黒/オセロ/白
円託 逢出咲
白は嫌いだ
白は嫌いだ。
耳障りな高音が現実であることを呪った。
この白い部屋に
ここは
無機質な病室の中、白いベットに横たわる貴方は心無しか
薄明かりが漏れている雲をぼんやりと眺めているような、あるいは
貴方の手を握ると胸が締め付けられるほど冷たいのに、今だけはどこか暖かい気がしてさらに胸が痛んだ。最後にもう1度だけ。と、頬にキスをした。近くで見たらもう息をしていないはずの貴方が穏やかな寝息をたてていた。
でも、それが
――――カラン。オセロが裏返る音がした。
そう、あれは貴方の病名が伝えられた日。妙に
その
貴方の部屋のベッドの上にはいつもオセロゲーム盤が置いてあった。貴方はオセロゲームが大好きで、ことある事に対戦を申し込んできた。勝っても負けても悔しそうな笑顔をしていたのはよく覚えている。 そして、こんな時でさえ、いやこんな時だからこそなのかオセロをやろうと言ってきた。現実から逃げていたからなのか、向き合っていたからなのかその時は分からなかったのでついこんな言葉を漏らしてしまう。 「大丈夫?」と。大丈夫なはずが無いって分かっているはずなのに。
勝敗は初めから分かっていたようなものだった。それでもオセロをするのは楽しかったのだ。
結果的に最後となった貴方とのオセロを思い出して泣き崩れた。
黒に染まった。
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