貰ったギフトが大器晩成?

飛個呂

第1話 夢は冒険者

「大器晩成?」

その場に居た全員が首をかしげた。

そんなギフトは、聞いたこともない。

このギフトを授かった少年の名は、リーグランスといった。

親しいものには、リーランと呼ばれている。


 さて、この世界の人類(亜人を含む)は、少年期にギフトと呼ばれるものを授かる。

人は、満10歳になったときにそれを授かるが、その時は分からない。

明らかになるのは、その次の年の春、「鑑定の儀」と呼ばれる儀式でだ。

ギフトには、様々なものがあった。

「農業」「商業」といった職業名がほとんどだ。

中には、「経験値2倍」とか特殊なものもあったが、目指す職業は分かる。

だが、「大器晩成」で目指すべき職業とは、いったい何なのであろうか。


 リーランが生まれた村には、正式な名前がないほど小さな村である。

人々には、「ギザールの西の村」と呼ばれていた。

村は、グルドナ王国という国にあった。

その国は、マギア西大陸という大陸の南西に位置する。

国の南西に、バルメラガン伯爵領と呼ばれる地域があり、その地域の最大の街の名を「ギザール」といった。

村は、その街の西にあったので、そう呼ばれるのだろう。


 リーランの両親は、すでに亡く、彼を育てたのは祖父だった。

祖父の名は、ミルドルフといい、若い頃は、凄腕の冒険者であったらしい。

両親が亡くなる前は、家族でギザールに住んでいた。

まず、商人だった父が、旅の途中モンスターに襲われて死んだ。

後を追うように母が病死。

その後祖父は、リーランを連れてこの村へ移住したという。

村での暮らしは、小さな小屋に住まい、少しばかりの野菜を作っていた。

祖父に蓄えはあるらしく、そんなに貧しいものでもなかった。


 リーランは、物心ついた頃から身体能力が高かった。

素質があると思った祖父は、リーランに自分の技を教え始めた。

その技とは、剣と体術を組み合わせたようなものだった。

最初は、剣は剣、体術は体術として教えた。

リーランが8歳になった頃から、合成技も教えるようになった。

そして10歳、リーランは、かなり強くなっていた。

そんな彼が、「冒険者になりたい」と思ったのは当然のことだろう。


 鑑定の儀は、鑑定スキルをもつ神官が行う。

スキルをもつ神官がいないときは、「鑑定の目」とよばれる魔道具を使う。

しかし、この村には、そのどちらも無かった。

このような場合、近くの街から神官が遣わされるのが慣わしだ。

この春に来た神官にスキルは無く、魔道具を持参していた。

そして、その魔道具に映し出された文字が「大器晩成」。

その文字を眺めながら、少年は、強く思った。

「それでも僕は、冒険者を目指す」と。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る