第10話『ヘタれる秀麻』
ホテルを指差し、『休憩しないかな?』はやはり男女のお誘いなのだろう。
えっ……もしかして今お金発生している?
俺は了承したいという欲求を理性で強引に抑えつけ、冷静に今の状況を確認しようとした。
しかし脳内では、悪魔の俺と天使の俺とで鬩ぎ合っていた。
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↜( • ω•)Ψ 「この凡ゆる男を悩殺し、
(天 ˘ ω ˘ )「よく考えてみてください。お誘いに乗ったら最後……怖いお兄さん達に身包みを全て奪われてしまいますよ」
↜( • Д•)Ψ「そんな者のいうことを聞いてはならない!女性とムフフをするのは良いことだ!しかも桃さんから誘ってくれているんだ。断るのは失礼ではないか!」
(天・Д・)「此れは金銭が発生している可能性が高いのですよ。無闇矢鱈に危険地帯に進む必要はないのです」
↜( ー ωー)Ψ (ー∀ー天)
「「……っ貴様(貴方)は静かにしていろ(ください)!!!」」
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結局俺の脳内での鬩ぎ合いはどちらが勝つこともなく、ただの口喧嘩と成り果てていた。
どうするべきなのだろう。桃さんは不安気な様子で此方をつぶらな瞳で見つめてくる。頬は林檎の様に真っ赤に染まり、身体は小刻みに震えていた。
俺はその表情をみて気持ちの整理が出来た。震える女性を抱くなんて到底出来る訳がない。
俺は一言、震える桃さんの耳元で「とてもじゃないけど、震える女性を抱くことは出来ないよ」と言い残しその場を立ち去った。
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俺はそのまま何処にも立ち寄ることもなく、自宅のタワーマンションに帰った。
勿論のことだがタワーマンションには一人で住んでおり物静かで、ヘタれて真っ当とおもえる理由をつけて逃げてきた俺にとっては、唯々心の虚しさを映し出すかの様な空間である。
そんな空間には俺の「うぅ……」という呻き声が鳴り響いている。
何故ヘタれてしまったのだろう。断ってからやはり思う。
"あの我儘に育った身体を自由に味わいたい"
唯その思い一つである。後悔しても仕切れない……またレンタルするつもりはなかったが、また桃さんをレンタルするべきなのだろうか?
俺は答えを出せないまま、現実逃避するかの様にベッドに入り、未だ日が入っていない中眠りに就こうとした。
尚俺はそのまま日を跨ぐまで眠れなかった。
なんで眠れなかったんだ!
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