第十二話『責任とってよ!』          

秋物語り・12

『責任とってよ!』          


 主な人物:サトコ(水沢亜紀=わたし) シホ(杉井麗) サキ(高階美花=呉美花)




 お店は、シホ(雄貴とラブホ行ったこと)の験直しのためにコスを新しくした。


 まあ、モトモトのAKB風のコスがクリーニングの効かないやつだったせいもあるんだけど、今回は本格的なバーテンダー風。でも、ミニスカでミセパンに変わりはなかった。まあ、クリーニング出来るだけマシというところ。


 前のコスは、みんなの名前入りで、大入りの時に、お客さんにオークションで売って、新しいコスの購入費に充てる。これはメグさんのアイデア。だれのが一番高値で競り落とされたかはナイショ。でも気をよくしたリョウさんは、定期的にコスをオークションに掛ける気になったようだ。

 正直、自分が身に着けていたものを売るというのには抵抗があったけど「下着じゃないし(^▽^)」とサキの一言で、そのへんの感覚は瞬間で無くなる。


 ブログ掲載の写真も、ブログごと新しくするために、全員(女子だけ)揃って、プロのカメラマンに撮ってもらうことになった。


「おはようございま~す」

 現れたカメラマンを見て、驚いた。まさに瞳さんが言っていた、その人だったのである。

「じゃ、カウンターに揃ったところから、選抜は前に。バイトの子は後ろね」

 そう言いながら、メグさんは右端。わたしがセンターになった。

「え、わたしでいいんですか?」

「うん、トコが、一番素人っぽく見えるから。こういう店は、健全さが売りなのよ」


 それから、一人一人の写真も撮った。シェーカー持ったり、スツールに腰掛けてニッコリしたり、一人で十枚ほど撮った。

 この竹内という人は、オールマイティーで、持ち込んだパソコンで、すぐにブログのベースを作ってくれた。さすがはプロで、お店が広く、清潔感溢れる安心な新装開店に見えた。


「う~ん、やっぱ、お店の正面が欲しいですね。お客は、お店の面構え目印に来るわけだから」


 で、わたしとサキの二人が、お店の前で「いらっしゃいませ~」してるところを何枚か撮り、できあがり。


 最初は、シャメや写真が載ることが不安だった。

 なぜって、そりゃあ、だれかがネットで見つけるかも知れないから。

 でも、その心配は、前のブログで反応が無かったことで思い直す。髪型もメイクも変える(わたしは、元来はスッピンだ)ので、分かりはしなかった。


 一通り終わったところで、カメラマンの竹内さんの番号を聞いた。喜んで教えてくれた。


 明くる日の昼過ぎに、さっそく電話をした。

「すみません、リュウのトコです。ちょっとお茶飲みながらお話できません?」

「ああ、いいよ」

 ぶっきらぼーそうだったが喜んでいるのが丸わかりでキモかった。だけど、仕方がない……。


 向かい合わせじゃなく、横に並んで座ったことが、竹内さんの気を良くしたようだ。しばらくは、昨日のお礼や、仕事の話で和ませた。



「Sマンションの8号室の録画メモリー出してほしいんですけど」

 竹内の表情が一瞬で変わった。

「し、知らないな、そんなの」

「瞳に頼まれて撮ったんでしょ?」

「え……?」

 これには、本当に混乱した顔になった。

「これ、瞳がくれた最後の手紙なんです。初めての妊娠を直樹さんに伝えてビックリしたところを竹内って人に頼んだって。で、こっちが竹内さんへの依頼状のコピーです」

「し、知らんよ、ほんまに!」

 動揺している。ここはなだめながらいかなきゃ。

「お願い、あのビデオには、直樹さんの無実の証拠が写っているはずなんです」

「知らないって……」

「じゃ、これは?」

 竹内のカバンから抜き取ったようにして、オリジナルの依頼状を見せた。

「これ……完全な、瞳の筆跡です。鑑定してもらってもいいです」

 手紙と依頼状は、瞳さんがわたしに憑依して自分で書いたもの。でも、竹内さんには分かるはずもない。

「それとも隠し撮りってことで、強制捜査……」

「な、なんでオレがーーーーーーー!?」

「わたしたちのだって、気づきもしないで、まだ8号室撮ってるでしょ?」

「あ……!」

 わたしは、そのことも瞳さんから聞いていた。だから、わざと風呂上がりにノーブラで、リビングに座ったりした。

「なんなら、今すぐに、ひっかけ橋のお巡りさんにメール送ってもいいのよ。文章はあらかじめ打ってある。あとは送信押すだけ。さ、どうする。あなたに盗撮の前があるのは承知の上。一発で家宅捜索でしょうね」

「それ、ほんまに、自筆で通るんやろな……?」

「大丈夫、それは保証するわ。だから、責任はとってね」


 この件で、男の脆さを勉強した。男は見透かしたような女の視線には弱いようだ。


 今まで、怖くて出せなかったということにして、竹内さんに警察にメモリーカードを提出させた、むろん、手紙や依頼状も添えて。筆跡鑑定だけじゃなく、紙やボールペンのインクの古さも測定したよう。意外だったけど、ちゃんと事件が起こるちょっと前という結果が出た。幽霊さんのやることはスゴイと思った。

 あ、それと、わたしたちを盗撮した分も。まあ、コピーされてるかもしれないけどね。その時はその時。


 しかし、警察の動きは遅く、直樹さんが無事に釈放されるのは、この物語の終わったあとだった。


 そして、知らず知らずのうちに、わたしは変わってきたようだ。


「トコちゃん、少し見ないうちに大人になったね。なんだか、むかしのあたしを見てるみたいだ」

 リョウのサトコさんに言われたときは、ドギマギした。


 でも、わたしの成長ってアンバランスであることを思い知ることが……まあ、見ていてちょうだい。 

 

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