高校2年の僕達
悠々自適にマイペース
第1話 進級そうそう
何事もなく過ぎ去っていった高校生活に満足していた一年だったが、二年生となった今年は、何事もなく過ぎ去るとは限らない。
なぜなら、この学校には面倒な人物が三人も居るからだ。
「それも、このクラスにな」
進級そうそう教室内の窓側の席に小声で話す男子が一人と面倒な対応をする男子が一人居た。
「ふーん」
「なんだよ、その適当な態度! 下手したら、今後の学校生活が危ういだろ?」
途中読みの本に栞を挟み、全く興味がない様子で答える。
「いや、特に関わらなければいいだけの事だろ?」
「確かにそうだけどよ。面倒な奴らが三人だぜ? 普通にヤバイと思うだろ?」
「そのヤバイってどうヤバイんだ?」
「えっ? 知らないのかよ!」
「知らない」
「しゃーねぇ、知らないお前に教えてやるよ」
そう言って後頭部を軽く搔きながら説明を始めた。
「まず、一人目は、美少女だが暴力で黙らせる鉄腕の美少女というあだ名が付いた。
「へ~」
「続いて二人目は、無言で立っていれば美女に見える勿体無い美女というあだ名が付いた。
「へ~」
「最後に三人目は、彼女を見たら鋭い目付きで返される眼光の女というあだ名が付いた。
「へ~」
「お前、適当に返事してるだけだろ?」
「ちゃんと話は聞いていたよ。ただ、興味がないだけ」
「全く、人が親切に教えてやったのに」
「わかった。その三人には気を付けるよ。後、そろそろ始まるぞ」
指差す先にある時計を見るともうすぐホームルームが始まる時間を指していた。
「やばっ!」
慌てて自分の席に戻る友人を見送り、途中読みだった本を机の横に立て掛けてある鞄にし舞い込む。
周囲を見渡し、誰が言っていた誰なのか分からず、教師が来るまで窓の外を眺める。
相変わらず、外は雲一つ無い良い天気だ。
▽▽▽▽▽
始業式との事もあって、午前中に学校が終わり、帰る身支度を始めていると朝話し掛けて来た友人が近付いて来た。
「よう、帰ろうぜ」
「そうだな」
鞄を片手に教室を出る。
帰り道を歩いていると隣でなんだか楽しそうな様子の友人が不思議に思い、声を掛けてみる。
「なんだか、楽しそうだな?」
「だろ? 今日は、例の三人が来てないみたいだったし、何事もなく終わったからさ。それが嬉しくて嬉しくて」
彼の中では、気分は最高らしい。
「それは良かったな」
「おうさ! それでな、運良く同級生と友人を更に増やす事に成功したぜ!」
グループを増やしたスマホ画面を自慢げに見せて来る。
「友達を増やす早さは流石だな。その調子で例の三人とやらと仲良くなったらどうだ?」
「無理無理、絶対無理だね。もし、あの三人と仲良く出来るなら、そいつは化け物と呼ばれるようになるぞ、きっと」
「増やしの
「それ、小学校の頃のあだ名だろ? 今じゃお前以外誰も呼ばないぞ」
「そうなのか?」
「そうだよ。少しは人に興味持ったらどうだ?」
「え~、面倒な事になるだけしな。やめておくよ」
「そうか。ま、少なくとも俺が居るし、友達がゼロになる事はないだろう」
「それはどうも」
そんな風に話していると駅付近に着いた。
いつも仕舞っているポケットから定期を取り出そうとしたが、入っているはずの定期がない。
「ん? どうした?」
「悪い勇司、学校に定期忘れた」
「別に切符買えばよくね?」
「そうしたいんだが、あの定期入れには、大事な物まで挟んであるんだ」
「そっか、なら取りに行かないとな。ついていこうか?」
「いや、先に帰って構わない」
「了解。んじゃ、何かあれば連絡くれ」
「ああ。またな」
片手を振って駅に向かう勇司を見送り、今来た道を戻って行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます