僕の彼女は可愛い

月天音

第1話 登校

「ゆうくんおはよ〜」


「おはよう」


 家の近くにあるポストで待っていると、のんびりとした挨拶が聞こえてくる。

 少し茶色っぽい髪を短めに切った女の子……彼女は相坂美幸、中学三年生の初めの頃から付き合っている僕の彼女だ。


「ゆう君、遅れちゃってごめんね」


 葉山裕也、僕の名前である。


「そんなに待ってないし大丈夫」


「ごめんね〜。何か早く起きるコツとか無いかな〜」


「夜遅くまで楽譜を読んだりしなかったら良いんじゃない」


「それもそうなんだけど、どうしても辞められなくて」


 彼女は音楽が好きで、バンドをやっているのだ。

 特にやる事のない僕からしたら羨ましい。


「好きな事があるって言うのは良い事だと思うし、意識するぐらいで良いんじゃ無いかな」


「そうだね」


 チラリと時計を確認すると、遅刻するほどではなくても、余裕があるわけでも無いぐらいの時間になっている。


「間に合うとは思うけどちょっと急ごう」


「そうだね〜。ゆうくんとお話しするのは楽しいけど、それは歩きながらでもできるしね〜」


「僕も話すのは楽しいよ」


 僕は少し笑いながらそう言って歩きだした。


「あ、そういえば、最近不審者が出ることもあるから気をつけてね。家の近くまでは一緒だけど、なんだかみゆは心配だし」


 なんでもホイホイ付いていきそうだ。


「そんな時はゆう君が守ってくれたら良いんだよー?」


「ぜ、善処するよ」


 男の割に体力が無いだとか、力が無いとか言われて来たし、筋トレでも始めてみようかな。


「やっぱりゆう君は今のままで良いかも」


「何それ」


「可愛いままでいて欲しいって事だよ」


「そこは格好いいって言って欲しかったな」


 格好いいと言われて喜ぶ男子はいるけど、可愛いって言われて喜ぶ男子はあんまりいないと思う。


「ゆう君は可愛くていいよ〜」


 いつもは言われっぱなしなので、少しぐらい反撃がしたい。


「みゆはもっと可愛いけどね」


「……そう言うのは本当にずるいよ」


「仕返しだよ」


 頬が赤く染まったみゆはやっぱり可愛かった。

 みゆは案外純情なのだ。


「……遅れちゃったら駄目だし急ごっか」


「……そうだね」


 いつも通りの朝が過ぎていった。

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