★『「Frame」─月ノ宮学園高校美術部─』七芝 夕雨

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 第2回気になるどープロジェクト 評価シート



1 作品タイトル『「Frame」─月ノ宮学園高校美術部─』

作者名:七芝 夕雨


2 作品のリンクはこちら↓

 

https://kakuyomu.jp/works/1177354054917424501


3 尾崎が作品を最初に読んだ日: 


 2020年 8月 21日 


4 メモ(感じたこと、作品内容など):


① 全体の雰囲気から察するに、なんだか今まで見てきた作品とは違う、文科系な香りがしました。ちょっと気になります!


② (良かった点)


(1) 設定が面白そう、気になる


 ・あらすじ→『frame』という作品がどんな作品なのか。


 ・プロローグ→街の背景や、登場人物が何を恐れているのか。


 ・第1話→その街に転校してきた彼女が、これからどうするつもりなのか。


 という点で、各話気になりました。良いと思います。


 あとframeとflameを重ねるような表現もあって、ちょっと心をくすぐる感じが良いですね。

   

(2) 導入が気になる


 標記のとおりです。プロローグにおいて、謎めいた感じが良いですね。電話の相手が怯えた様子の警察官、というのもマル。


 男性が電話で起き、とにかくどんな事件が発生したのかを探るために車に乗って現場に向かう。読者には多くを知らさぬまま、謎を残しつつもスムーズに事が進んでいく感じが素晴らしい。


(3)心理描写


 その謎めいた世界に生きる人物(特に三部先生)の心理描写はなかなか素敵。その街で育ち、いまは教職に就いているその人物の正義感や責任感といった描写が、過不足なくスムーズに描かれている。上手いなあ。



③ (全体を通して気になる点・主な指摘事項)


(1) キャッチコピー、あらすじは手直しの余地あり


 なんというか、漠然としている箇所があって、素直に「どういう話なのかな」という疑問につながらない感じがしました。詳しくは動画で解説しているので観てほしいです。


 キーワードは『段差づくり』でしょうか。


(2) そこは直球でよいのでは?


 第1話に、あえてだと思うのですが(あるいは文章上言葉の重複を避けたかっただけか)、そのままスムーズに直球で書いた方が良いのでは? と感じる箇所があって、動画でちまちま説明しています。


 ピンと来なければ、無視してください。リーダビリティが下がるなあと感じたので、一応指摘事項にしました。


(3) 第1話の視点変更

 

 第1話の後半は、動画では時間の都合でちゃんと読めず、ちょっと気が付かなかったのですが…(不覚)。視点の変更が急すぎる感じがしました。あまり無視できない違和感ですね。


 久しぶりに引用します。


引用

『三部の提案は、どれも魅力的なものには違いない。それを理解しているからこそ、女生徒は反論することなく、ただ傾聴していた。


 しかし、どれほど心揺さぶる言葉だろうと──藤邑 いのりにとって、美術部以外の活動は意味をなさない。この教師にとって譲れないものがあるように、祈にとってもそれは存在する。』



 すぐ1行前までは、『藤邑 いのり』は『女生徒』で、視点は三部先生だったので、せめて『女生徒──藤邑 いのりにとって~~~』のようなワンクッションを入れてほしいかなと思います。


 そしてもっと言うと、この第1話に祈の視点は不要じゃないかなあと感じました。引用のため改めてもう一度この箇所を読んだのですが、何のための祈視点なのか、という疑問が生じます。


 私が読む限りだと、祈の視点が隙間に入り込むことで、逆にミステリアスな雰囲気が損なわれ、第1話から第2話まで読み進めたいという欲求が減少してしまったなあという残念な感覚が胸に残りました。


 祈の引きぎわが早く、聞き訳が良かったものの、それが逆に妙だった──ということが読者に伝わればそれでいいと思います。「もしかしてこいつ、何か企んでる?」といった、それを確かめに次話へ進みたくなるような仕掛けがすでに存在しているのに、それをわざわざ自分から壊している行為に近いです。


 今後すぐに祈を中心とした展開になるのだろうし、だったら後でいくらでも三部先生に対する同情心だとか、その行為が故意かどうか、といったことも読者に伝えることはできます。


 ならばここで紹介するのは『三部先生から見た祈』に留め、「なんかちょっと妙な感じもしたけど、気のせいよね…」くらいで処理し、そのまま先生のモノローグへつなげてしまう方が良いと思います。


(4) 芸術とは?


 もしかしたら意地悪な感想を抱く読者もいそうなので(例えば尾崎ゆうじとか)、いずれ作中のどこかで、その街が『どこからどこまでの芸術を捨てているのか』ということをさりげなく紹介してあげると優しいかもしれません。


 そこまで偏屈な人はそうそういないかもしれませんが、要するにアートに惹かれる読者は総じてこの作品に惹かれる可能性があるわけで……その時に、「文芸部はあるのかぁ……。つまり文章による創作は芸術扱いにはならないってことかなあ?」とか「音楽はどうなのかなぁ?」などと考え、モヤモヤさせてしまうかもしれません。


 前半ではストーリー進行の方が重要なので気にしなくてよいと思いますが「美術作品のみが芸術だと考えています」と作者さんが主張するのでないかぎり、


「いや、ほら、芸術っていうと広義ではどこまでもいっちゃうでしょう。でもこの街は「frame」という美術作品によって芸術の神が降りてきたっていうことになってるから、他の分野は許されるけど、美術系だけは駄目なんです~」といった旨の、ちょっとしたフォローをしてあげてもいいかなと感じました。


 あなた(読者)の思う芸術というものを、私(作者さん)は否定しているわけじゃないですよ、と伝えてあげることができれば、それで余計な誤解は無くなるかな、というお話でした。


 以上、ここで説明できなかった内容は、動画にて紹介しています。


 

☆もっと詳細が知りたい方は、こちらのyoutube動画をご覧ください。

 口下手の尾崎ゆうじが一生懸命細かく解説しています。(だらだらしてるので倍速再生推奨!)

 

 動画のリンク↓  

 

https://youtu.be/lOUwBg4EZ7Y 


 では、採点に移ります!



5 この作品の『 続きが気になる度 』は……

 

 …


 ……


 …………


 【80%】です!


 タイトル~あらすじに関して言うと、ちょっと惜しい感じがしました。が、とりあえずプロローグに関しては、かなり強めの引っ張り具合で、とても良かったです。


 第1話もそれなりに引っ張られるのですが、上記の理由により、どうしても第2話へ……! という力が弱まり、「さあ評価シート書こうっと」と引き戻されました。残念。



6 読者のみなさまへ:


 → おすすめだと思います。が、よく見たらまだ5話まで(閑話のぞく)ですね。とりあえずこちらも要フォローかなあ。


 芸術や音楽を小説や漫画のような媒体に落とし込むのはけっこう難しいというか、勇気と知識が必要になってくるのですが、本作であればなんとかなりそうな予感がします。期待しましょう!



 以上、最後まで目を通していただきありがとうございます!

 気になった方は、ぜひ↓のリンクからこの作品を読んでみてくださいね!


https://kakuyomu.jp/works/1177354054917424501


 では、次の作品紹介をお楽しみに!


 尾崎ゆうじでした!

 

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