第二章「枯れた夢」1-3
ある母親の手記。
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あれはあの日と同じように小降りの雨が降っている日でした。いつものように買い物に行った時の帰り道、不運にも買い物袋が破れてしまい買った物が地面にいくつか落ちてしまいました。それに直ぐ手を差し伸べてくれた若い女性。今思うと一体いつから居たのか、どこから来たのかと思うくらい唐突にやって来ました。こう言っては失礼ですが最近の若者にしては言葉遣いも丁寧で、何より心優しい方なのだろうと直ぐに感じ取ることができました。私よりも背の高いその親切な女性は傘を持ってくださり家まで付いて来てくれました、久しぶりのささやかな優しさに触れた私は会話は少なかったものの心温まる想いでした。家に着きちゃんとしたお礼を言う間もなくその女性は去ろうとしてしまいます。そして朝から雨が降っていた日にも関わらずその女性は不思議な事に傘を持ち合わせていませんでした。驚いた私は直ぐに「傘、貸しましょうか?」と尋ねるもその女性は振り向いて大丈夫ですと笑顔で言って走り去って行きました。その振り向いた顔を見た時、私はハッとした気持ちにりそれと同時になんだか懐かしさも込み上げてきました、そう、「はな?」と思わず叫びそうになりました。おかしいですよね、はなはもう重ねた歳からしてあんな若いはずないのに。でもきっとはなの成長した姿をもしも見ることができたならあの女性のように美しくなっていたのだろうと思っております、そんな事に思いを馳せるとまた、この文を書いている時でも涙が零れてきそうになります。はな、あなたはどこへ行ってしまったの……お母さん、もう時間がないよ……。
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