異世界に召喚されて一年の期限内で魔王を倒す事が出来ず、国にも仲間にも裏切られたので、復讐を考えながら元の世界に帰る方法を模索します

悠々自適にマイペース

第1話 俺、勇者じゃなくなった

 今から一年と二日前、高校生である俺こと神藤新太しんどうあらたは、求めてもない世界に求めてもいないタイミングで召喚された。

 ちなみに、求めてもいないタイミングとは、一番好きな昼休みの事である。

 そんな昼休みによくある剣と魔法の世界に弁当片手に召喚されたと思えば、周りの者達から勇者扱いされ、王の居る王宮へ強制的に連れて行かれた先の王様の第一声がこれだ。


「おお、勇者よ」


 勇者の前に冷め始めている弁当の昼食を済ませて携帯のアプリで遊びたいのが最優先なのだが、ここはひとつ大人になって王様の言うことを聞いてあげようと考えた。


「実はな……」


 どうやら王様が言うには、よくある魔王が復活しただの、魔物が暴れているだの、無法者が出てきただの、よくある展開の悩みだ。

 そうして困った悩みを簡単に済ませるために古より伝わる召喚で勇者を呼び寄せたらしい。

 その勇者として召喚されたのが、この世界に関係のない男子高校生一人だけの勇者が悪を打ち倒すために冒険へ出掛けるという、なんともありきたりな話でした。

 だが、ひとつだけよくあるありきたりな話とは違う事がある。

 それはーー。


「召喚での儀式により、勇者がこの世界に存在出来るのは、一年しかないのだ」


 なんと一年だけという王様の期限付き発言につい無理だと首を横に振ってしまいそうになったが、周囲の期待の眼差しから渋々承諾してしまった。

 こうして、勇者らしい武具一式を身にまとい、敵である魔王を倒す戦いが始まったのだ。


 ◇◇◇◇◇


 あれから一年後、勇者である神藤新太は、期限の日を魔王を倒すこと無く終わりを迎えていた。


「結局、魔王の城手前までが限界だったわけだ」


 初期の装備からは見違えるほど武具は変わり、周囲には仲間が4人も居た。


「かなり頑張ったんですけどね」


「まぁ、ここらが限界ですって」


 周りの者達に励まされながら王の居る王宮へと帰還する。


「おお、勇者よ。それで、魔王は討伐出来たのか?」


 帰還してそうそう魔王の事を聞いてくるが、勇者である新太は、首を静かに横に振り、一言。


「いえ、魔王は討伐する事は出来ませんでした」


「そうか。では、新たな勇者を召喚せねばなるまい」


 そう言って王様は、何かの合図のように手を軽く叩く。

 すると、側で王の護衛をしていた者達が新太を取り押さえる。


「王様! これはどういう?」


 突然の事に頭が付いて行かず、新太は王に説明を求めた。


「勇者の能力ちからを持ってして更なる強き勇者を召喚するための必要な処置だ」


 新太が勇者として与えられた能力を触媒に更なる能力を持つ勇者を召喚しようとしている。

 新太自身が能力を失うのは構わない。

 だが、元の世界に戻れず、命を失うのなら話は別だ。

 動けないように取り押さえていた護衛達を新太は、強引に投げ飛ばす。


「 ベリー! ラズ! レイン! スズ! 手を貸してくれ!」


 信頼出来る仲間に助けを求めて名前を呼んだ瞬間、皆が魔法を唱え始めた。

 タイミングを合わせて逃げ延びれた後は、また一から皆でやり直せば良い。


「「「「呪縛リング」」」」


 そう思っていた新太に向けて何重にも編み込まれた光の縄が新太を拘束する。


「なっ!?」


 動けなくなって地面に倒れる新太が動かせる事の出来る首を仲間達の居る方へ向く。


「すまぬな勇者よ。この者達は、王であるワシの直属部隊なのだよ」


 その王様が言った言葉を聞いた途端、信頼していた仲間に裏切られた事を知った。


「ふざけるなよ…ふざけるな!!」


 動けない身体を必死に動かし、左右にしか揺れる事の出来ない状態のまま怒りが沸き上がって来る。


「ベリーぃ! 最初に酒場で喧嘩に巻き込まれていた所を一緒に戦ったのは演技か!!」


 先ほど投げ飛ばした護衛が吠える新太を担ぎ上げた。


「ラズ! お前、魔物に襲われていた所も演技かよ!!」


 視線を合わせる仲間は、そのまま逸らし、新たに勇者を召喚する魔方陣の方へ運ばれて行く。


「スズぅ! 冒険者になるのが夢だと言って付いてきたよな? あれは嘘だったのか!?」


 魔方陣に新太が置かれ、新たに勇者を召喚するための儀式が始まった。


「レイン! さっきまで励ましてたのは、全て嘘だったのかよ!?」


 光を放つ魔方陣が新太の身体を取り込み始める。


「覚えてろよ、クソ共! いつか、天罰が下る! それまで、生きていろよクソ共ぉぉぉぉ!!」


 吠えて消えた新太の後、魔方陣に新な光が現れた。

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