次の前に

「さて、色々と準備しましょう」

 道具矢の事件は、ガガガーンに押し付けました。そして、この街のもう一つの依頼に向かいます。

「次は料理人ですよね?」

「そうみたいです。空間魔法に関する加護を持つ人みたいですよ」

「それで、料理人?」

 魔法に関しては専門ではないけど、色々とやり方がある。空間魔法を使った料理というのは、興味ある。

「その前に、少し良いかな?」

 レンとサーシャの二人に、まじめな話をする。

「光の使途の連中に関して、知っている事教えて」

 本来、この世界には休暇に来ています。面倒ごとは増やしたくありません。

 転生後の世界に関しては、上司に聞いた事あります。光に所属している連中も、同じように転生しているというのは理解していました。

 世界も、色々とあり、それ事に色々と問題を抱えているのも知っているつもりでした。色々な物が動きあって、世界は存続しています。

 停滞は出来ません。

「私は、ほとんど知りません」

 レンに関しては、特殊な情報網など無いので、知らなくても仕方ありません。

「私も、ほとんど知りません」

 サーシャに関しては、修行に一生懸命だったので、他の事を知らないみたいでした。普通に考えれば、そうでしょう。

「教会に問い合わせれば、教えてくれるかな?」

「女神様に聞くのは駄目ですか?」

「この世界に生きている人視点の情報が知りたい」

 神様視点だと、色々と判断が変わってしまう。

「それと今後、面倒な事が増えるのは嫌だから、呼び方を変えてもらいます」

 レッドという名前は、光の勢力では恐れられた名前です。

 そのことを二人に説明して、別の名前で呼んでもらいます。

「ご主人様ではどうですか?もしくは、主様でも良いです」

 メイドになっているので、サーシャはこれで問題ないでしょう。

 ご主人様よりも、あるじ様にしました。今の私は女の子。ご主人様という呼び方は、何となく男性向けのイメージがある。個人の主観なので、この辺は、私の好みで決める事にした。

 ひらがなっぽい呼び方でという、無理な注文も、サーシャが応えてくれたので、これは嬉しい。

「昔のつながりで、総司令?」

「私は、指揮官であって、総司令ではなかったよ」

「突撃司令、特攻大隊隊長、破壊大帝、司令官閣下、総統閣下、元帥閣下とか呼んでましたよ?」

 その全てに、身に覚えがあります。下の子からは、そう呼ばれていました。そのほとんどは、転生していなくなってしまいました。不思議ですね、最近感じなかった、寂しさを感じてしまいました。

「・・・閣下にします」

 私の胸の内を見抜いたのか、ダメージの残る呼び方をレンは選びました。

「あるじ様と閣下か、どんな集まりなのか謎の集団ですね」

「あるじ様から、私のへの呼び名は変わらないの?」

「変える必要は無いからね」

「むぅ・・・」

 とりあえず、話し合いは終了。当初の目的の料理屋を目指す。料理人のいる店の場所は調査済み。大手のホテルの中にある食堂。

 折角なので、ホテルに宿泊します。料金は、それなりに高額でしたが、資金は豊富にあるので、問題無しです。

「食事の時間まで、まだ時間がありますね」

「何を期待しているか、解りますけど・・・」

「支度は出来てます」

 レンは、しぶしぶという感じですが、サーシャは嬉々として準備しています。

「温泉も有名ですよ、ここ」


 と言うわけで、3人仲良く温泉です。

「憎い・・・」

 レンは、サーシャのある部分を見ながら呟いています。

「あるじ様、これでよろしいでしょうか?」

「ありがとう」

 サーシャは、私の体を洗ってくれています。

 教会の孤児院で、子供達の世話をしていたみたいなので、この手の事は上手です。私が何もしなくても、全身を綺麗にしてくれます。ありがたや。

「私もやりたい」

「レンはまだ駄目です。私の域とはいいませんが、今のままではあるじ様を満足させる事は出来ません」

「それは解ってるけど、やってみたい」

「私が、指導します。今は我慢してください」

「仕方なし・・・」

 大人しく、レンは引き下がります。

「そう言えば、あのガガガーンという男、何故こちらに好意的だったの?」

 微妙な空気を変えるために、疑問に思っていたことを聞いて見ます。

 好きとか恋愛的な要素でなく、高感度的なものが、最初から高い気がした。

「あるじ様は、この国の人間ではないので、気づいていなかったからでしょう」

「そう言えば、そうですね。あの名前は無いです・・・」

「もしかして、忌み名なの?」

「その類です。この国の歴史で、最大の愚王と呼ばれた人物の名前です」

「その名前を、自分の息子につけるの、この国の王様は?」

「名づけたのは、王妃と聞いています」

「継母?」

「実母です。王位継承で、もめないために、継承権の無い王子の名前につけたと、公言しています」

「意味あるの?」

「後ろ指を差されながらも、国のために働いているので、効果はあるのかもしれません」

「何故?」

「自分と同じ名前のご先祖様あの、汚名を返上したいそうです」

「自分が死んだ時、世間が認めてくれていれば、この名前は忌み名ではなくなる、そう言っていましたよ」

「レン?」

「そう言えば、昔あったことありますね。私が親にうられた時、村に迎えに来ていたのはあの男でした」

「何かされなかった?」

「まじめに、護衛任務をしていましたよ。でも、あの頃を思い出しますので、忘れたい記憶です」

「じゃぁ、出来るだけ接触しない様にしましょう」

「良いの、閣下はあの男を利用するつもりですよね?」

「そのつもりでしたけど、レンが嫌なら止めます」

「顔を見るのはいやですが、こき使われて、困るのは賛成です」

「では、そのように考えます」


 その後、待ったりとした時間を過ごしました。

 私の場合、長時間お湯に使っても大丈夫という事を知りました。普通の人間だと、こうなるのが普通だよね。

 のぼせてしまい、全裸でだらしなく横たわっている二人を介抱しながら、当たり前の事に、気づくのでした。

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