第3話最初の攻撃【疑惑の提示】
四月十一日、寛太郎は午前十時に池上とリモートで会った。
「ところで池上君、一つ訊いてもいいかな?」
〈いいよ、何?〉
「僕はしがないユウーチューバーだから、別に警察に捕まったって構わない。出来ることなら、何でもする。ただ僕はどうすればいいんだ?」
〈それは簡単だ、YouTubeから大逆転オセロシアムの黒い疑惑を、発信するんだ。それだけでいい。〉
「黒い疑惑・・・一体なんだ?」
〈やり込んでいくことで、見えてきた事だ。それが本当かどうなのかを、検証してYouTubeに投稿するんだ。〉
「なるほど。あっ、そういえば大逆転オセロシアムで通信対戦していた時に、通信が切れてAIが代打ちすることがあるんだ。その時に限っていつも負けるから、僕は嫌だったなあ・・。」
〈僕もその経験あります、それをテーマにして動画を作りましょう。〉
「よし、次は検証動画の内容だ。どうやって通信切断を、意図的に起こすかだが・・・、一体どうしよう?」
〈ワイファイの通信が悪くなる理由を利用するんです、例えばルーターから離れすぎていたり、ルーターとの間に障害物を挟むのです。〉
「なるほど、僕の家のルーターは今いる部屋にあるから、障害物を挟もう。」
〈後、電波干渉を起こす作戦です。電子レンジやコードレス電話は、ワイファイと同じ周波数帯域の電波を起こします。それでワイファイの接続を、不安定にすることが出来ます。〉
「僕の家には電子レンジがあるから、それを使おう。」
〈そうして通信切断が起こりやすい環境で大逆転オセロシアムをプレイして、通信切断になったらAIに代打ちさせる。これを何回か繰り返して、勝率がどれくらいなのかを検証するのです。〉
「これは面白い実験だ、上げるのが楽しみだ!!ところで池上君、年齢の割にインターネットのこと凄く詳しいなあ・・。」
〈あの憎き父から、パソコンのイロハを叩きこまれました。これくらいは、常識の範囲です。〉
「そうか、苦労しているんだね・・・。」
〈でも僕と寛太郎さんは、そんな苦しい毎日から抜け出せる力があるのです。幸い、新型コロナウイルスのおかげで僕には、沢山の時間があります。〉
確かに今全国の小中学校で、新型コロナウイルス感染防止のため入学式が中止になる事が相次いでいる。
「そういえば、池上君の小学校の入学式、今年は中止か?」
〈はい、学校の授業がいつ再開するかは、まだ見当がついていないようです。〉
「そうか・・・池上君は今は暇かい?」
〈はい、勉強は欠かしませんが、勉強していない時が一番暇です。でも今は暇つぶしのきっかけを見つけたから、これから楽しくなりそうです。〉
「そうか、君は面白い人だ。」
寛太郎は笑った。
四月十二日、寛太郎は検証動画の撮影準備を進めた。ルーターから離れるために、いつもとは違う場所で撮影をし、念のため全てのドアを閉めた。準備が整い、撮影が始まった。
「みなさん、おはよう・こんにちわ・こんばんわ、寛チャンネルへようこそ!!さあ今回の動画は、検証企画『大逆転オセロシアムで十回通信切断したら、何回勝てるのか?』でーす!!大逆転オセロシアムをプレイしている皆さんなら、誰もが経験する通信切断ですが、こうなった時AIが代打ちをするのですが、大抵敗北しますよね?私はそれで悔しい思いをするのが多々あります。もうAIがポンコツなのかと、憎くてしょうがないです。そこで今回は大逆転オセロシアムのAIの性能の検証も兼ねて、実験したいと思います。」
そして寛太郎は大逆転オセロシアムを始め、通信対戦のイベントコインが手に入るコロシアムに挑戦した。通信環境が悪いせいか、ダウンロードに時間がかかった。そして最初の、通信切断が起きた。
「おっと来ました、さあ結果発表まで時間がかかるので編集で飛ばします。」
そして十数分後に結果が発表された、結果は敗北だった。
「結果は敗北でした、では次に行きましょう。」
こうしてこれを十回繰り返した、動画の時間は編集のおかげで十分以内にまとまったが、撮影は一時間以上かかった。
「えー、これで通信切断十回が終了しました。結果は・・・3勝7敗でした!やっぱり大逆転オセロシアムのAIは、初心者レベルのようですね。熟練者の皆さんは、通信切断にならないようにくれぐれも気を付けてください。それでは動画は以上です、次の動画で会いましょう。さようなら!」
そして撮影を終えた寛太郎はYouTubeに動画を投稿した、撮影時間が長かったので寛太郎は疲れてベッドで仮眠をとった。
四月十三日、寛太郎は日課の筋トレを終えた寛太郎は、YouTubeのチャンネルを見た。再生回数は一万を超え、コメントは賛否両論が混同していた。例えは賛成は『オセロシアムのAI、本当に使えないなあと思うの、めっちゃ分かるわ!!』・『ていうかAIの代打ち、時間かかりすぎ(怒)。それで敗北とか、理不尽の極み。』・『特にシーズンマッチでやられたら、最悪しか言いようがない。』と、やはり寛太郎と同じ不満を抱えている人がいることが明らかになった。一方否定は『通信切断十回とか、マジ下らねえ・・・。』・『そんなの通信切断を起こした、互いの自業自得じゃないの?』・『私としては、白黒はっきりさせてくれるから、無効試合になるよりましだと思います。もう、このチャンネルの登録、解除します。』と、心無い批判が痛烈に書かれていた。
「みんなのコメント、天国と地獄みたいだなあ・・・。そうだ、他のみんなは見てくれたかな?」
寛太郎はリモートチャットで『ジェンイーラニー』と【ビクトリア―ズ】を呼んだ。
『どうしたの?デネブ軍の方から来るなんて珍しいな。』
【何々、何の話?】
「昨日、YouTubeに投稿した動画見た?」
『もしかして検証動画のやつか?あれはハッキリ言ってくだらないね。』
ジェンイーラニーの言葉に、寛太郎は一瞬固まった。
『だって十回も試合放棄するなんて、愚の骨頂だよ。スタミナは無駄になるし、大抵負けて報酬は貰えない。検証動画を見て、通信切断がいかに最悪なのかを再確認したよ。』
【ジェンイーラニー、それは言い過ぎだよ!むしろ僕は通信切断に注目した、デネブ軍に感心するよ。】
やはりこちらも賛否両論。いや人の意見についての感想には、必ず賛同と反対は付き物である。
「やっぱりこの動画については、いろんな意見があるよな。」
『そりゃそうさ、俺のようなバトルマニアにはどうでもいいように感じるね。』
【意見ばかり言っていても仕方ないよ、無課金でも課金者でもゲームのルールを変えるのは出来ないし、運営に直接電話したらクレーマーになるよ。】
やはり世間の不満を変えるのは、かなりの勇気と行動力が必要だ。
「とにかく感想をありがとう、これで失礼するよ。」
『ああ、今度はいい動画を上げてくれよ。』
【またね。】
絶対にジェンイーラニーに思い知らせてやる・・・という気持ちを胸に秘め、寛太郎はリモートを止めた。
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