第30話 「過去の精算3」

「また、いじめられちゃった。」

彼女、今井七海はそう言った。

俺に出来ることは一つだけだ。

だからこう言った。

「そうか。俺に任せろ。」と。


「ごめんね⋯⋯。ごめんね⋯⋯。せっかく俊が守ってくれたのに⋯⋯。同じことを繰り返して。」

「違うよ。七海。俺は七海を何回だって守る。だから、安心しろ。」

我ながらカッコつけたセリフだったと思う。でも、こうでも言わないと七海はまた一人で抱え込んで悩んでしまうだろう。だから俺はそう言った。


「俊⋯⋯。」

分かった。私を助けて。彼女はそう言った。


ガラス細工のように繊細な心を持ちながら他人を頼ることなく、強く、潔く生きてきたのだ。これくらいしてあげてもいいだろう。


「七海、何をされたのか、できる範囲でいいから教えてくれないか?」

「うん。」

そして彼女は恐る恐る口を開き、何をされたのかを一通り話してくれた。

俺はそれを聞いて胸の内をふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。体を今まで支配していた鎖が切れたように感じた。おそらく、俺の中の何かが切れたのだろう。


「そうか。もう、大丈夫だからな。俺がいるから。辛ければなんでも言ってくれ。何でもする。」

「俊⋯⋯。うん。ありがとう。」

やっぱり俺の知ってる彼女はガラス細工のように繊細な心を持っている。そして、大きな瞳をうるうるとさせて俺に助けを求めている。こんなことが出来るのも、以前は憎んでいた神様のおかげなのだろう。


神様。どうかこの幸せな日常が壊れませんように。

このままでいいですから。俺のこの日常を壊さないでください。

どうか、お願いします。


彼女は聞き取れるかどうかという声でこう言った。「そんな所が好きなんだよ。バカ。」

その意味を理解することが俺にはとても難しく感じた。



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(今井七海視点)

「私のことが好きだって言う男子がいて、その男子はクラスの人気者の女子が好きな人なの。で、私はその男子を振ったから人気者の女子が私のことを恨み出してそこからいじめられた。」

「ある日は机の上に落書きされて。」

「ある日は下駄箱に虫が入ってたり。」

「ある日は二階から水をかけられて。」

そんなことを延々と話していた。でも、俊は優しく頷いてこう言ってくれた。「そうか。もう、大丈夫だからな。俺がいるから。辛ければなんでも言ってくれ。何でもする。」と。


そんなこと言われたら、忘れちゃうよ。

私は、俊に甘えたらダメなのに⋯⋯。

分かってるのに⋯⋯。なのに、なのにそんな風にされたら⋯⋯。


「そんな所が好きなんだよ。バカ。」私は無意識下でそう呟いていた。多分、聞こえたんだろうな。まぁ、良いけど。


何故だか分からないけど私の気持ちはどこかスッキリとして、でも何かが邪魔をしていた。


黒い渦が巻いていて、でも晴れ渡っている。

晴れているのに雨が降っている。


そんな空模様だった。





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こんにちはヽ(^0^)ノ麝香いちごです。

最近全然更新出来なくてごめんなさい(ToT)


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