第六話 不穏なる影
三人が去っていって数分後。死体散らばる町中に、五つの人影があった。
漆黒のローブに身を包み、尚且つ己の顔を隠すように目深までフードを被っているそれらは、自分の足下を見下ろし各自バラバラの反応を見せている。
「ヒッヒヒッ! こりゃ、こりゃおもしろい! ヒヒッ」
ただひたすら笑う者。
「…………ふあっ」
興味なさげに欠伸をこぼす者。
「なんとまあ、これは、はぁ……」
やれやれと言いたげに肩をすくめる者。
「あ、見てこれ! ほら! すっごいグッチャリ!」
死体を漁っては楽しそうに声を上げる者。
「いや、でも、うーん。だけど、あー」
何かを必死に悩んでいる者。
面白いくらいに揃わない反応。しかし、それを気にする者などここにはいない。
「あ! ほら見て!」
死体を漁っていた者が再び声を上げた。かと思えば、その者は手にした盗賊の頭を天高く掲げ、その場でクルクルと回り出す。
「臭う! 臭うよ! 間違いない! これはあの子の痕跡! やっぱり目覚めてたんだ! はやく迎えに行かないと!」
「……疑問。なぜ迎えに行く必要が存在する? あれが目覚めたならばあれは自ら私たちの元に来るのが正しい。時が来るまで待機。これこそ私たちのやらねばならないこと」
「あーちゃんはまーたそうやってボソボソ言う! 大体! 待機とかクソつまんなすぎ! そんなのやーだー!」
ぺいっと頭を放って地団駄を踏むその者に、口を開いたのは悩んでいた者。
「えっと、でも、うーん。アガリアレプトは正しい、はず? あ、でもネビロスの言いたいことも、うーんと、わかる。迎えに行きたい、えっと、それはわかる」
「ヒヒッ、相変わらずの悩みようだな、フルーレティ。そんな事ではさぞ生き辛かろう。ヒヒヒッ」
「さ、サタナキア! からかわないで、えっと、ください!」
「ヒヒヒヒッ!」
腹を抱えて笑うサタナキアに、フルーレティは憤慨したように腰に手を当て顔をそらす。それに意見したのは、やれやれと言った様子の人物。
「お前たち、やめろ。こんな所で言い合ってどうなる? 今はあれの痕跡が発見できた。それで十分なはずだ」
「ですがサルガタナス!」
「フルーレティ。サタナキアの意見も最もだ。お前は少し悩み癖が強すぎる」
「う、ううっ……」
落ち込むフルーレティを慰める者は存在しない。
サルガタナスは今一度死体を一瞥すると、長いローブの裾を翻しながら踵を返した。それに続くように、他の者たちも歩き出す。
「楽しみですねぇ、実に。ヒヒッ」
サタナキアが笑う。
その笑いが聞こえなくなる頃、残されたバラバラの遺体たちはまるで用済みだとでもいうかのように、忽然と、その場からその姿を消し去っていた……。
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