☆『Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─』MSTさん
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(尾崎ゆうじの)
『第6回小説の「続きが気になる度」を評価してみた!』
評価シート
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作者さんへ……このたびは企画にご参加いただきありがとうございます。
読者さんへ……本ページにお越しいただきありがとうございます。「この作品良さそう」と思ったら作者さん並びに尾崎のフォローをお願い致します。
1 作品タイトル『Evil Revenger 復讐の女魔導士 ─兄妹はすれ違い、憎み合い、やがて殺し合う─』
作者名: MSTさん
作品リンクhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054887053912
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2 本作のキャッチコピーとあらすじ引用(抜粋)
(キャッチコピー引用)
兄さん、あなたさえいなければ、私はきっと幸せだった……
(あらすじ引用)
少女チェントの波乱の生涯を書く、剣と魔法のダークファンタジー。
親を失った幼い兄妹は、2人きりで生きねばならなかった。
兄は、日々の苦しさと怒りを妹にぶつけた。妹はただ耐え忍ぶしかなかった。
大人になった兄は名声を得た。妹には何も残らなかった。
そして、彼女は歪んだ。
(以上、引用でした)
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3 尾崎が作品を読んだ日:
2020年 12月 7日
4 各項目の評価・採点(各最高20ポイント、⑥のみ10ポイント(総計最大110ポイント)):
・評価モード……プロモード
・作者さんから要望……酷評は過去にも経験あるので、遠慮なくどうぞ。ということでした……!
・はじめにひとこと……私事ですが、今回が2度目のプロモード。必然的に見る目が厳しくなって、生意気な指摘に寄ってしまう傾向があるので、あまりやりたくないなと思っていたのですが、ガツンとくる成長機会を求めている作者さんが絶対にいると感じていたので、覚悟して残していたんですよね。まさかこんなに早く要望があるとは……鉢巻き締めて真剣でのぞみます。
さて、本作は文章がとても的確に綴られていて読みやすく、さらさらと進みまして、時間内で4話の途中まで。そこから急ぎで4話全部読み切りました。
※評価モード・採点基準について知りたい方はこちら
https://kakuyomu.jp/works/1177354054914254604/episodes/1177354055062357768
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※〇→おもに小説・物語制作における基礎力に係る項目
●→おもに物語を面白く・魅力的にするための創造力に係る項目
(細目のpt=5…とてもよくできている。4…できている。3…どちらとも言えない。2…あまりできていない。1…できていない)
①[タイトルやあらすじ・掴み……12pt/20pt]
〇興味を引くあらすじか、作品を読みたくなるか…3pt
〇本文冒頭は読者の関心を掴みそうか…3pt
●ストーリーに対し適切で魅力あるタイトルか…3pt
●キャッチコピー等の内容は読者の関心に刺さりそうか…3pt
②[キャラクター……17pt/20pt]
〇人物の感情描写が適切で、共感できるか…4pt(共感できるものとできないものアリ)
●登場人物は魅力的か…3pt(難しい)
●台詞や行動で人物の本質が描かれているか…5pt
●登場人物たちの関係性が上手く描けているか…5pt
③[ストーリー…… 15pt/20pt]
〇物語の方向性がはっきりしているか…5pt
〇あらすじから想像するに適切な書き出しになってるか…3pt
〇登場人物の設定がストーリーに生きてるか…4pt
●読者を楽しませようと工夫しているか…3pt
④[文章力…… 19pt/20pt]
〇読みやすく、書きこなれた文章か…5pt
〇用字用語に誤りがなく適切か…5pt
〇会話や台詞に同時代性はあるか…5pt
●内容に対し文体は魅力的か、ふさわしいか…4pt
⑤[世界観、オリジナリティ…… 18pt/20pt]
〇世界観や設定に矛盾はないか…5pt
〇フィクションなりのリアリティを演出できているか…4pt
●想定読者の興味、関心を引きつけられるテーマか…5pt(悩みました)
●アイディアが斬新か…4pt
+[続きが気になる度!……8pt/10pt]
●特有の魅力、売りがある…4pt
●続きが気になった!!…4pt
(実際に時間外で読んだ5/気になった4/どちらとも3/あまり2/気にならない1)
[おさらい]
・タイトルやあらすじ・掴み……12pt
・キャラクター……17pt
・ストーリー……15pt
・文章力……19pt
・世界観、オリジナリティ……18pt
・続きが気になる度……8pt
(〇基礎力系……46pt/55pt、●創造力系……43pt/55pt)
5 総合得点は──
( 89 )pt!
【コメント】
(良かったところ)
・文章がとても読みやすかったです。あっさり書いているわけではないのですが、読んでいて欲しい情報が適所にきちんと表されていて、すらすら読めました。気になるどーをやっていて、こんなに時間内で読めたのは初めてかもしれません。正直な感想です。
・設定の切り口はちょっと今までに見たことが無いですね。外では英雄に近い扱いを受けている剣士が、家に帰れば幼い妹に暴力をふるい、主人公である妹がその認識のずれに苦しむという物語が、ファンタジー世界にて描かれるというのは斬新。私が読んだ範囲以降で、きっと妹が兄に反旗を翻していくのだと思うのですが、とりあえず今回はそこまで読めずでした。
・現実世界でもありそうなことですね。幼くて何もできない8歳の女の子が頼れるのは、暴力をふるう兄だけという状況がとても苦しくて、そこについては共感せずにいられませんでした。兄も苦しいという状況なので、それについても私を苦しめました。なんという世界だろう……と嘆き、2話目はずっと険しい顔で読んでました。
(指摘・提案事項)
・プロローグがあまり必要性を感じなかったです。4話まで読んでもけっこうボリュームがあり、その中において王都歴を必要とする場面は存在しないですしね。その後の部分も、共感を呼ぶわけでなく、罪の記録について述べられても、なんだかあまり興味が湧かないです。いきなり2話目からでも十分いけると思いますけど、これについては全体を読まないと微妙なところですね。どうしてもプロローグを入れなければならないのなら、提案としては、血みどろで妹が兄と刃を向け合っているところからスタートなどの方が、物語の特徴を捉えているし、書きようによっては興味が湧くかもです。
それで言うと、いまのプロローグでも、ただモノローグするだけでなくて、設定を説明するためのシーンが興味をそそるものなら問題ないということですね。たとえばですが、『懸賞金が妹にかかっていて、それが妹のことを知らない地方の飲み屋で噂になり、彼女は静かに店を出る』とか。参考までに。
・4話目、ちょっとネックでした。ここまですらすら読んできて、ぽこぽこと違和感のある箇所にぶつかりました。
まず、『4人での生活』が突然始まっている感じがしました。いつから、というよりも、どういう経緯で主人公が働き出すようになり、そして一緒に活動するようになったのかがわかりません。
同じく4話。『襲われている2人組』は、確かにこの時点ではモブなのだろうけど、少し特徴とか、浮かび上がらせてほしいです。要人っぽい服装をしているなど、最初に描写してくれると助かります。「ん?『一団は2人組を無視して』って書いてるけど誰のこと?」という感じで、読んでいてその『2人組』を懸命に探しました。あとで護衛するわけだし、見失わない程度に描写してほしいです。
さらに4話、同様に見失いました。登場人物が増えた時に、誤読可能性がアップするのでしょうかね。兄の『お前らは街で待っていろ』の『お前ら』が誰を指しているのかわからず、私は後でシルフィがかまってちゃんした時に、「あ、あの『お前ら』って、シルフィも含んでたのか」という後からの納得を得ました。台詞と当該行為の間に字数を挟みすぎた感がありますね。
そうやって読み返したのが2回目なので、ちょっと読み進めるのは面倒な気持ちになりました。リーダビリティ的な話ですね。いままですらすら進んだ分、なおさらなのかもです。
裏を返せばプロの作品って、ざっと読んでも状況がしっかり伝わるよう配慮されているのですね。普通に読書している時には感じない違和感でした。商業作品の場合は多くの目が間に入って出版されているので、当たり前のことではあるのですけど……だからと言って、それを私たちアマチュアが言い訳にするわけにはいかないですよね。この機会に、良ければ改善してほしいです。それとも、読者の記憶力が悪いのがいけないのでしょうかね。
・ストーリー前半は主人公に共感できるのですが……大きくなってくると、ちょっとそこまで共感ができなくなってきます。読んでいる私自身が、主人公のモノローグにあるように、何もできない情けない存在に思えて、いやーな気分に……。共感できない主人公像になることは予想の範疇だったと思うので、せめて3人称にするなど、クッションを入れてもらった方が、客観性が出てほっとしそうです。
・気持ちよくない。このまま進んでも、きっと気持ちよくない。
そういう想像ができる物語だったので、結局どうするつもりなんだろう……と確かめたくなる気持ちはあるものの、おもしろくて続きを読みたい! という推進力があるわけではないのかなと感じました。どのみち苦しい。復讐ものとしての爽快感もイメージできないし、ハラハラする感じも受けなくて、ただ主人公が恨んでいるだけ、という未来像だけが浮かびます。
これは、現実の構造をそのままフィクションに落とし込んでも面白い作品になるとは限らない、という好例なんじゃないかと思います。
じゃあどうすれば良いかというと、4話までで兄をちゃんと悪者に仕立てあげるか、主人公が成長しても兄の庇護を受けなければならならいという強制的な状況を見せつけるか。じゃないでしょうかね。たとえば家の外に出たら、暴漢に襲われそうになったとか。さらわれそうになるとか。兄に鎖でつながれているとか。現状だと同情しきれないので、逆恨み感が強い。兄に軟禁されているから何のスキルもないのに、それをシルフィが誤解して侮辱したりすると、イラーっとした感情が出て、この先を読みたくなる気がします。例えばですけどね。
・文章は上手いのですが、回想調でずっと進むのがあんまり望ましくない気がします。現状、けっこう前半が長めですし、このまま回想調でいくと、緊張感が出ないです。
復讐の物語は、まず短めにわかりやすく激しい憎悪の動機を見せ、あとは進行させながら都度回想して、怒りのボルテージを高めていく……というのがセオリーに思えます。ちょっとそこまで自信を持っては言えないので、良ければリベンジものの映画などを、2,3本解析してみて、おもしろいと感じた作品の構造を調べてみるとよいかと。採用するかどうかは別として、絶対にマイナスにはならないと思います。今浮かぶのは海外ドラマの『リベンジ』とか。映画がいまいちわかんないですね。漫画の『累』も参考になりそうです。けっこう悪どいことをする主人公ですが、読者がそれを許せてしまうような状況を作っていて上手いですよ。
そんな感じで、指摘は終わります。
※作者さんへ……指摘や提案は、あくまで読んだ範囲における尾崎の見解です。ピンとこなければ、無視していただくことを推奨します。
(終わりにひとこと)
プロモードなので、結果いろいろ細かく指摘するに至りましたが、とても上手いです。特に文章の練度はぴかいち。プロローグをのぞけば、掴みもばっちりで、かなり身につまされる思いで読みました。
本作の一番の課題は、主人公と兄がやや中途半端で、気持ちよく復讐劇が行われるイメージが湧かないことですね。そこさえクリアできれば、細かいところはスルーできそうな気がします。なんか現状だと、「これから徐々に復讐していくけど、お前もけっこう悪いところあるからな! そこは理解しておけよ!?」みたいに言われている感じがして、エンタメとしては苦しいです。
逆に、MSTさんが別の作品を書いたらどんなふうになるのかな……? という興味は湧きました。どうしても本作にこだわりがあるのであれば構いませんけど、遊びで適当に、リフレッシュするつもりでよいので、ちょっと離れてみることもおすすめしたいですね。
6 読者のみなさまへ:
→ もやもやするのをいとわない方は、読んでみてもよいかも。
以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!
気になった方は、ぜひ↓のリンクからこの作品を読んでみてくださいね!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887053912
では、次の作品紹介をお楽しみに!
創作コーチ
尾崎ゆうじ
(note※フル読み) https://note.com/ozaki_yuji
(youtube) https://www.youtube.com/channel/UCu54sC6pviWQUC1eA6dqDKg/featured?view_as=subscriber
※初級者向けの『ゼロから講座』は、主にyoutubeとカクヨムにて実施しています!
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