『小さなお話し』 その106

やましん(テンパー)

『かまぼこ大王』

 『これは、異次元世界におけるフィクションであり、この世のものではない、おとぎばなしである。』


              🍣


かまぼこ司令官


『大王さま。人類が、絶滅の危機の入り口におりますが、まだ、真の危機の認識がありませんような。』


かまぼこ大王


『むりもない。われらは、人類により作られたが、いまひとつ、正月以外にはあまりありがたがられない。だいたい、食品の大切さに関する認識が、失われておる。ばんばん、毎日廃棄しておる、けしからん。われらの存在をアピールできる、良い方法がないモノかなあ。』


かまぼこ司令官


『そうですなあ。一般的には、なんでも、身近から無くなると、大切さがわかるものです。この際、ストライキを打つとか、デモ行進するとか、選挙に出るとか、戦争に出るとか、ですかなあ。やはり。人類のやり方は。』


かまぼこ大王


『ふうん。そうだね。』



  **********     ********



 『ニュースの時間です。本日は、『巨大かまぼこ型宇宙船』出現の続報です。本日夕方4時ごろ、トウキョウ上空に、巨大な、『かまぼこ型』の宇宙船が出現しました。

 上空から、大音声で、シュプレヒコールを、繰り返しています。さらに、大量のかまぼこが、降ってきております。お聞きください。』



 『こちらは、かまぼこ大王であります。人類諸君。君たちは、破滅の瀬戸際にいる。食料を大切にしなければ、10年以内に、諸君は最終的な破滅をするだろう。本日から3日間、かまぼこの販売は、4割引きにせよ。逆らったばあいは、さらに、多くの、高級かまぼこの雨が降るであろう。市場は混乱に陥るのだ。繰り返す。これは、脅しではない。・・・・・・』


 ジェット戦闘機がスクランブル発進したが、かまぼこ型宇宙船は、重力推進であるらしく、圧倒的に早く、瞬間的に垂直方向やら、下降やら、物理学に反する、おかしな飛行ができるうえ(かまぼこは、へっちゃらである)、また『かまぼこみさいる』が、戦闘機のエンジンに、ばんばん突き刺さるので、戦闘機は飛べなくなり、まあ、要するに、人類は『かまぼこ』に、歯が立たないのである。


 また、大量の、高級かまぼこが、空から、降ってきた。


 やましんさんも、必死に、拾い集めていた。


 ふだんは、食えないような、高級品なのであるから。



  **********   **********



『大王様。ものすごく、人気は出ました。多くの災害、戦争避難者、政治的難民のみなさなんにも、かなり大量に配りましたので。が・・・』


『が?』


『我が工場の製造が、追いつかなくて、それに、原価割れになっておりますし、業者さんが困っているようです。さらに、お魚さんから、虐待だとの抗議が来ております。』


『うう、人類のシステムは、難しいのう。やはり、困難である。こりゃあ、滅亡するまで、変わらないであろうな。』


『御意。』



  ************  🐡  ************



 この混乱は、すぐに、収まってしまった。


               😸


 「賞味期限が短いから、はやく食べないとな。あげる。」


 やましんさんは、ひとりで食べきれず、結局、ねこママに、かなりの寄付をした。


 『余った食品を、効率的に活用できる体制が、必要にゃんこ。』


 「そうなんだけど、万一、食中毒とか、事故が起こった時、だれが責任とるの?」


 『そりゃあ、にゃんこ。食べた人やにゃん、にゃん。』


 「それは、いやだろ?」


 『にゃんこ。お腹いっぱい食べたい、というのが、昔の人や、にゃんのゆめだったにゃんこ。また、そういう時が、来るのかにゃん?』


 「うん。たぶん。来るような気がする。怖い。」




       ***************    おしまい





 

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『小さなお話し』 その106 やましん(テンパー) @yamashin-2

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