第6話 しなくちゃ

ある程度、自分の心の中と向き合っていたけど、後は、


「何をしなくちゃいけないんだろう?」


といろいろ考えていた。


そして、ウトウトとしていた時、「はっ」としたのだ。


私が一番手放さなくちゃいけないのは、「しなくちゃ」だって


事に。


「したい」という事をちゃんと考えず、「しなくちゃ」に追われ


てた。


自分を大事にできてなかった。


愛せていなかった。


そう思って自分の心を見てみると、小さい頃から、いろんな


「しなくちゃ」をしてきている自分に気づいた。


思い出すうちに涙がでてきて、びっくりした。

 

小さい頃は、妹が、おとなしくてかわいかったから、みんなが


可愛がっていて、無意識に、そのままの自分じゃだめだと思って


いたし、


「扱いやすい子」「いい子」でいなくちゃ、


「愛されなくちゃ」って思っていた。


学生の頃は、周りが勉強して、不安だから、とりあえず、


「勉強しなくちゃ」って思って、勉強していたけど、


別に、自分がやりたかったわけではなく、自分がやりたいことを


考えるなんて発想すらなかった。


自分の気持ちをきいてあげる事なんか全然せず、


みんなが、それがあたり前と思っていることが、自分にとっての


あたり前だった。


社会人になってからも、自分がこうしたい、こう生きたい、


こうありたいという心の声は、聞きもせず、


自分が働けるとこに、とりあえず、「働かなくちゃ」


結婚生活も、同じ、自分を大切にという事よりも、主人が、


仕事で大変な思いしてきてるって思うと、どうしても、


自分より相手が先になってしまい、いろんな事が、


ごまかしきれなくなってきてしまった。


ずっと長い間、気持ちなんか聞かずに、「しなくちゃ」をしてた


くせに、ここにきて、急に何したいの?って言われても、


今さらだよね。


でも、しなくちゃって思って自分をなおざりにしてた自分さえ


愛してあげられると、どんな自分でもいいんだっていう自信が


湧いてくる。


どんな自分も自分で愛せるようになると、別に、誰かに愛され


なくてもいいと思えるようになってくるし、誰かを気にして


何かをしなくてもいいのだ。


それだけで、気分は、すごく「自由」になる。


一、二か月仕事しなくても、死にはしない。


何もしなくても、何かにならなくてもいいという自分への許可が


今までの人生の堅かった物を溶かしていった。






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