第2話 この世を去った二人は……。
「あれ、何が起こったんだ?」
「あれ、頭の中に誰かいるの?」
具体的な声ではない。闇に落ちたのだ。女神様など待っていない。
「もしかして」
「もしかして」
「私たち、体が入れ替わっちゃってる~?!」
いや、そんなことはない。融合したのだ。
一つの体に、いや、ひとつの脳に、いや、これは闇。その証拠にはならぬが、なにか心もとない人魂のようなものが、2つぽつんと置かれていた。闇だから、ホントは何もない。闇たる私が観測したものを並べてあるだけだ。
「いやっ、ちょっと待って!今私が考えてること、伝わってる?」
彼女は、彼女の気持ちに敏感なところがあるようだ。
俺は黙って、話を続けてみることにした。
「ねえ、君。君ってば。私たちどうなったの?」
「融合したっていうことらしいんだけど。」
「そうじゃなくて、何か変なこと聞かなかったでしょうね?」
「え、ああ、大丈夫だと思うよ。それに、ここには僕たちしかいないみたいだし。」
「大丈夫なの? それに、これはいつ終わるの?」
「そんなことわからないさ。君と一生、ひとつになっているままなのかもしれない。先は長そうだ、仲良くやっていこうよ。」
「そうね、仲良くね。だよね、死んじゃったんだもんね。」
「なに、素晴らしいことじゃないか。お互い、顔も気にせず、何からも解放されてるんだから。きっとうまく生きていけるよ。あれ、死んでるのか。」
「まあ、一生一緒にいられるってんなら。」
彼女はとてもさみしそうだった。
「でも、こんな形で告白はしたくなかったな。」
俺は、少しだけ鈍感だった。
「なにも、先は長いったって、光が見えることもあるよきっと。」
「でも、こんな機会、またとないしな。ちょっと、心の準備してもいーい? 好きですっ! 不束者ですが、これからもよろしく。」
「ありがとう。でも、僕には、実は片思いの彼女が…。ごめんなさい。」
「でも、この先、長いかもしれないし。きっと、長いし。」
「その逆でも、十分起こりうるから。のんびりしてようよ。」
彼女は、一度振られた身になったようだ。
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