胎盤とミルクセーキ

石河檸檬

第1話 レストルーム

「ねんねんころりよ、ねんねんころりよ」

私はそっと、「はやく寝なさいね」と囁くように、顔上半分を撫でられる。半ば強制的な手法で寝かし付けてくるんだね。子守唄は「ねんねんころりよ」しか知らないようで、随分とシンプルな構成である。永遠と「ねんねんころりよ」の繰り返し。

それでもその暖かくて慣れた香りの手のひらに一撫でされてしまえば、自然と眼球に瞼が被さるものですね。まるで、緞帳がゆっくりと下ろされるように。


つまらないでしょう。人の幼少期の記憶を聞いたって。そういうものよね。あ、そうね、いい事を思いつきました。今から貴方の自分語りの時間を設けます。次の話に進む前のこの空白。ここは貴方の幼少期の一片を思い出すレストルームにします。

嫌な思い出があるなら、それは無理に思い出さなくても構いません。休みたくなければ、休まなくてもいいのです。





それではまた。

今日は疲れたので、私はこのまま眠りにつくことにします。

ああ、意識が遠のいていく。おやすみなさい。

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胎盤とミルクセーキ 石河檸檬 @marmalade_pool

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