第21輪 双 輪 演 舞
「で、意気揚々と街を飛び出したはいいけど、次の目的地、どこにしようかしら?」
「…………お前、俺が何の考えも無しにいきなり飛び出したとでも思っているのか? リミア、ミーニャ、お前ら鍛冶屋が武器を作ってくれていた数日間、何してた?」
「魔法の練習、腹ごしらえ! 魔法の練習、腹ごしらえ!」
「ウインドウショッピング……?」
元気いっぱいのミーニャと、てへっ、とポーズをとる私。
「…………ミーニャはともかく、リミアはサポート役として勇者をサポートする気があるのか?」
「なんて冗談よ冗談! 今回はちゃんと調べておいたんだから! 次の目的地は……」
「『マグニア』、商業が発達した街だな。タールズほど大きくはないが、そこそこ栄えているらしい」
「……そうそう! でね、この街では…………」
「人や物の往来が盛んで、情報もあちこちから集まってくる。魔王に関わる情報、それにもしかしたら……ミーニャの母親の情報も得られるかもしれないな」
「って私に言わせなさいよ! せっかく調べたんだから! そしてもっと私を褒めなさい!」
「うんうん、リミアは偉いよ!」
「ミーニャ……そんなとってつけたように言われても、全然嬉しくないから…………」
嬉しくなんて、ないから……ないから……。
「リミア!」
「何、キリヤ? 言っとくけど、今さら私を褒めようったって…………」
「前を見ろ! 魔物が出たぞ!」
「ああ、はいはい魔物ね。頑張りなさいよ」
「なんだその反応は!?」
「ほら、ちゃんと前向きなさい。魔物がいるんだから」
「ぐ……。だが今日の俺は機嫌がいい、そして魔物が出る瞬間を待っていた! なぜだと思う?」
ドヤ顔で聞いてくるキリヤ。
「え、それ……答えなきゃだめ?」
「新しいチャクラムを使う瞬間が来たからだ!」
「自問自答だった!」
そしてキリヤはチャクラムを構える。右手に鍛冶屋から受け取ったグランドサークル、そして左手にノーマルチャクラム。……って、まさか!
「そうだそのまさかだ! グランドサークルを使う、だけじゃない! 俺は今この時から、二つのチャクラムを操るチャクラム使いとなる! 二輪流だ!」
「二輪流…………って人の心を読むな!」
「すごい! つまりキリヤは2倍強くなるってことだね!」
ミーニャはわくわく顔で見ている。
「そんな単純な話じゃないと思うけど……」
「そう、そんなものではない! 二つのチャクラムを使うことで3倍、いや4倍、いや無限の力を手に入れられる!」
「…………キリヤの頭の中は単純だったみたいね」
「見るがいい! これが双輪演舞だ!」
キリヤが放ったチャクラムは綺麗な弧を描き、それぞれ魔物に向かって突き進む。
しかし、空中を飛ぶ鳥の魔物は難なくそれを避ける。
「よ、避けられちゃったよ!?」
「いいや、これからが二輪流の真髄だ」
キリヤは二つのチャクラムをそれぞれの手でキャッチし、また魔物に向かって投げる。
また魔物は避けるが、キリヤはまたチャクラムを捕って投げる。そして。
「挟み撃ちだ!」
チャクラムは完璧な軌道を描き、魔物に見事命中し、一撃で倒すことに成功する。
「す、すごい! すごいよキリヤ! ギューン、ブワーってなってかっこよかった!」
「た、たしかに……いや、ミーニャの擬音はよくわからないけど、今までより技術が上がって手数も増えて、すごい成長だってことはわかったわ…………。って、キリヤ?」
キリヤはチャクラムをキャッチしたまま止まっていた。
「ちょっと、せっかく褒めてあげてるんだから何かリアクションしなさいよ…………って、嘘でしょ……?」
「? どうしたのリミア?」
「…………こいつ、立ったまま気絶してる」
キリヤは石のように固くなっていた。
「…………そ、それって、それくらいの集中力が必要だった、ってこと?」
ミーニャはキリヤの状態に驚いた顔をする。
「いや、たぶんちがうわ。これはおそらく…………」
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