティーに入りたいの?」


「ふ、俺が入るべきパーティーかどうか見定めにきた」


「上から目線だな!なんなのお前!?」


自分の行動を振り返ってみると良い。お前もトールと似たようなやりとりをしていたぞ。

すると、人見知りなのかビクビクと天音の後ろに隠れるように座っていたチルハがアマネの服の裾を引っ張った。


「こう見えてこの人めっちゃ実力者やねん…」


「知り合い?」


「ひわっ!いや一方的に知ってるだけなんやけど…目立つから…」


確かにあんなのがギルドにいたら目立つだろうな。奇天烈な仮面にマント。目立ちたがりしかしたがらない恰好だ。


「俺みたいに役立てずパーティーに入らなかった奴とは違って、実力はあるけど変人すぎて癖が強いから入らなかったパターンっスね!本人も特にパーティーに興味を示してなかったんでずっと単独で活動してたんスけど……俺達のパーティーに入るなんてどういう風の吹き回しっすかね」


チルハが小声で耳打ちしていたのに対してヒートが見事に大声で変換してきたな。


「聞こえているぞ!青年!」


だろうな。


「うーーん…二人が言うには実力あるみたいだけどな。こんな怪しい奴を急にパーティーに入れるなんて嫌なんだが」


意外にも天音は難色を示した。誰でもいいわけではないらしい。


「ふ、やはり一筋縄でいかない子猫ちゃんだ…俺が見込んだことがある。」


もしかして彼も結構ポジティブなのだろうか


そんな事を考えていた時、突如、この全身胡乱男は今までの会話の流れを全て無視してとんでもないことを言い放った




「結婚しよう」




…………けっこんしよう……結婚?


「…なんて?」


天音の呆けた声を最後に空間は静まり返った

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