第5話 とあるお方とご対面(RPG編)
『チャンチャンチャーン♪』
耳に届く高らかなファンファーレ。
「何、もう朝なのですか?」
何でかな、あまり寝た感じがしない。
ひょっとして、また真夜中に目が覚めたかな?
あれ? でもおかしいな。
私、体が立ってる……。
まさか立ったまま寝ていたの?
いや、それ以前に赤いカーペットの上で、しかも手足が勝手に動いて、その場で足踏み行進しているんですけど?
「いやあああ!?」
さらに私の手足がペラペラで、それに平たくカクカクした玩具のブロックのような四角い服装と体つき。
私、いや、周りの人も人間の形をしていなくカクカクな形をしてる。
それから、この見慣れない高級ホテルのような室内はどこかな?
「おお、気がついたか、勇者よ」
はあ?
あなたは誰ですか?
あと、他のみんなはどこだろう?
「──勇者の次のレベルアップまでの経験値は……」
……さっきから玉座に腰かけたお髭を生やした、赤い服のサンタみたいな格好のおじさんは何を言ってるの?
「──おお、すまん。
すると、別のサンタみたいな人物が私の後ろからやって来る。
「すまんな、ちょっとトイレに行っててな。ダミーを動かしていたんじゃよ」
「……あなたは誰ですか?」
「ワシが君の言っていた、英子ちゃんたちの世界のシステムやシナリオを担当していて、さらに
「ええっ? と言うことはここは天国?」
「違うわい、おたんこなす。
ここは英子ちゃんの記憶とリンクしておる夢の中での場所じゃ。とりあえず落ち着け……」
****
「──それからここはな、ワシがプログラムで動かしておるゲーム世界の一つ、『トンズラクエスト』の中じゃ。容量が非常に少ないブァミコンで起動しているゆえにキャラデザや背景なども雑なドット絵ですまぬな……」
「はあ、グラム? お肉の世界ですか?
今日? は魚料理にする予定なのですが?」
「……まあ、今回はよい。初めてワシにあって緊張しとるのかのう……。
──今日は城下町の宿屋でグッスリ休むんじゃな。そして、また明日から、いつものようにあの世界を存分に
……と意味不明な発言を喋り、王様は私に金色の円盤、いやメダルを数枚くれた。
「カジカジ……これメダルチョコじゃないんですか?」
「いや、それはこの世界のお金じゃ……」
****
大きなお城を出て、城下町に
その宿屋はすぐに見つかった。
だけど鍵がかかっているのか、扉のドアノブが固くて開かない……。
私は近くで一定距離をウロチョロと歩く坊やに、声をかけてみる。
「ねえ、そこの坊や。この扉どうやって開けるの?」
「簡単だよ、えいっ♪」
軽いチャイム音とともに軽々と扉ごと外して見せる坊や。
「あ、ありがとう……」
明らかに扉を壊してるのにいいのかな……。
私は
****
「ようこそ旅の宿へ。一晩10ゴールドになります」
私は歯形がくっきりとついた金貨をカウンターにいた黒ひげのマスターらしき人に渡す。
「お部屋は二階になります。ごゆっくりおやすみなさいませ」
階段を乗ると一瞬だけ暗闇になり、二階に辿り着くと、どっと疲れていたのかすぐに
ああ、夜空に
****
『たっ、大変だー!』
ふいに、私はその宿屋のマスターの声で目を開ける。
ポツポツと天井、いや天井自体がない吹き抜けの空から降ってくる嫌な匂いの雨。
肌に刺さると
『家具の下に隠れろ、酸性雨が降ってきたぞー!』
私は慌ててベットの床下へと逃げ込む。
もう今日は嫌になっちゃう。
何で、この世界の家には天井がないのよ?
夢なら早く覚めてほしい。
もう踏んだり蹴ったりだわ!?
第5話 おしまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます