ただの愚痴

芋鳴 柏

彼についての愚痴

文学とは逃げである。

文系とは数学を逃避した先の袋小路であって、論理的思考から逃げ出した劣等的な代物である事は否めようがない事実である。

こんな事を言えば当然に諸々言われるに決まっているが、自分の周囲に漂う、どこか文系を軽視するような風潮、小馬鹿にしたような視線を感じるたびに、半ば共通の観念、反論することも出来ないような一つの事実であるように思える。

彼らの文系の肯定、すなわち人間の情緒の肯定は確かに全てが全て間違っているとは言い切れないし、一介の小僧が文学は云々だと、さも己の語る事が高尚な代物であるように見せかけるような真似を含めても、そこに一理あるようにも思える。

しかし、文系は世間一般から見て、決していつでも上に立てるわけではない。

文理それぞれ一長一短はあれども、どこもかしこもどこかで偏見じみた分け方があるというのは確かな事だ。

公務員か会社勤めか、男性か女性か、文系か理系か。

何かが二分される時に限って、そこで何かしらの差をつけたがり、それぞれに優劣を求めたがる人の性分は仕方ないとしても、この暗黙の了解、彼らの(主に彼の)好きな「常識」という言葉で表すのなら、文系は逃げである。

狭い世間かもしれないが、わが身が文系である以上、そんな風な偏見を感じざるを得ないのだ。

一種の劣等感がそうさせているのかもしれないが、文系はいつだって程度が低いやらうんたらを耳にする自分にとってこれは最早、こびりついた垢のような何かに近い。

刷り込まれた優劣ほど、抜けないものはない。


もう一つ、彼に面と向かっていうのなら、文学をさも己の領分のように語ることがいかんせん癪に障る。というよりは虫唾が走る。

自分も含めて、そんな大層な勉強をしているわけでもなしに、まるでそれを昔から見知っていたかのように述べ立てるさまは、やはりどうにも同じ穴の貉というべき、彼と私であってもやはり気持ち悪い。素直に感じてしまった。

何を私たちが知っているのか。理系、文系問わずに初学者の域を出ない私たちが、文学はこうだ、逃避じゃないと、どの口がそれを言ってのけるのか。

まだ、自分から学んで物を書こうと努力している野菜の彼から説教を受けていた方がいくらかはマシである。


理系のくせして、本もろくに読まないようなアレにわざわざ説教なんぞ食らわなければいけないのか、まったく無性に腹が立った。

内輪に流してもアレなので、ネットの海に流すことにする。

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ただの愚痴 芋鳴 柏 @ru-imo-sii-cha-96

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