第39輪 二 旅 出 発

「じゃあね! ばいばい! ばいばーい!」


 遠くに見える姉さんたちに手を振るミーニャ。私たちは姉さんたちと別れ、再びガラム村を目指す。


「それにしても、今日のリミアはかっこよかったよ! 主人公みたいだった!」


 ミーニャはにっこりとした笑顔で私の方に振り向く。


「そ、そうかしら? って、『今日の』私はってなによ! 私はいつでもかっこかわいいヒロインなんだから!」


「だが、たしかに主人公ムーブをしていたな。まさか土壇場で新しいスキルを会得するとは」


「うんうん! お姉さんへの思いで覚醒したんだね、きっと!」


「え? あれはたまたま二人が魔物を倒した経験値でレベルアップして会得しただけよ?」


「…………」


「…………」


「お前、そこは嘘でも隠しておけ…………まあ、俺も人のことは言えないが…………」


 私はグッと拳を握り込む。


「ふふ。やっぱり私は私を一番に考えなくちゃ私じゃないわ! 姉さんのための行動も、私が姉さんと仲直り、いや、昔も別に仲良くなかったから仲作り? することが私にとってプラスだからやったまでのことよ!」


 そう。私は私のために生きる女!


「もうーリミアは素直じゃないんだから! ねえティーナ…………ティーナ、どうしたの!?」


 …………あれ? そういえば、さっきからティーナの声をまったく聞いてないような…………。


「…………」


 ティーナはじとー、とこちらを見つめながら、私たちの数メートル後ろを歩いていた。


「ど、どうしたのよティーナ。さっきまで元気だったじゃない…………」


 私はティーナの不機嫌そうな顔に困惑する。


「いや、いいハッピーエンドだったわ! 完璧なね!」


 ティーナは死んだ目をしながら日々鍛えた肺活量を駆使した声量を出す。


「急に大声出してきた! どうしたのよ一体……!」


「ティーナ、お腹痛いの…………?」


 …………ミーニャ、たぶんそれは違うと思う。


「そもそも! あたしを引き抜くか引き抜かないか! そういう話だったわけじゃない!? それなのに途中から…………いや、割と早めの段階で蚊帳の外になってなかった!? なんかこう、釈然としない! 最後とかみんな一対一で話してたけど、あたしはその間一人よ! 奇数人で二人組つくった時に一人残った者の気持ちがみんなにわかる!? ねえわかる!?」


 ティーナは出会ってから一番のテンションの力説を始める。この子こんな感じだったっけ?


「…………圧がすごいな」


「でもほら、途中かっこよく私を助けてくれたじゃない! それに最後、笑顔でこっちを向いてくれたし……!」


 あの時のティーナはいい顔をしていた。


「じ、実はあれは…………『あたしも構って』の合図だったり? …………最後の笑顔は…………ほらあたし、内弁慶だし、雰囲気壊したくないし…………」


 思わぬ暴露をされてしまった。


「そ、そうだったのね…………。でもほら、もう日常パートだから、大丈夫よ。思う存分話すといいわ!」


「ティーナは寂しかったんだね! 大丈夫! 私が話し相手になってあげるから! さあ、話してごらん、私は聞き上手のミーニャと言われたこともあるんだよ!」


「な、なんか違う! もっとナチュラルなのを期待してたのに! あたしはナチュラルに話しに行けるアイドル! ナチュラルに話しに来てちょうだい!」


「お、落ち着いてティーナ…………。ていうか、キャラ変わってない?」


 いや、よく考えたらこれが素なのかしら? 内弁慶ってことは、やっと私たちに気を許したって風にも捉えられるし。


「どうやら、ティーナの本質は寂しがり屋だったみたいだな。まったく、面倒くさい性格はリミアだけで十分だというのに」


「私の性格はまっすぐストレートよ! あんたの方がこじらせてる癖に!」


「私はどっちもどっちだと思うけどなあ」


「あ、あたしを話に入れて…………」


 とにもかくにも、一つの戦いを経てより絆を深めてにぎやかになった私たちは、次なる目的地・ガラム村に向けて歩いていく。


 そこに待ち受けるものを知らずに…………。

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