ゆるゆりゆるり
無名れも
第1話 愛がすべてを守ってくれる
第1話 愛がすべてを守ってくれる
かつてあんなに真っ青だった空は
昼夜関係なく灰色に染まってしまった。
人々がごった返していたあの交差点も
今じゃ誰も使う人は居ない。
一見綺麗に見えるビルも窓ガラスを
よく見て見たら紅色に染っていた。
信号機の音だけが虚しく響く街を
好井の手を引いて進む。
誰も居ないはずなのに色んなところから
視線を感じる。
こんな開けた所で襲われたら大変。
私も好井も狭い所じゃないとバトルは苦手。
それに私たち、お腹が空いてるんだもん。
返事をするように好井のお腹が鳴る。
「愛守〜。フードコート寄ろうよ〜。
もう30分も歩きっぱなしだよ?」
「えぇ。ここら辺洋服屋さんしかないよぉ」
話だけ聞けば渋谷を歩いてる様な会話だが
私たちの足元にはいたるところに死体が
散らばっている。
私は死体の顔を踏まないように、
好井は遠慮なく踏みながらその道を進む。
ネズミが死体を貪ってるのをみて
寒気がした。
私も倒れたら食べられちゃうのかなぁ。
「ねぇ愛守〜。洋服屋さん行こうよ」
「えぇ。ご飯食べなくていいの?」
だって新しい服着たいしと好井は立ち止まる。
そう言われてもここは危なすぎる気が……。
「大丈夫大丈夫、レディが着替えてる隙に
襲ってくる奴らなんて居ないでしょ!」
好井はいい笑顔で言ってるけど
私は逆だと思うなぁ。
でも、好井がそうしたいならいいか。
私たちは目の前にあったまだ綺麗な外装の服屋に入っていった。
「お邪魔します〜。
わぁ!まだ洋服は綺麗だよ!」
電気のつかない店内は、外からの少ない明かりしか入らずとても暗くてどんよりしていた。
足元には店員さんとおもわれる死体が
2,3人転がっていて必死になにかから
逃げようとする顔をしていた。
私はこうゆうのじっくり見ちゃうけど
好井は慣れてるみたい。
華麗に避けるわけでもなくどんどん踏みつつ
店内を見ている。
私はもふもふの羽のついた可愛いリュックから懐中電灯を取り出し
好井の見ている服を照らしてあげた。
このリュック、お気に入りなの。
好井がくれたんだ。
ちょっと羽のところが汚れちゃってるけど
まだまだ現役だよ!
「見てよこれ!ちょー可愛くない!?」
好井が広げてみせたのは
元からなのか分からない、穴が沢山空いた
Tシャツの面影のある何かだった。
これを服と言い切っていいのだろうか。
「めっちゃいいと思う。好井に似合ってる」
「愛守がそういう時は大体変な服って
思ってる時じゃん。」
バレてしまったか。
「うーん。中にタンクトップとか着れば
まだいけると思う。」
好井は微妙な顔をしながら
私に穴だらけの服を持たせて
素直にタンクトップを探しに行った。
「これなんかどうよ!差し色になって良くない!?」
好井が自信満々に取り出したのは
真っ黄色の無地のタンクトップだった。
目立つとかそういう事を考えずに
自分の着たい服を選ぶ好井のスタンツ……
嫌いじゃないよ。
「あーいいと思う。好井にピッタリ。」
何か言いたそうな好井の目線を感じたが
服を探すふりをして逃れる。
黙って着替え始めた好井の
両手両足には腕と足を固定するための
赤い糸が痛々しく残っていた。
「早く足と手……見つけようね。」
「何よ急に気持ち悪い。
見つけるに決まってんじゃん。
こんな他人の足と手じゃあ
調子でないんだから。」
好井は私の目を見ずにそう答えた。
ゆるゆりゆるり 無名れも @unknownlemon
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