第12話。時は流れ旅立ち

ジソフ国滅亡から数年後

飛影と椿はまだ遺跡の森にいた


「最後の遺跡、攻略完了」


遺跡の森にあった遺跡全てを攻略した飛影は歳も10歳を超え成長していた

背負っていた刀は腰に挿していても問題ないくらいには若干身長が伸びている

更に、少し落ち着いた雰囲気がでていた


「お帰りなさい!!ご飯よろしく!!」


遺跡の外で飛影を出迎える少女

椿も成長していた

成長速度が飛影と異なり外見はまだ幼く、身長は125センチほど

アホ毛は健在であった


「…自分で作れよ」

「いや~あははは…飛影くんの方が上手だし」


あれから飛影と椿は試しながら料理をしていたが、椿の料理の腕は殺人級に下手であった。椿の料理を食べた時に飛影は初めて災厄の子で良かったと思ってしまうほどの威力であった


「それで…どうするの飛影くん?」


てきとうな山菜は採っていた椿はサラダを作成する前に、その毒々しい山菜は全て飛影に燃やされ、ついでに石を投げて鳥を撃ち落とす

撃ち落とした刀を使って血を抜いて皮を剥ぐ、かなり慣れた手付きである

山菜を燃やされても気にしない。椿的には飛影は野菜嫌いという認識でいるため、自信の罪を気付いていない


「なにが?」

「やることなくなったよ?」


この五年間で盗賊の数が激減した

年間に一人来るかどうかであった。原因は、国を一瞬で滅ぼした飛影である。

一番近い国が滅亡して補給ができなくなり、飛影という災厄の存在がいる遺跡の森に行こうなどと考えるものがいなくなったのだ


暇が潰せなくなった飛影は椿と共に遺跡の森をぶらついて、遺跡を発見したら攻略を繰り返していた

そして今日、全ての遺跡を攻略した


「村か町か街にいくか?」

「う~ん…それしか無いからね~てきとうに旅でもしよ…目指すは世界一周!!」


ジソフの事件がありあまり気乗りはしない椿だがやることがないのも事実


「前回はあっちだから今回はあっちでいいか?」

「うん、そうしよ!!」


南を指差してから北を指差す飛影。ぶっちゃけて言えば前回のジゾフの場所なんて覚えてないため、適当である


「わかった」


もはや長距離移動をするときには当然のように飛影の背中にしがみつく椿


「レッツゴー!!」


微速前進で北に向かう、その速度は微速であり椿に負担をかけないように衝撃を殺しながら飛影は進む

五時間ほど走って250キロほど移動した飛影


「何か寒!!」


少し肌寒くなってきたらしく、飛影にしがみつく力が強くなってくる。

疲れているのもあった。途中で村はあったが、小さい村でつまらなそうという理由でノンストップで走っていたのだ。そして、単純な遺跡の森よりも気温が下がっているだけである、


《炎舞》


飛影は空中に火を灯す。軽い焚き火である


「はぁ~あったまる…飛影くんありがとう!!」


椿は焚き火にあたり少し冷えた身体を暖める


「狩ってくる」

「いってらっしゃい」


飛影は感覚を拡げて生物を探す。自身はお腹が減っていないが、そろそろ椿が空腹で騒ぎだすと知っていた。

しかし、拡げる必要はあまりなく、目の前に可愛らしい猫のような動物がいた

まだ子供なのか身体は小さい

お腹が減っているのか愛らしい眼でご飯をくださいと訴えていた

飛影はナイフを取り出した。丁度目の前にご飯が現れた。なら狩るしかない


「ストォォォップゥ!!!?何する気!!?大体想像つくけどさ!!」


指で弾くだけで殺せるため、愛くるしい動物と飛影の間に全力で入り込んだ


「狩って食う」


しかし飛影はいたって冷静に無表情である。肉がある。どうせ椿は腹が減る。という簡単な理由だ。


「あの可愛い動物を狩るの!?そして食べるの!!?飛影くんの鬼!!悪魔!!人でなし!!」

「俺はお前の基準がわからん」


飛影としては可愛いとか食用とかの基準はなく全て一括りで獲物である


「とにかく駄目駄目駄目駄目駄目!!」

「…はぁ」


これ以上、話しても無駄だということを理解していた飛影は溜め息を吐いて感覚を拡げる


「あれは駄目なんだな?」


飛影は愛くるしい動物を指差す


「絶対だめ!!」

「わかった」


飛影は頷いて感覚内にいた生物の元へと跳躍する。その先にいたのは飛影達の目の前にいた動物の親らしきもの

親らしきものもお腹を空かせているのか可愛らしい眼で懇願するようにご飯をくださいと訴えていた


「これはあれじゃないな」


飛影は少しだけその動物を観察して大きさが違うことを確認して、反応するよりも早く接近し、首を掴んで骨を折る。ナイフで身体を掻っ捌いて血を抜きながら飛影は動物の首を鷲掴みにして椿のもとへと跳躍する


「おかえ…」


椿の時が止まった

飛影が首根っこを掴んでいるのは確実に先程の可愛らしい動物の親であった


「このボケェェェ!!!!」


飛影の顔面にドロップキックが炸裂する


「!!?」


お腹を空かせた椿に食材を持ってきたにも関わらず攻撃された飛影は僅かに目を丸くする。攻撃自体は効いていない

垂れ流ししている魔力で飛影に触れることが出来ない。


「殺すな言うたやろうがぁぁ!!」

「喋りかたおかしいぞお前」

「やかましいはボケェ!!」


何故か地方弁になる椿

これがガタイの良い強面であったなら多少の威圧感を与えられるが、外見はただの幼女である子が言っても威圧感などなく可愛らしいだけであるが

災厄の子であり魔王の飛影は今まで経験したことがない威圧感に襲われる


「座れ」


大変ご立腹な椿は顎で促す

何故座らなければならないのか、飛影は疑問に思うが身体が勝手にその場に座る


「狩っちゃだめって言ったよね?」

「…」


なにも言えない飛影、言い訳というか理由ならいくつもあるが、喋ることは出来ない

完全に蛇に睨まれたカエルであった


「言ったよね?」

「…言ってた…けど」

「けど?」

「…なんでもない」


恐怖である。決して逆らう気が起きない恐怖が今飛影を襲っていた


「その可愛らしい子とさっきの可愛らしい子は同じだよね?」

「大きさが違う」


飛影の言い分にぴくっと椿のこめかみが動いた。正気か?と椿は飛影を見るがその表情は本当に別物だと思っていた


「…」


無言の圧力により、なにも言えなくなる飛影

飛影は椿の笑顔が怖かった


「…はぁ」


椿の溜め息と同時に、圧力が霧散する


「次やったら許さないからね…今回はもういいよ」


お許しを受けた飛影はそそくさと調理を行う

料理を覚えてきた飛影だが食材自体が無いため、綺麗に切り分けて焼くぐらいしかできないが見かけだけでも感じる味は変化するものだ


椿が調理する場合は綺麗だからという理由で花を混ぜたりして料理がゴミへと変わってしまう。基礎ができないくせにオリジナリティを求める典型的な料理が下手な者である

あれほど怒ったにも関わらず美味しい美味しいと食べる椿に飛影は疑問を感じたが、流すことにした


軽く食休みを取り、再び移動を始める。

50キロほど移動してそこは銀色の世界だった


「すごい!!綺麗!!でももの凄い寒い!!尋常じゃないくらい寒い!!」


椿の格好は飛影がジソフの国で買った森用に動きやすい生地が薄い長袖と長ズボンに革靴である。飛影達が向かう方向にあるのは雪国であり、自然を嘗めてるとしか思えない格好だ

飛影は同じような服にコートを着ているだけだが特に寒いと感じない

種族としての差と魔力量による差である


魔力には様々な耐性があり、普段飛影が垂れ流している魔力で自然が作り出すような暑さや寒さは特に感じることはない

普段飛影が椿にドロップキックを食らっても無傷なのは垂れ流している魔力だけで防げるものだからである

イメージ的には透明な膜を纏っているものである


「…」


《炎舞》


うるさかったので魔法を発動し、炎が一瞬だけ椿を包み込んだ


「ひょぇわ!!?」


一瞬だけであったが驚くのは無理もない、身体は全く焼けずに寒さが消えたのだ


「お前…うるさい」


炎による耐寒の結界

ただ寒さを防ぐだけであるが椿にとってはありがたいことこの上ない


「ありがと飛影くん!!」


そんなこんなで突き進む飛影達は15キロほど進みようやく街が見えた

そこは絶対零度の雪と氷の大国、アイステンペスト

ここで飛影と椿は常識を知ることになり

椿は友達ができて

飛影は魔王として名を馳せる

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