第3話 ワンコ飼いたい ③

 めいとさん、八百屋さんを素通りし、犬を追いかけたあと、本屋さんに来ています。

 買い物かごは空っぽのまま、本の背表紙とにらめっこしています。

 見ている棚はもちろん、犬のコーナー。

『ワンコのひとみ』最新号を数ページめくってから元に戻し、飼い方やしつけの本を物色しているようです。

 めいとさんのひとみはもう、真剣そのもの。

 怖いくらいの気迫を感じます。


「え〜っと、これとこれ!」


 めいとさん、一瞬『ワンコのひとみ』を見ましたが、選んだ二冊を握り締めてレジへ向かいます。

 家計のことを考え、『ワンコのひとみ』はあきらめたのでしょう。



「あ、メイドさん戻ってきた」

「レンコンと人参と、ごぼうください!」

「は、はい……まいど」


 めいとさん、口調が強いですよ。

 八百屋のご主人もおかみさんも、ちょっとビビってますって……。


「ねえあんた、やっぱりメイドさんおかしいよ」

「あれは五月先生に反撃だな」

「反撃って……」


 ええ、別に反撃ではないと思います。



「ただいまです」

「ん、おかえり」

「五月様っ!」

「は、はい」

「お話がございます!」

「は、はいっ!」

(私なんかメイドに叱られることしただろうか……。食べかけのポテチは洗濯バサミで留めてるし、資料も整理してあるし、靴下は……ん、くさくない)


 ドンッ!


「これです」


 めいとさん、買ってきた犬の本を机に置きました。

 さあ、めいとさん、五月先生に直談判。

 どうなることでしょう。

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