rain fall 120720

春嵐

メリアンヌ

遊びたかった。

雨が降っても、晴れていても。ただひたすら、遊び続けたかった。

前世の記憶が、うっすらと存在している。ヨーロッパっぽいところの貴族だった。一度調べてみたけど、そういう地名も貴族名も出てこなかった。違う世界だったのかもしれない。最近流行りの異世界転生だったりして。


使用人や奴隷と遊ぶことが好きだったのに、貴族制度のせいで仲良くできなかった。なるべく自分よりも階級が下の人間には優しくして、自分よりも階級が上の相手には厳しくした。そして典型的な、ぼうさつに遭う。そこから生まれ変わって今に至る。


だから、前世遊べなかったぶん、ひたすらにみんなと遊んだ。学校は貴族制度を遥かに越える階級社会だったけど、一度枠組みを壊してしまえば自由だった。髪を染めて、自分よりも階級が上の人間に厳しく、下の人間には優しく。それだけ。


遊んだ。仕事でも遊んだ。自由は素晴らしい。社会は、学校を更に越えた究極の奴隷制度と階級制だった。全員が全員、能力とカネの奴隷。そして、誰ひとりとしてそれに抗おうとする人はいない。娯楽作品という麻薬で、なんとか日々を凌いでいる。


だから、娯楽作品を作って遊んだ。

みんな、私の娯楽を気に入ってくれた。遊び相手は、無限に増えていった。


あんさつとかはめちゃくちゃ注意した。前世それでしんでるし。娯楽作品は人を狂わせてなんぼなので、それも危ない。でも、たのしい。作品で遊ぶのはたのしい。


遊びきった末に、気付いた。

これは、夢なんだと。

夢が覚めると、うろ覚えだった貴族の生活が戻ってきて、そして、ぼうさつされるんだ。


かなしくなった。


でも、すぐにかなしむのをやめた。


どうせ覚める夢なら、更に、もっと、遊ばないと。できる限りの。己の全てを懸けて。遊び尽くすんだ。この世を。

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