【番外編】 side オーガスト
ハッキリ言おう。テクニックには自信がある。
指も舌も腰も、動かせばいいってモンじゃない。リズムとタイミング、静と動、飴とムチ。時に羽で触れるように優しく、時に壊れそうなほど激しく、時に蕩けそうなほど甘く。
最初に女を抱いた十四の夜からキャリア十二年。コツはあれだ、「セックスに溺れない事」。自分が気持ちよくなることに集中しちゃ駄目だ。相手を観察して、次に何をしてやれば悦ぶか空気を読みつつ、相手の裏をかくこと。
……の、はずなんだが。
「オーグ……」
鼻に掛かる声で甘えられると、ふいに理性が飛びそうになる時がある。何も考えず、ただ無茶苦茶にモラを揺さぶりたくなっちまう。ったく、こんなの俺らしくない。
「あっ やっ オーグ オーグ……」
潤んだ瞳で懇願するように俺を見上げるモラ。ずいぶん息が上がってる。いいぞ、今イかせてやるからな。
思わずほくそ笑んで、腰をぐっと抱き寄せたその時。
「オーグ あいしてる」
う。
……クソッ、マジか!? 今の一言で、先にイっちまうなんて……!
「んっ んあっ あっ!」
何振りか追加したら、続いてモラも元気に出したが……なんか、なんつーか、何なんだこの敗北感。
ゆっくり引き抜いて、抱きかかえていたモラの下半身をベッドに下ろすと、モラは大きく息を吐いた。くったりと目を閉じて頬を染めているモラにキスして、俺もその隣に横になる。「後戯は丁寧に」。これも重要なテクニック。
薄い胸をそっと指で辿りながら、柔らかい黒髪にキスを落としていく。モラは時折ぴくんと瞼を震わせながら、けれど徐々に呼吸を整えていった。
「オーグ オーグ ごめんなさい」
「ん?」
前髪に唇を寄せたまま訊き返すと、モラはくすぐったそうに首をすくめた。それからおずおずと目を開いた。
「ぼく さっき オーガストの せなか ひっかいちゃったと おもう。だから あの」
背中?
そういや、そうだったかも。まぁ、傷になる程は強く掻かれて無いと思うが。
「オーグ せなか みせて」
おろおろと言うモラが可笑しくて可愛くて、俺は素直に寝返りを打った。モラはふくふくした指でそおっと俺の背中をなぞった。
「ほらな、大丈夫だったろ? 安心したか」
「でも あかくなってる」
と、いきなり温かく濡れた感触が背中を走り、俺はびくりと体を震わせた。
「なっ!」
「オーグ オーグ いたい?」
い、痛くない、痛くない! だから舐めるな!!
「モラ、いいから、やめ……んっ」
待て待て待て、ちょっと待て!! 色々違うだろう! 俺はお前に色々する側であって、される側では断じて!
「オーグ……」
ぺろり、敏感な所を舐め上げられて、不覚にも仰け反ってしまった。モラのヤツ、すっかり調子付いて俺の背中に圧し掛かってるし!
「オーグ きもちいい?」
ぺろぺろ丁寧に舌を使いながら、どこかうっとりした声で聞いてくるモラ。どこまで分かってやってるんだ、コイツ!
これ以上は敵わないと判断した俺は、思い切ってがばりと起き上がると、一転、モラを組み臥した。そしてお返しとばかりにヤツの小さな乳首を舌で転がす。
「ふあっ!」
どうだ、参ったか。ったく、危ねぇ、危ねぇ。
胸の中そっと息を吐いて、俺は何か言いかけたモラの唇を素早く塞いだ。
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