【作者のやる気が無くなったので完結】最強チートスキルで楽々魔王を倒した俺、悠々自適な異世界ライフを送る! はずだったのに
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第1話 最低な死に様、最高の展開
俺の名前は
世間では子供部屋おじさん呼ばわり、家族からは当然距離を置かれ、顔を合わせることもほとんどなくなった。今更働く気力もない、貯金もない、親が死んだら住むところもない、ないない尽の人生だ。どっかで間違えたのは確かだが、どこだったかもう覚えていない。
「どうにかならねーかな、俺の人生」
呟いたってどうにもならないけど、変化が起きないかと口に出してみる。虚しいだけだった。
「そうだ、暑いしアイスでも買いに行くか」俺は急に思い立って親の財布から金を抜いて、コンビニで雪っこ大福を買った。一度に二つも食えるお得なアイスを、わざわざ分け合って食べるリア充たちの気持ちが、マジでわからない。
食べながら歩いていると、急に空が曇りだした。雨に降られる前に帰ろうと走りだした瞬間、頭上が白く光ったような気がして、それっきり記憶がない。今、俺はどこにいるんだ?
……もしかして、死んだ? こんな中途半端な人生のまま? 報われず虐げられた復讐とかも特になく? 最低かよ。神様がいたら文句言ってやる。
「こんにちわ〜! ねぇあなた、幸せになりたい?」
声にびっくりして目を覚ますと、俺は何にもない真っ白な空間にいた。目の前には頭に輪っか浮かべて白い羽を生やしたピンクポニーテールの女の子が立って、いや浮かんでいた。
「あっ、いきなりで驚いたよね。ごめんごめん。あたしは天使、人に幸せを運ぶのがお仕事なの」
天使なのは見りゃわかる。それよりも、女の子が俺に話かけてきたことに心底驚いてる。ここがあの世だったとしたら、最後にいい思いをしたなぁ。神様やるじゃん。
「えーっと、言いづらいんだけど、あなたは雷に打たれて死んじゃったんだよね」
「あ、やっぱり俺死んじゃったのか」
ほら、と天使はリモコンのボタンを押して、さっきまでいたコンビニの様子を見せてくれた。半袖短パンのデブが焦げて惨めに死んでいる。うん、間違いなく俺だ。なんでだろう、未練とかなくて、涙も出てこない。やっと解放されたって気持ちの方が強いかな。
「それで、実はもーっと言いづらいんだけど、その雷は神様が間違えて落としちゃったんだ」
「は? 間違い?」
マジで言ってんの? 俺は死ぬことすら間違いだったのか。じゃあなんでこの世に生まれてきたんだよ、やっぱ神様に文句言ってやる。
「でね、それは可哀想だからって、神様が異世界で二度目の人生を歩ませてくれることになって、あたしはお迎えにきたんだ!」
「異世界!?」
オイオイオイオイ、これってラノベによくありがちな異世界転生モノの導入じゃん! まさか自分が主人公になる日が来るとは思わなかった……! ということは剣も魔法もある世界に行けるってことじゃん、こんなクソみたいな現実から、救われるってことじゃん! 神様最高〜!
「あ、嫌だった? ならこのままあの世に……」
「そんなことないっ! 今すぐ行かせてくれ! いや、行かせてください天使様!」
俺は天使に縋り付いた。ぷにぷにの柔らかい腕の感触は最高だなと思った。
「そんなにがっつかないでよ、それじゃいきましょ、新しい世界に」
俺は天使と手を繋いで、現れた大扉を潜った。真っ白い空間からどでかい神殿に景色が変わって、奥から長い木の杖を持った白い装束に仙人のようなフサフサのヒゲをたくわえた、いかにも神様ですといった風貌の老人が雲に乗って現れた。
「グランデ・クリエトーレ様〜。お連れしましたよ〜」
「おお、ご苦労じゃったな天使よ。お主が遥人か、此度はワシの雷がお主の命を奪ってしまったようじゃな。詫びにこちらの世界で転生させてやろう」
「人に生まれ変われるんですよね?」
これで虫ケラや畜生に転生させられでもしたら、たまったもんじゃない。一応確認しておく。
「ほっほ、もちろんじゃ。お主は貴族の子エルメス・アラートとして生まれ変わる」
貴族の子! 勝ち確だなこれは。絶対没落してるか家から追放されて自由に動けるやつじゃん。
「わかった。じゃあ転生させてください」
「ずいぶんあっさりしておるのう。なるほど肝が座っておる。こちらに来たのも、縁あってことじゃろうな」
神様は俺が生に執着していないのを、達観していると思っているようだ。ただあんな世界で生きていたくないだけだったが、好印象ならまぁ、悪い気はしない。
「ううむ、これでは罪滅ぼしにならんから、一つ願いを叶えよう。どんなことでも申してみるが良いぞ」
来た、願いを叶える展開。スマホがあれば偉大なる先人に従い使えるようにしてもらうところだが、持ってない。魔力増幅や身体強化もありきたりで嫌だ。武器や防具は作りたいからいらないし、まだ行く先のこともわかってないから下手にジョブやスキルを貰うのも悪手だ。
「××を使って……しちゃいましょ。大丈夫、天使はあなたの味方。何か起きればすぐに飛んできますから」
悩んでいると、天使が耳打ちしてきた。女の子の声が耳から脳に入ってきて、ゾワゾワする。あ、なんか新しい扉開いちゃったかも。
「なるほど。なら、俺の願いは」
「お、決まったか。なんでも良いぞ」
息を吸い込んで、俺は願いを口にする。
「願いを叶え続けるアイテムになれ、グランデ・クリエトーレ」
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