月昇る蒼き空の下で

芋メガネ

月昇る蒼き空の下で

2月末日 18:30

UGN N市支部 会議室


一つの部屋に集められたUGNの面々。

支部長たる雲井を始め、エージェントの稲本、チルドレンの紫月だけでなく、隣街の支部のエージェントやイリーガルまでもがそこに集結していた。

皆が固唾を飲む中、杯を持った稲本が前に立ち、そしてそれを掲げた瞬間

「1年間お疲れ様でしたァ!!!!乾杯ッッ!!」

「「乾杯!!」」

宴が幕を開けたのだ……


—————————————————————

2月末日、それは全ての学生達の試験を終え疲弊しきっている頃。

加えてこの1年は災害やテロに近い事件も多発しイリーガルも誰も彼もが満身創痍であった。


そんな学生達を労おうという意思のもと雲井や稲本を始めとしたN市支部の面々によって宴が開かれることとなったのだ。


「凄い賑やかですね……」

「まあ、この1年で色々とあったせいで色んな奴と出会ったからな……」

稲本とアレクシアの二人はその立食パーティの中で交流する人々を眺めながら思わず口にしていた。

「おうおう、こんな時でも彼女とイチャイチャかよ。」

そんな中一人の青年が稲本に声をかけてくる。

「ガラ悪く突っかかってくるなって。」

「いやだって腹立つし……」

「理不尽だな!?」



彼の名は『霧崎 零一』。UGNイリーガルであり、同時に稲本やアレクシアと同じ大学に通う青年である。


初めはある事件でこの世界に関わることになった青年だったが、


『霧崎っ……!!サポート頼んだ!!』

『面倒くさいって……言ってるだろ!!』

『いや俺も巻き込むようなのを撃つな!?』


歳が近いことやよく事件に巻き込まれることから稲本とは組まされることが増えていた。


今となってはいがみ合いながらも稲本にとっては相棒に近しい存在である。



「ったく、お前は雨宮とか宮本たち高校生組と話してこいよ。俺はここでアレクシアと——」

稲本が飲み物片手に話していると、隣に彼女がいないことに気づく。

「悪いけどアレクシアは借りていくわよ。」

「紫月!?」

「あら、私も久々の休暇よ?友人と話すことの何が悪いのかしら?」

「そういうことなんで、ごめんなさいね。」

アレクシアも紫月も二人して笑顔で稲本の元を去り、嬉々としながら話し始めていた。


「まあ、稲本……」

「霧崎……」

霧崎は項垂れる稲本の肩に手を乗せ、

「ザマァwww」

「殺す。」

一触即発の事態に陥らせていた。


「いや、こんな時まで何やってるんですか稲本さん……」

「何って、このクソ野郎の抹殺だよ。」

「相変わらず野蛮だなぁ……」

『おうおう殺しなら俺も混ぜてくれよ!!』

「いや、村正も物騒よ!?」

稲本達の前に現れたのは4人の高校生。

2人の大人しげな男子高校生と、1人の活発そうな女子高生。そしてもう一人、

「チョコアイスがない……」

物静かで何もその表情から読み取れない少女。


『柊木政宗』、彼は元々ただ高校生だった。


そんな彼の人生が一変してしまったのは一振りの刀、『村正』を握ったときから。それは血を求め使用者を蝕む妖刀であり、レネゲイドビーイングだったのだ。


『さっさと殺そうぜェ!!新しい主人殿ォ!!』

『僕は……誰も殺したク……なイ………!!』

『そのまま耐えろ……!!』


そして今彼は、

『俺に、剣を教えてください。俺はあなたのように、誰かを守れるようになりたいんです……!!』

『……構わねえ。ただ俺が教えられるのは基礎だけだ。それでいいんだな?』

『はい……!』

稲本の弟子として剣を修行している身である。




『篠原悠里』、彼もまた普通の日常を過ごしていたはずの学生だった。

彼と稲本の出会いはある殺人事件。

『君の友人を殺したのはオーヴァード、超能力者だ。」

『おーゔぁーど……?あなた一体何言ってるんですか……?』

『……まあ最初はそんなもんだよな。』

最初は彼も稲本のことを信頼していなかった。


今では

『……やっぱり稲本さんって強いし頼りになるときはなるんですけど、胡散臭いんですよね。』

『いや酷いな!?』

やはりまだ心から信頼された訳でもないようであった。



ショートヘアの少女、『宮本詩乃』。

彼女は誰かを守りたいという志から若くしてUGNエージェントとなった剣士。

『稲本さん、私に稽古をつけてください。』

『……俺の剣は暗殺剣だ。それでもいいのか?』

『私、強くなりたいんです。そうすればみんなを助けられますから。その道を歩んでるあなたにこそ教えて欲しいんです。』

『…………二天一流に稽古つける日が来るなんて思わなかったよ。いやまったく、政宗といい志のある後輩諸君ばかりで先輩の俺は嬉しいけどな。』

二天一流、即ち『宮本武蔵』が作り上げたその剣術を扱いし少女。

稲本はその少女の師として剣を教える身となっていたのだ。



そして『雨宮 凛』。

彼女だけは元よりこちら側の人間だった。

『……お前がまさか、誰かを助けたいと言うとはな。』

『別に助けたいわけではない。 ただ俺と同じような兵器を増やしたくないだけだ。』

『………俺は別の任務で手が離せねえが、支部長や仲間たちには伝えとくよ。』

『ああ、助かる。』

あのイリーガルが持ってきた情報により保護されたFHの少女。


少女はあの男と同じように始めは感情はなかった。


『私は人ではありません。だから、命令を与えられるまでは待機しているものです。』

『……貴方は兵器なんかじゃない。思考して、本当の正しさを探すことの出来る……私たちと同じ人間だから。』


『……とても甘くて、何か胸の奥の温度が上がったような気がします。』

『な、美味いだろ。そういう時は美味しいって作った人に言ってあげるといい。』


けれども、紫月や霧崎、色々な人々と触れ合う事で人としての感情を取り戻し、今となってはこの支部の一員となっていた。



「あーー……傷口に酒が染みる……」

「何おっさんくさいこと言っとるんだお前さんは。」

稲本と藪は2人、夜風の当たる夜空の下で酒を口に含みながら言葉を交わす。

「で、態々2人きりで話すということは何か聞きたいことでもあるんじゃろ?」

「……ドクター、俺はあと何年戦える?」

稲本は傷を見せる。

それは先日の黙示の獣との戦いの時に腕に負った傷。

深い裂傷の跡は痛々しい程に彼らの戦いがいかに熾烈なものであったかを語っている。

「こんな戦い方をしてれば保って3年、早くて来年には腕が先に動かなくなるだろうな。」

「……そうか。」

「お前さんが戦ってきた相手は誰も彼も強かったのはわかっとる。だがな、アレクシアちゃんやみんなと一緒に生きたいのならば辞めるべきだ。」

「…………」

藪は元々前線における衛生兵だ。

何人もの怪我を癒し、同時に死を看取ってきた。

その事を稲本も知っているが故に、それ以上何も言えなかった。



彼がこの1年間戦ってきた相手は、誰も彼もが強敵だった。


『阿桜華音』。UGNのエージェントであり、音速の剣術を扱う女性の剣士。


彼女は誰よりも稲本の求める、誰かの為の剣を極めた人だった。


だが、

『その正義も何の意味もなかった……!!』

『ッ……!!』

負傷と同時に弱った心をつけ込まれ、ジャームと化したその人。

彼女の刃は人を守る物から傷つける物へと変貌してしまった。


『アンタの正義が形骸化しちまったのなら……!!』

『ッ……!?』

故に稲本はその手に刃を握った。

『俺は俺の守る刀で、あんたを止める……!!』

自らの信ずる正義を、かつて阿桜が守ろうとした物をその手に乗せて。

『終之太刀……!!』

『絶影剣・無名一閃……!!』

ぶつかり合った刃は互いの体を傷つけた。

阿桜のは稲本の胴体を、稲本のは阿桜の右腕を斬り裂いた。

ただそこに最後まで立っていたのは、傷だらけになりながらもその剣を離さなかった稲本であった。



彼が戦ったのは決して武力に秀でたものにあらず。

『ねえ、お兄さんは正義の為なら人を殺して良いの?』

『お前に……阿桜をジャームにしたお前には言われるつもりはねえ……!!』

FHチルドレンの『マスティマ』。

阿桜をジャームへと堕とした、邪悪の権化とも言える少女。

純粋な良心は人の心の枷を解き、人を救う。

ただそれは、純粋なのだ。


故に、邪悪だったのだ。


そして彼女を守るFHのエージェント。

『貴様の剣には、純度が足りん。』

『強…………い…………!!』

最強にして天元に最も近いと言われる剣豪、『刃狼』。

その男が振るう剣は全てを斬り裂き、全てを薙ぎ払う。


彼の業はただ一重に強さの果てにたどり着いたもの。

その一撃一撃は稲本の刃を砕き、そして彼を下さんとした。


それでもなお、彼は止まらなかった。

『今までの太刀が通用しねえってなら……!!』

『ほう……』

『五之太刀改……!!』

決して勝機を逃さず、持てる全てを持ってしてその敵と相対した。

『雪月花ッ……!!』


『戦いの中で編み出したか……面白い。』

『あと……一手……!!』

その刃はあと一歩で届かず。

稲本に向けて人狼の刃が振り下ろされようとした時、

『おじさん、時間よ!帰りましょ!』

『……また死合うことを楽しみにしているぞ、少年。』

人狼の刃は振り下ろされる前に収められ、彼らはそのまま何処かへと消えたのだ。

『逃げられ……いや、逃げてくれたの方が正しいか……』

彼はあと一寸届かなかった刃と悔しさをその右手に握りしめていた。



「ってもまあ、暫くは落ち着くだろうよ。」

「本当にそうだといいんじゃがなぁ?」

「いやドクター、ほら、もう無茶はしねえって?」

「一度でもその言葉を守ってから言えいお前は!!」

藪と稲本はワイワイと二人で盛り上がり、騒ぎ立てていた。


「あ、あの藪先生。」

そんなとき、一人の少女が藪に声をかける。

「おお、真奈ちゃんかどうした?」

声をかけたのは『黒鉄真奈』、つまり『黒鉄蒼也』の妹である。

「レオンさんから電話が……」

「何?あの坊主また何かやらかしたのか……」

藪は真奈から電話を受け取るとその場を離れる。

レオンというのは藪の一番弟子だが、今日は夜勤ということもありこの場にはいない。


そして稲本と真奈は二人その場に取り残された。

「……あー、真奈ちゃん、こっちには慣れたか?」

「はい……!紫月さんを始め皆さんによくしていただいてるおかげでどうにか馴染めました……」

実を言えば彼らはこの3年間、真奈の本当の姉である四ヶ谷楓が死んでから顔を合わせていなかったのだ。


加えるならば、ついこの間まで彼女はFHのマスタークラスのエージェントの妹だった。

故にUGNとして近づくことさえも危うい関係性だったのだ。


そんな彼女がなぜこちら側にいるか。

それは単純な事だ。


黒鉄蒼也が、一時的ではあれどUGNに寝返ったのだ。


—————————————————————


黙示の獣によるオーヴァードの殲滅を企てた者たちがいた。


それはFHだけでなくUGN内部にも存在し、罪なきエージェントを黙示の獣として使い、全てのオーヴァードを滅ぼそうとした。


だが、それは未然に食い止められた。

FH所属エージェント、黒鉄蒼也の持ち出した情報とアンプルによる対抗。


雲井率いる稲本、紫月のN市支部の面々、加えてH市支部の宮本やイリーガルの霧崎、悠里、政宗の全員が力を出し切り、寸でのところで大災害は未然に防がれたのだ。


けれど、それが黒鉄蒼也を観た最後の姿だった。

『黒鉄。……妹さん、ずっと待ってるわよ』

紫月の言葉に黒鉄は暫しの沈黙を見せ、そして————

『…………俺は、もうあいつの兄を名乗れるような人間ではないんだ。』

決して振り返る事なく、奴は全てを終わらせるために去っていった。


現場は跡形もなく爆破され、何一つ残っていなかった。

それは同時に、彼が死んでいない可能性も示唆していた。


『紫月さん……稲本さん……兄さんは……』

『大丈夫、彼の事は必ず見つける。』

『絶対だ。あいつの事は必ず生きて連れ帰る。』

稲本含め精鋭による捜索隊が結成され彼の捜索は行われた。

だが多少の手がかりは見つかれど、決定的な手がかりが見つかる事はなかった。


念入りに仕掛けられたトラップにより証拠や痕跡は次々と消えていったのだ。


そしてすでに彼が失踪してから2ヶ月。

未だ確固たる手がかりは見つからず、既に捜索隊も解散していた……


—————————————————————


「稲本さん、私、春からUGNにもで働くことになりました。」

「おーおーそっ……ってマジか!?」

「はい。藪さんのもとで助手をさせて頂くことになりました。」

笑顔で答える少女。

その優しい笑顔の裏には確固たる意志のようなものが見えた気がした。

「兄さんはいっつも俺のようにはなるな、お前は真っ当な道に進めって口うるさく言ってたんです。でも、私も姉さんも兄さんに救われた。私は、兄さんみたいに誰かを救えるような人間になりたいんです。」

「…………」

稲本は何も答えられなかった。

本音で言えば止めたい。この世界に入ること自体が危険である。加えてFHエージェントの妹となれば尚更だ。

だが、彼女のその真っ直ぐな眼を見たら止めようにも止められなかった。

「でも私戦えないし、それなら別の形で誰かの命を救いたいなって……。そしたら紫月さんが藪さんを紹介してくれて……」

「……ったく、兄妹というか、姉妹というかお前達は似たもん同士だな……」

「はい。よく言われます。」

満面の笑みで答えた少女。

稲本はこの満面の笑みに何故か救われたような気がした。


彼女の大切な人たちを守れなかった負い目があるからかも知れない。

それでも、誇らしく思えた。

彼らが残したものは、今まさにここに生きていると確信ができたから。


「何じゃ、二人仲良く話してるなら老人は一人酒に戻った方がいいかの?」

「いえ、話は終わりましたので大丈夫です。」

「ああ。俺もちと出迎えに行かなきゃいけない奴がいるんでな。」

「おお、そうかいそうかい。わしゃ一人寂しく飲ませてもらいますよ。」

真奈は手を振りそれぞれの場所へと戻っていく。

稲本も出迎えの為と外へと出て行った。



外に出ると、雪がちらちらと降っていた。

溶け残った雪が道路の端に溜まっており、明日の朝には積もっていてもおかしくないような気がしていた。


そしてその雪の中、黒いパーカーにフードを被った男が一人立っていた。

「……さっさと中入れよ。風邪引きてえのかお前は。」

「馬鹿は風邪を引かんという。俺もお前と同じように風邪は引かんだろう。」

「あ゛?何でここでわざわざ喧嘩売るんでテメェは?」

稲本は悪態をつきポケットに手を突っ込みながらも男に近づいていく。

「わざわざここまで来たんだ。みんなにちゃんと挨拶するつもりだったんだろ?」

「……そのつもりだった。だが俺は、ずっと彼らを騙し続けてきた。合わせる顔など……」

「……ハァ〜〜〜〜〜」

稲本は盛大にため息をつく。

その吐いた息はあまりにも白く、フードの男の顔を覆ってしまうほどだった。


「お前が他のジャームと同じように凍結処理されていないのは、アイツらの証言のおかげだ。」

「……どういうことだ?」

「どうも何も、監査が来た時にお前は敵じゃないって、味方になってくれるってアイツらが証言してくれたんだよ。俺は元身内だから証言が認められなかったからな。」

「…………」

「ちゃんと、会ってこいよ。そっからだろ、お前の新しい一歩は。」

「………………そうだな。」

フードの男は長い沈黙の後、重々しい一歩を前に踏み出した。

「…………ありがとう、相棒。」

「…………おうよ。」

背中合わせで交わした言葉。

二人は互いの顔は見えずとも、どこかその顔が見えた気がしていた。


男は中へと入っていく。

新たな一歩を、己が信じる真の正義を貫く為に。

その覚悟を胸に。


そして一人残された稲本。

「……寒っ。早く戻んねえと風邪ひいちまう。」

稲本も戻ろうとした時。

「あ、稲本さん。」

扉を開けて出てきたのはアレクシアだった。

「アレクシア、どうしたんだ?」

「ちょっと話してたら暑くなってきちゃって夜風に当たりたくて。」

「室内はまああったけえもんな……」

「良かったら二人で話しませんか?」

「俺がその誘いを断る理由はないよ。」

稲本はアレクシアの手を取る。

その手は金属の冷たさもあったが、それ以上に自らの体温が上がっていくような気がした。



そして2人は、少し離れたとこのベンチに腰掛ける。

「これ羽織っときな。風邪引かせるわけにもいかねえからな。」

「ありがとうございます。」

稲本は缶コーヒーと能力で作った上着をアレクシアに渡した。

「……っても、この一年あっという間だったな。」

「稲本さんと一緒に温泉も行って、紅葉も見て、こうやって雪の下でお喋りできて……。私、日本に来て良かったです。」

「それなら何よりだ。せっかく遠路遥々日本まで来たんだ、骨の髄まで楽しんでもらわなきゃな。」

「はい。今年も色んなところに行きましょうね。」

「…………ああ、そうだな。」

答えを躊躇ってしまった。


一年後、この体が動いている保証はない。

日々の任務も熾烈を増し、明日の命さえも分からない。


それでも彼女にはそんなことを伝えられるわけもない。

必死に絞り出した言葉だった。


「……稲本さん。」

「ん、どうした?」

「稲本さんは、したい事とかないんですか?」

「……言われてみるとそう簡単には思いつかねえなぁ。」

稲本は少し考えたがやはり、納得のできる答えを出すことはできなかった。


刀を振り続けて12年間、休む間もなくずっと戦い続けてきた。

いざ立ち止まった今、そんな自分にやりたいことがあるかと言われると、まったく持って思いつかなかった。

「私、稲本さんが誰かの為に戦ってるって分かってます。けど、それでも好きな人と一緒にいたいんです……だから……」

「……もう少し、ゆっくり生きてみたいかな。俺は。」

咄嗟に出た答えだった。

けれども、本心だったのだと思う。

「ずっと心配ばっかかけてきたし、いい加減腰を落ち着けるべきなのかもなって。」

「……本当に稲本さんですか?」

「いや酷いな!?」

「だって稲本さん……いっつも止めても任務に出て、傷ついて帰ってきて……」

「ようやっと色んな戦いが終わったから、さ。俺もちょっとくらい休んだって、いいかなって。」

「じゃあ……!」

「ああ。春になったら桜を見に行こう。夏になったら海に行こう。秋になったら紅葉を見に行って、冬になったらスキーにでも行こう。」

「じゃあ私、まず桜の名所に行きたいです!!」


二人は未来を語り合う。

まだ来ぬ未来であれども、夢は膨らんだ。

もしかしたらそれは訪れない明日かもしれない。

それでも夢を語り合う二人は、ただただ幸せそうだった。


「冷え込んできたし、そろそろ戻るか。」

「はい。」

二人は雪の中、支部へと戻り歩いていく。


月灯りが照らす空の下。

まだ夜は更けたばかり。


それでも黒の中でほのかに蒼く輝く空は、明日へ続いている。

そんな気がした。


to be continued……

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