第5話 俺、町に入る
欠伸を何度かしながら荷馬車を走らせ、道なりに進んでいた。
空はすっかり太陽が昇り、暗かった道を照らしている。
おそらく太陽の昇り具合からして、会話を止めてから二時間程度だろう。
だとすれば、そろそろ町やら村が見えてきてもおかしくはない。
(早いとこ村か町に着かないとな。情報がない)
今現在、新太がどのような状況になっているのか分からないため、情報がとにかく欲しいのだ。
すると、新太の焦りが通じたのか、近くに町が見えてきた。
「
懐から取り出した保管鍵の扉を開けて袋と武器をいくつか取り出して後ろの荷馬車に武器を投げ入れる。
「アラタ! 突然何かが飛んできた!」
物音に反応したのか慌てて荷馬車から出てきた。
「気にするな。最低限必要な物を投げただけだ」
「当たったらどうするの!」
「当たらなかったから大丈夫だ」
「……むぅ」
新太の言葉に何か言いたそうな口を閉じ、荷馬車に戻って行く。
ちょうど荷馬車に戻ったタイミングで、町の門番に止められた。
「待たれよ。お前は何者だ?」
「旅商人みたいな物です」
「旅商人だと? なら、商人手形を見せてもらおうか?」
「いや~今回は持っていなくて……代わりにこれとか、どうですか?」
爽やかに笑顔を見せながら、どっしりと重い袋を門番に渡す。
袋の中を見た門番の顔色が変わるのを見て、新太は、耳打ちをした。
「もちろん。お隣の方の分も帰りにお分けしますよ」
いかにも強そうな無口のもう一人の門番にも与える事を話す新太に門番は、閉じている門を開くよう合図を送る。
「……今回だけだ。通って良し」
「どうも、助かります」
「問題だけは起こすなよ」
「わかっております」
荷馬車を門の中へと走らせる。
そんな手綱を握っている新太に疑問を感じたらしく荷馬車から顔を出して話し掛けてきた。
「ねえねぇ、なんで門番さん通してくれたの?」
「そりゃあ、お金を渡したからな」
「どうして渡したの?」
「元々手形を持ってなかったからな。この町に入るための通行料だ」
「なるほど」
理解したのか荷馬車に戻るが、新太は嘘を付いていた。
本来、商人の職業を表し、仕事を行うためには、商人手形という証明書が必要だ。
もし、商人手形を持っていない場合は、入る事が出来ない。
それを新太は、賄賂という形でお金を払い、入れて貰ったのだ。
後は、新太が一番欲する情報を集めるだけである。
そのためには、まず、重い武器を何とか解体出来る場所へ向かわなければならない。
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