靴下に穴が空いた王様
盛田雄介
靴下に穴が空いてる王様
緑豊かなグッチード王国。
国民達は自然の恵みに感謝し、他国とも争い事もなく平和に暮らしていました。
そして、この国を治めているのはシャル王。
彼の顎には整えられてない白い髭が無造に生えており、服はいつもシワだらけ。
靴も泥だけで、洗った形跡が全くない。
礼儀作法はあいさつ、言葉使いなどの必要最低限だけしか覚えておらず、全く貴族としての誇りが無い。
そんなシャル王の日課は、馬に乗って国外へ出向くこと。
ひどい時は3日間、同じ服を着て出かける事もあり、その時ばかりは国民も鼻をひん曲げて出迎えてしまう。
「ちょっと、うちの国王は大丈夫なのかね?」
「本当だよな。いつも乗馬ばかり」
「それよりも、もっと自分の身なりを整えて欲しいもんだよ」
「他国の奴等から笑われちゃうよな」
シャル王の身なりを全く気にしない姿に国民からは不満がチラホラ。
そんなある日、シャル王がご飯を適当に早く済ませ、馬に乗ろうとした時、1人の少女が呼び止める。
「シャル王。ちょっと待って下さい」
「私に何か用かな?」
「シャル王。もっと身なりを気にしてみては?」
「どうしてだ?」
「だって王様だから、もっと自分の事に気を使うべきですよ!」
「悪いが、私にはそんな事より大切な事がある」
「それは、何ですか?」
「国民全員が幸せに暮らせる国を作る事だ」
「私達が幸せに?」
「そうだ。私はこの国のリーダーとして、国民が豊かな生活を送れる様に努力し行動する使命がある。君達が笑って生活が出来ていれば自分の事なんてどうでも良いのだ」
そう笑顔で答える王に少女は1枚の靴下を渡した。「これ、大した物ではありませんが、王様の為に作りました。いつも私達の為に頑張ってくれてありがとうございます」
「ありがとう。大事に履くよ」
王はその場で靴を脱ぎ、穴の空いた靴下を捨て、履き直した。
「うん。ぴったりだ」
「王様! 次は私が王様を支えれる様に頑張ります!」
「うむ。期待しているぞ。では、これから隣国の会議に行かなければならいので失礼する」
ボロを身に纏い、颯爽と馬を走らせるシャル王。
それをいつも通り、何の苦もなく笑顔で見送る国民達。
少女の目にだけは、誰よりも輝く真のリーダーが映っていた。
靴下に穴が空いた王様 盛田雄介 @moritayu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます