第27話。篝火の特訓
1日後
飛影が目覚めたのは次の日の朝であった
なかなか起きない飛影にカガリがやりすぎたと慌てていたのは別の話である
「おはよう飛影!!」
「おはよう…」
飛影が丸一日寝ていたのには理由があった
カガリがやりすぎたことも問題の一つでもあるが飛影はこの10年まともな睡眠をとったのは、先日にぶっ倒れた時程度である
災厄として睡眠をとらなくとも身体に不調は無いにしろあまりにもとらなすぎて身体が休まっていなかった
そのツケが溜まっていたのだ
「良かった良かった…朝御飯が無駄にならなくて」
飛影の嗅覚を刺激するのは、美味しそうな料理の匂い
昔のように人肉ではなく少しはまともなご飯を接種してきた飛影だが、基本的になんかの動物の丸焼きだったため、パンにスープに目玉焼きとほぼ初めて見る食卓
「いただきます」
「…いただきます」
カガリが手を合わせているのを見て、真似をして手を合わせる
「うん、うまい」
「本当!?いやぁ~嬉しいな~」
全てが手作りなので飛影に旨いと言われて笑みが溢れる
「…」
「どうしたの?」
飛影は黙ってカガリを見ていた
カガリはそれに笑顔で返す
「なんかあったのか…?」
飛影が目覚めてから笑顔を絶やさないカガリを見ると少し気になった
「いや~誰かとこうやって向かい合って食事をするのが久し振りすぎて嬉しくて嬉しくて」
「ふ~ん…」
誰かと向かい合って食事をするのは飛影も久し振りであった
いつも飛影が用意するなんかの動物の丸焼きにグチグチと文句を言いながらも、食べていた椿を思い出す
(あいつ何やってんだろ…)
少しだけ気になった飛影
しかしすぐにまぁいいかで片付けて思考を止める
「飛影ってさ…強くなりたい?」
「…あぁ」
いきなりのカガリの問いに飛影は本心から頷く
「じゃあ私が鍛えてあげよう!!」
薄い胸を張りながら笑うカガリ
「…」
飛影は無表情のまま考えていた。カガリに戦いかたを教わって利はあるのか
しかし、一度戦っている飛影にとって、カガリの強さは身をもって体験しているしその魔法の構築には眼を奪われてしまった
考える必要は無かった
「頼む…お前の魔法の構築が凄い綺麗だった、やり方を教えてくれ」
カガリの魔法の構築と比べ飛影の魔法の構築は雑であった
「っ!!?」
笑顔のまま顔が赤く染まるカガリ
「あはは…綺麗って言われたのは初めてだよ」
少し照れ臭そうにしている
「まぁいいか!!褒められて…っていうか飛影に褒められるとは思わなかったし、想像以上に嬉しいし!!教えるよ!!」
「頼んだ…御馳走様」
喋りながらもパクパクとマイペースに食べていた飛影
「ちょっ早い!!」
カガリは喋っている間、食事が全く進んでおらずほぼ手付かずであった
そして飛影はそれを待つことなく外に出る
「薄情者ぉぉ!!」
叫びながらも急いで食べ終わるカガリ
「よし!!」
飛影を追いかけて外に出る
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
再び場所は洞窟に戻る
「え~とね、見てて思ったけど飛影の魔法構築って無駄が多い…、多いって言うか全てが無駄。今まで魔法構築なんで出来てるのってレベルで無駄…。無理矢理自分の魔力で構築させてる感じかな…」
《クリエ》
カガリは魔法を構築する。雑で大雑把な構築
「今のが飛影の魔法構築ね。見ててどう感じた?」
「力技だな」
「そうだね、正解!!」
よくできました。と付け加える
「魔法の構築は無駄無く綺麗に…」
《クリエ》
再びカガリは魔法を構築する。それは自身で言うように無駄が無い
あるべき姿に乗っ取っている
飛影のは道無き道を強引に突っ走っている
カガリのは道に沿って走っている
「こんな感じ…」
「相変わらず凄いな」
素直に褒める飛影
「これだけは自慢だからね!!」
照れ臭そうに笑うカガリ
「ん~と…こうか?」
《炎舞》
飛影はカガリの構築を手本に魔法を構築する
「ち~が~う~それはただゆっくりやっただけで、力技になってる」
一瞬でボツを食らう
「飛影って魔法構築のやり方わかってる?」
「生まれながら使えたから全部感覚だ」
あ~っと額に手を当てるカガリ
生まれながらの魔法使いは完全な感覚主義者である
もともと自然に使えるので魔法構築も大体は無駄無くできるのだが、時折例外がいる
幼い頃から何も考えずに強い威力を出していると、魔力を無理矢理注ぎ込んで無理矢理大威力の魔法を使うことを続けると飛影のように力技の魔法構築になる
根っこの所からのものでありすぐに修正することは難しい
「わかった!飛影は今日一日魔法構築禁止…今日は魔力の操作を教えるよ」
魔法や身体能力の根元である魔力
その操作を教えることで魔法の構築に役立てようとの考えである
「じゃあまずこれ…」
カガリは手のひらに魔力を込める
最初に手のひらの上に魔力の球体が現れる
「やってみて」
「ん」
飛影もカガリに倣って魔力を手のひらに込め、手のひらの上に魔力の球体が現れる
「…あ~…完全に力技だね」
カガリの魔力の球体は擬音で現すなら
キュゥゥゥン
飛影の魔力の球体を擬音で現すなら
ミシミジミジミシミシ
無理矢理に球体にしていた
「先はながそ~」
やれやれといった眼でカガリは飛影を見る
何かが刺激された
「ちょっと待て!!もう一度見せろ!!」
「おぉう!?いいよ」
(…ムキになることあるんだ…初めて外見と見合った言葉を聞いた気がする)
カガリは多少驚きながらももういちど魔力の球体を作り出す
この程度のことは、試したことはないが眠りながらできるくらいカガリにとっては当たり前で簡単なことである
「…」
本人は嫌っているが、カガリは白鳥という2つ名を持っている
あまりにも綺麗すぎる魔力操作
努力の末の今
「よし!!見てろよ!!」
飛影は意気揚々と魔力を球体にする
再びそれは擬音で現すなら
ミシミジミジミシミシ
といったものであった
「…進歩なし」
溜め息を吐くカガリ
(まぁ当然とはいえ、先はながそ~だなぁ)
もともと一回二回でできるとは思っていないカガリ
「くっそう…なんでだ…」
カガリの前で初めて見せる子供のように悔しがる顔
「球体を作るときのコツっていうか…魔力操作のコツは力でやらないの。基本は流れの動き。魔力は巡らせる」
カガリは再び球体を作成し一部の魔力の色を変える
渦を巻くように回転していることがわかる
「…なるほど」
飛影は神妙に頷いて再び球体を作成する
「…うーん、まぁできてる」
飛影が作り出した魔力の球体は綺麗なものであった
力技を全く感じないが、まだまだ無駄があるが最初に比べれば合格である
「どうだ!?」
珍しく興奮している飛影。誇るように笑っていた
「はい、じゃあそれを10個くらい全身に作って」
カガリは一瞬で頭や手足に魔力の球体を作り出す
「…よし!」
飛影もそれを真似て同じように10個球体を作り出そうとするが
「球体にならない…」
10点ほど魔力は集中するが、それは球体にならない
手に作っていた球体すら魔力の塊に戻っていた
「集中切れてる。10個の作業じゃなくて1個の作業で考えて」
そう言いながらもカガリは空中に1000を超える球体を作成、それぞれが自由に動き出し、その内の1つが飛影の頭に直撃
「これくらいはやれないと」
軽々と言っているが、ダドマやギルギア等の絶対強者級でもここまで正確な魔力操作は出来ない
「ググっ…」
あまりの差に飛影はむきになって、魔力の球体を作ろうとする
結果は同じく塊で留まり球体にはならない
「……先は長そうだなー」
「ちょっと待ってろ!!すぐに追いつく!!」
災厄として寝なくても問題ない飛影はカガリがもう眠いから寝ると家に帰ってからもずっと朝まで熱中して頑張った
何とか朝には10個の球体を作り出すことが出来たが、滅茶苦茶集中して身体が少しでも動くと霧散し、音が鳴っても霧散する超極限状態でようやくといったところだった
余談だが出来た時の飛影は年相応の満面の笑みを浮かべて飛び跳ねていた
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