第11輪 家 庭 訪 問
「ここが私の家だよ! 入って、どうぞ!」
「なんというか、和、だな」
「『わ』? まあ、けっこう特徴的だよね。私も村を出てから知ったんだけど」
少女の家は、都ではあまり見かけない造りをしていた。
「もしかして、これが畳ってやつなの? 実物は初めて見たわ……!」
「むしろ、俺にとってはなじみが深いが…………俺の部屋、畳の部屋だったし」
どうやらキリヤの世界にも同じ部屋の造りがあるらしい。
「ささ、座って座って!」
「う……なんか床に直接座るのって慣れないのよね」
そう言いつつ足を横に流して座る。
「そういえば自己紹介がまだだったね! 私はミーニャ。ミーニャ=クリアスター! ここ、キュリス村出身の魔法使いだよ!」
ピンクの髪を三つ編みにした少女・ミーニャは、掛けてあった厚手のローブをバッと羽織る。…………それにしても、何か聞き覚えがあるような?
「そのローブ、やっぱり魔法使いなのね。……私はリミア、僧侶よ。よろしくね、ミーニャ」
「うんうん。私は生まれてこの方魔法使い一筋だからね! で、そっちの男の子は?」
「俺はキリヤ。チャクラム使いだ」
「…………へ? ごめん、聞き取れなかったや。何使いだって?」
「チャクラムだ」
「そ、そういえば、さっきは戦いに夢中で気づかなかったけど……その武器、初めて見た。チャクラムっていうんだね、へぇー」
まあ、そうなるわよね。そして…………。
「お、お前……」
「へ?」
「お前もチャクラムを知らないのか! いやいいだろう知らないと言うのなら教えてやる! この人類史上最高の発明! 見る者すべてをその魅力で昇天させる至高の存在! チャクラ……」
「ていっ」
「ごふっ!」
やっぱりこうなったか。私は身を乗り出してミーニャにせまるキリヤのみぞおちに蹴りを入れる。
「え、えっと…………」
「気にしないで。こいつはチャクラムに対して変態的な愛情を持ってる変態なだけだから」
「あはは、そうなんだ……」
苦笑いするミーニャ。
「でも、『チャクラム使い』なんてジョブは聞いたことないけど…………勝手に名乗ってるの?」
「ああ、それね…………勝手に名乗ってるならまだいいんだけど…………」
「俺はまぎれもなくチャクラム使いだ!」
「うわあ!」
勢いよく起き上がるキリヤにミーニャはびくっとする。
「そう。まだ話してなかったけど、実はこいつは異世界から来た勇者なの。それで特別に変なジョブでも認められたっていうか……」
「崇高なジョブだ」
「へぇー、そうなんだ。……って勇者!? キリヤは勇者なの!? しかも異世界人!?」
「ああ、そうだが」
「そ、そっかあ。『始まりの村』から勇者が冒険に旅立ってるって噂は聞いてたけど、まさか実際に直接会ってお話することになるとは…………。その、二人はやっぱり魔王討伐を目指してるんだよね?」
ミーニャの表情が少し固くなる。
「ええ、まあそうなるわね」
「まあ、俺はチャクラムとともに生活できればそれでいいんだがな」
「魔・王・討・伐・を・目・指・し・て・ま・す!」
キリヤの耳をぐいっと引っ張る。
「痛っ! …………ああ、魔王討伐も目指している」
「あれ? 目指してるんだよね……?」
ミーニャは少し不安げな顔をして尋ねてくる。
「め、目指してるぞ」
私はキリヤにプレッシャーをかけ続ける。
「それ、じゃあさ…………もしよかったら、私のお願い、聞いてほしいんだけど」
ミーニャは真剣な眼差しで私たちを見つめる。
「なんだ?」
「私を…………パーティに加えて!」
「「!」」
私たちは同時に頭に「!」マークを浮かべる。
「だめ…………かな?」
ミーニャの手が震えているのが見えた。
「そんなの…………」
「?」
「いいに決まってるじゃない! さっきの戦闘能力を見て、むしろこっちからスカウトしようと思ってたくらいよ!」
「ほ、ほんと!?」
ミーニャの表情は一転して、笑みがこぼれる。
「ああ。いいチャクラム使いにはいい仲間が必要だ。ミーニャならまったく問題ないだろう。さっきの魔法もすごかったしな」
「!」
ミーニャはキリヤの言葉に一瞬ピクッと反応する。
「…………そ、そう! なんてったって私は最強の魔法使いを目指してるからね!」
ミーニャは胸を張る。あれ? この子、たぶん私より年下だけど私より胸が……。いや、そんなことより、やっぱりさっきから、ミーニャの様子が少し気になる。
「ねえ。パーティに入ってもらうにあたってなんだけど、ミーニャはなんで勇者のパーティに入ろうと思ったの? それって、今言ってた『最強の魔法使いを目指す』ってことと関係ある?」
「うん。やっぱり気になるよね…………。私は…………」
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