第三話: 出会い(Encontro)パート2

「すごい...」


門を潜るとさっきまで怯えていたのが嘘かの様にロン兄ちゃんが目を輝かせながらポツリと独り言の様に言った。


第三話: 出会い(Encontro)パート2


私自身、指を数える程しか来た事が無いが、この時の兄と姉の同い年位にこの場所を訪れた時、同じく感動したのを覚えている。


天井は背伸びをしても手を伸ばしても一生届かない程高く、そして広い。ざっと五百人位は中にすっぽりと収まるサイズだろう。


そして日に当てられたステンドグラスがとても綺麗でキラキラと揺れ、まるで生きてるかの様に魅了していく。


そして目の前にはアソル国の王と王妃が一緒に描かれているステンドグラスが目に写る。


「前に何回か来た事あるけど本当に大きいわね」


母は見慣れたその光景をまるで初めての景色かの様に見とれている。


両親はお姉ちゃんとお兄ちゃんが生まれた時にもこの誕生式に参加していた。


この頃私はまだ生まれたての赤ん坊で目が開いていなかったのでこの時点ではまだイグレーナの存在を目の前にしていない。


「 そうだな、確か前に来た時はロンとキーナが生まれたんだったな」


父はそう言うとキーナ姉ちゃんを下に降ろした。


キーナ姉ちゃんもロン兄ちゃんも一応生まれた時には訪れていたものの、見るのは実質初めてだ。


その圧倒的な存在に二人供驚きが隠せていない様子だった。


「わーすごいすごい!!広いね!ロン!! 」


そうキーナ姉ちゃんが言うとロン兄ちゃんはこくんと大きく頷いていた。


さっきまで怯えていた姿とは裏腹に目が生き生きしている。


「ナジャ!」


若い女性の声が母の名前を呼ぶ.


「ネカ!」


母親にネカと呼ばれる女性も小さい赤子を抱えていた。


「ガロウ、そこにいるのか?」


「ツネッティ!元気してたか?」


赤子を抱えた女性とその女性の肩に手を添え一緒に歩いてくる背の高い男性が父の名を呼ぶ。


その男性は目を閉じたまま空いた手で松葉杖を操っている。


この夫婦は私の両親の古くからの友人だ。


「わー可愛い!男の子?」


「そうなの、可愛いでしょ」


その女性の腕の中にも小さい小さい赤ん坊の男の子がすやすやと寝ている。のちに私の友人となりゆる大事な存在がそこにはいた.


私と彼、初めての出会いとも言えるだろう。


ツネッテイと呼ばれるその男性は目を閉じながらネカさんの元を離れ、松葉杖を使い父の方へ歩み寄っていく。


使いなれているのか父の足元に当たる寸前の所で松葉杖が止まり父が差しだしたその手を迷う事無く重ね、握り返した。


(何かちょっとBLっぽい言い方してしまった)


「本当に久しぶりだな元気してたか? 」


我ながら声がデカイ父はツネッテイさん の目を見て話す。


「あぁ それなりに上手くやっているよ 」


ツネッテイさんの方は見た目といい声が柔らかく優しい印象だ。


そして彼も見えているかの様に目を閉じたまま、父と同じ視線で会話をしている。


「ホント久しぶりに会うけどあの二人って何か息ピッタリよね」


「そうなのよちょっと嫉妬しちゃうわ」


「私なんてあの二人が結婚すると思ったもの」


「アハハ、本当よね」


なんて冗談は本気か分からない女子トークを母とネカさんは楽しそうに話している。


私の父、ガロウとツネッティさんは同じ兵士仲間権大親友だったらしい。


(今でもそうだけど)


そのおかげもあってか今の様にお互い通じ合ったり信頼している部分があるのかもしれない。


だが任務の途中、父を庇い大ケガをしてその影響で目が見えなくなってしまったらしい。


そして奥さんであるネカさんも兵士だったらしいが妊娠をきっかけに家庭に専念するため止むなく辞めたらしい。


現在は二人で隣町にある小さな、でも素敵な喫茶店を営んでいる。


(個人情報によるとパンケーキが美味だそうです)


「そちらはもしかして女の子?」


「そうなの!昨日生まれたばかりで..」


カツン...


固いヒールの様な音が広い空間に響き渡る。


さっきまでざわめいていた雑音が一気に静まりかえる。


その視線はとある家族に集中していた。


ーーヴィンテウン家だ。


炎の様に上は真っ赤に毛先は夕焼けのオレンジのグラデーションの髪の毛。赤子を抱えている女性の髪は床スレスレまでの長さをなびかせながら歩いている。


その隣には髪が闇の様に吸い込まれる程に黒く、同じく黒いスーツを見にまとった男性が歩いていた。


その二人はお互いに狙った獲物は逃がすまいと惹き付けられる赤く燃える眼光。透き通る様に白い肌は真っ黒なその服をより一層強調している。


ヴィンテウン家の象徴である月の紋章が各服の首下の中央部分に飾られている。


赤く燃えるその月の色はまさにその家族に相応しい紋章だ。


そして同じく小さい命を抱えていた。


彼ら同様に透き通る肌、目は眠っていて見えないがきっと同じく赤い目をしているのだろう。


姉も父の遺伝で赤い髪をしているが同じ赤でも存在感が違うのだ。姉が光輝く太陽ならば、彼等のは人を近づかせず来る物全て焼き尽くす炎の様な存在。


「ヴィンテウン家の人達よ」


「気迫が凄いわよね」


皆がその姿に魅了されていた。


その声を聞こえてるのか否か、入ったその姿勢を一度たりとも崩さす最前席へと腰を下ろした。


「そう言えば風の噂で、ヴィンテウン家に赤子が生まれたって言っていたな 」


「まさか今回お会いできるとは思わなかったけど」


ヴィンテウン家はこの国で王に続きもっとも強い魔力を持つ血統一家だ。


人々がぞろぞろと席に着く私達一家は少し送れて家族と隣に席を付く。


ヴィンテウン家が座ったその席はまだ場所があるというのに誰一人として座る気配が無い。


ーーゴーンゴーン...


二度目の鐘の音が鳴る。


時計の針が午前八時にピッタリと止まっている。


ーーいよいよ誕生式の開始だ。

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