第5話 案内
僕と12人のリザードマンは無事だった軽装備を着用してコボルドの村まで向かう事になった。
レメバ村長はこの世界についての豆知識を伝授してくれたりした。
食べられる茸とか薬草の種類や色などについて。
「まるで若かりし頃の冒険をしているみたいじゃ、あの頃は色々な方角へ向かってはモンスターを討伐したりしていたものじゃ、さて、フェニックス殿、あなたは何者なのですか?」
リザードマンの村長は全身の青色の鱗を日光に反射させながら、こちらを振り向く。
こちらはいくら人型と言えども、フェニックスが戦士のように歩いている姿が異様に映るようだ。
「僕は元々この世界の住民ではありません、別な世界、つまり人間の世界で」
人間というキーワードを使ったその瞬間、リザードマン達の恐怖と殺気が切り替わった。
「すみません、これはどういう事なのでしょう?」
「すまぬな、リザードマンは昔人間の王国に滅ぼされた経験を持っている。鱗の搾取じゃ、ドラゴンの鱗を集める事が難しいと悟った人間達はリザードマンの鱗で代用した。魔法の道具として使われていたそうだ、とはいえそれも数年前の話じゃが、ようやくリザードマン狩りも落ち着いた事ですじゃ」
「そのような事があったのですね失礼しました」
「して先程の続きじゃが」
「僕はこの世界ではなく別な世界の人間が住む世界で死んだら鳥の卵の中で転生しました」
「それは驚くべき話じゃ」
「兄ちゃん、すげーな、鳥だったのか、今じゃフェニックスじゃん」
「まぁそう言う事で」
リザードマンの子供であり、まだまだ小さいキキはこちらを褒めるときゃっきゃ言いながら走る。
「今ではリザードマンの子供はあやつだけじゃ、別な所にいるリザードマンが無事か心配じゃが」
「それはどこにいるのですか?」
「離れてから数年が経つ、場所は分からない」
「そうですか」
「そ、村長、ダークエルフがいます」
「なんじゃとおおおお」
レメバ村長は8人近くが群がっていた所に問答無用に乱入する。
そこには橋があった。
黒一色の看板と白い文字が書き殴られている。
僕には古代文字のようにしか見えず理解出来ないが、リザードマン達はダークエルフを見て困り果てている。
「なんて書いてあるんですか?」
村長が戻って来ると。
【この橋渡りたければ武器を全て提供しろ、無ければ金品を全て提供しろ】
そう書かれてあるらしい、僕の世界で言う所の牛若丸と弁慶の話みたいで親近感が湧いた。
ダークエルフはこちらをじっと見ている。
枯れ草色のフードを被りながら、全身も枯草色のローブで覆っている。
両手には巨大な槍をかざしている。
その槍はまるで魔法がかった色をしている。
エメラルドとルビーとサファイアを合体させたような刃は鋭く水滴に濡れていた。
どのくらいの間そこで立ち続けていたのか、僕は不思議とダークエルフの事が気になり出した。
もちろん鑑定する事は忘れず。
【リントス:レベル50:瀕死】
僕のレベルでは太刀打ち出来ない、そんな事は明白であった。
リントスは瀕死であるのだ。
それがなぜなのか分からないが、とりあえず瀕死だ。
木材で建設されたその橋はがっしりとしていた。
柱は石材で作られている為、そう簡単には腐る事はないだろう。
後ろではリザードマン族のレメバとキキが心配そうにこちらを見ている。
背中に熱い視線を感じていた。
「お前は不思議だ。ようやく死ねるのだから」
「一体何がありましたか?」
「そうだな、傷が化膿しただけであった。それが瞬く間にでかくなった。意識が朦朧としておるが、それでもここを通す訳には行かない、どうしても通りたいなら武器を捨てろ」
「まぁそのような事を言っていても何も出来ませんが、そっちに行きますよ」
「く、くるな」
そういいながらレベル50のリントスは盛大に尻餅をついていた。
どうやら眩暈が発生するくらい弱っているようだ。
その異変に気付いたのかレメバとキキがやってくる。
左足の傷が化膿している。
どうやら動物に噛まれたようだ。
「まったく若い頃はよくやったなぁ、動物やモンスターに噛まれたらちゃんと治療しろって言われてるのに、治療しない馬鹿がさ」
「俺はバカじゃねー」
「そんなに叫べれば十分だよリントス」
「てかなんで俺の名前を知っている」
「はい、これで完了」
僕は彼の左足にフェニックスの羽を添えた。
それだけで信じられない回復が始まる。
可能がみるみるうちに小さくなり、あっという間に怪我は治療され。
そこにいたのはぴんぴんしているダークエルフ族のリントスであったのだから。
「う、そだろ」
リントスは立ち上がる。
「あ、あなたはフェニックスですかあああ?」
「そうだけど」
「どうか従者にしてください、このリントス命を賭けてあなたを守ります」
「命は賭けないでね」
「は、はい」
先程の生意気なダークエルフ族のリントスではなく、1人の青年がそこにはいた。
彼は説明してくれた。なぜここを守る必要があったのかという事を。
「異界の森というのを聞いた事はありませんか?」
「僕はないよ」
「わしはあるぞい、確かそこには精霊の美女達が集まると」
「その通りです。この先が異界の森です。現在人間族の横暴について会議を開いているのです。その入り口の護衛を任されておりました。すみませぬ、まさかコボルトの村もこちらから行くとは知らず」
「それはいいのです」
僕は彼が立ち直った後に色々と説明しておいたのだ。
「僕がフェニックスとしてその会議に参加する事は出来ますか?」
「それはもちろんです。しかしレメバ殿は無理です」
「それは理解しておるわい、わしらはここで待っている。行ってこい」
「そうさせてもらおう」
「ではこちらへ」
ダークエルフのリントスが道案内をしてくれる。
そこは真っ黒な森だった。
無数に広がる木々はどれもが真っ黒であった。
まるで人間への態度を表しているかのようだった。
風は軽く吹く事はある。木の葉はまるで桜吹雪のように舞い上がる。
土は柔らかいのになぜかがっしりとしている。
なぜか森の中なのに扉が設置されてある。
それも多種多様な大きさであった。
まるで色々な種族または精霊が入れるようになっているかのようだ。
僕は少し大きめの扉をゆっくりと開いた。
するとそこには光輝く世界が広がっていた。
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