精霊と会話できる私は、どうやら初代女王の生まれ変わりのようです

侑子

出会い編

プロローグ


 精霊の国、フェリアエーデン。


 たくさんの精霊が住むこの国では、人々は精霊に魔力を与え、精霊はそれを対価に願いを叶える。

 人々はそれを魔術と呼び、魔術師を多く有する貴族たちが国を治めていた。


 精霊は他の国にはほとんど存在しない。


 精霊は戦争を嫌っており、他国からの侵略を許さず、また他国への侵略には手を貸さないため、フェリアエーデンは神秘の独立国家と言われ、長く平和を保っていた。


 しかし今、国はある大きな問題を抱えていた。


「呪いをかけた犯人は、まだ見つからないのか!?」


 フェリアエーデンの第一王子、アレクサンダーは、端正な顔を歪め、ベッドの上で声を荒げた。


「うっ、ゲホッ、ゴホッ……」


 病弱な身体はそれだけで悲鳴をあげ、咳が止まらなくなる。

 アレクサンダーは、忌々しそうに口元を拭った。


 王国の有識者たちが総出で捜査を行い、騎士団も情報を得るため動かしている。アレクサンダーも辛い身体を押してベッドから自身の部下へ指示を出し続けているが、状況は思わしくない。


 次期王妃候補であり、二人の王子の幼なじみでもあるアデライド・スターリンが呪いに倒れて一週間。犯人の手がかりは未だ掴めていなかった。


「……アデライドは日に日に衰弱していて、今はもう目を開けることすら少なくなっているとか。手を尽くしてはいますが、あまり猶予はなさそうです。市井に公表し、情報を求めた方がいいかもしれません。父上と母上に進言しましょう」


 今にも狂いだしそうな兄を見て、第二王子であるフィルハイドはそう提案した。


 今までは、アデライドの名誉を重んじて呪いについては秘密裏に捜査していたが、限界だった。公表して広く情報を求め、提供者には報酬を与えるようにすれば、何らかの進展が望めるかもしれない。


「くっ……そう、だな」


 これ以上余計な時間はかけられない。

 アレクサンダーも渋々同意した。


 呪いというものは実に不安定な術で、かける相手の心に隙がなければかからないものである。それゆえ、王候貴族は常に心を強く持たねばならない。自分を激しく卑下していたり、死にたいほど絶望したりすると呪いを受けやすいと言われている。


 しかし、アデライドがどのような精神状況であれ、かける人間がいなければ呪いなどかかるはずもない。犯人を見つけて始末すれば、呪いは解けるはずである。


 アデライドは精神的に問題があるなどの風評被害が出たり、アデライドの心につけ入る隙を与えた原因である王家にも責を求める声が挙がる懸念があり、それを公表するのは躊躇われていたのだが、やむを得ない。


 アデライドの命には代えられない。


 このままでは、アデライドは意識を闇に沈め、永遠の眠りにつくことになるだろう。


 苦悩の中、アレクサンダーはぽつりと呟いた。


「私の決断は……間違っていたのか? アディ……」

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