Sword Master 殺戮本能

Aurea Mediocritas

死章 老いた剣士

第呪話 終わりの始まり 

 ……、……


 ……、、……


 ……、。、……


 ……、、。…… …… ……



 憎……


 悲……


 苦……


 ……どれ……だ……


 け……の……


 ……時……が……


 過ぎ……た……


 私……私の……民……


 動か……ねば……


 ○○○よ……聴こ……


 えるか……


 私は……必ず……


 必ず……



「……聴こえておるぞ、△△△△、聴こえておる、割れ響く古鐘の様な声だが....」○○○は応える……


 ……お前に……


 掛けた……


『呪』を……


 達して……


 私は……戻る……


 私は……ここ……だ……



 ○○○は周囲を見回す……

 ……

 ……

 ……

 ……!!!……


「……おぉ、そこにおるのか……見えるぞ……△△△△……」○○○の声……


 私……と……


 闘え……


 戦え……


「……戦え……と……お主、身動きひとつ出来んではないか」○○○が言う……


 今は……今はな……


 だが……その内……


 に……


 故に……


 私……と……戦え……


「難しい事を言うな……△△△△よ……」と言いつつ○○○は手に持った片刃の長剣で△△△△を袈裟に切り捨てた……


 ……


 ……


 ……。。。……


 ……薄い天鵞絨を剥がすように、意識が明晰に……


 ○○○は目覚める……横には妻の寝顔……


 ……夢……


 ……両手に残る手応え……殺人……


 ……戦いとは言えぬ……一方的な……


 ……そして浴びた……


 ……△△△△の血飛沫……


 あの時の台詞……

 戦の終わり、ヤツがワシに掛けた言葉、言霊……


『初まった……ヤツは自身の(拘束の呪)から自分を解放し始めた……』○○○は確信する。


『だから、ワシは王都から去ったのだ……』○○○は想う……そして、妻の顔を再度、魅る。

 美しい横顔……

 ○○○は妻の寝顔が好きだった。

 華奢にすらりと伸びた鼻梁……

 それが一番良く判るアングルだった。

 ○○○は片肘を付いて、手に頭を載せ、妻を見る。


『長生きは出来んだろう……』想う……構わない……多くの人を殺したのだ……今更、長生きなど、自分が地獄に叩き落とした皆から、嗤われる。

 好々爺となり、孫に振り回される様な幸せなど味わえる訳もなかろう。

 そういった未来が有ったかも知れぬ多くの人を、ワシは切り捨てたのだ。

 彼等の未来を叩き潰したワシが、呑気に余生を暮らせる訳もない。


 そしてこの事象を考える、△△△△の出てきた意味


 そして……


 ○○○はこれからの試練を理解した。


 これから毎日、ヤツは夢に出てくるのだろう……


 これから毎日、ヤツは殺されに来るのだろう……


 これから毎日、ヤツをワシは殺すのだろう……


 これから毎日、ヤツは次第に動ける様に為るのだろう……


 これから毎日、ヤツは日々、強敵に成って行くのだろう……


 これから毎日、ワシは次第に苦戦して行くのだろう……


 これから毎日、ヤツに殺される迄、この試練は続くのだろう……



 そして、ワシが死ぬという事は、ヤツが(拘束の呪)から解き放たれたと云う事……


 ヤツは自由になる。


 そして再度、悲願を果たす為動き出すだろう。


 それは、我が息子がワシと同じ生業に生きていかねば成らぬと云う事……


 平々凡々と田畑で食物を育て、

 嫁を貰い……子を授かり……育て……

 そして老いて死んで行く……

 そんな幸せな人生を捨てねばならぬと云う事……


 血みどろの人生を生き抜く為に、ワシは、

 姑息で、

 残酷で、

 苛烈な、

 殺しの術を教えねば成らないと云う事……


 優しく……

 日の当たる場所で……

 笑顔が似合う……

 人生を送って欲しかった……


 我が息子に……生きて欲しいから……

 下劣だが他人を殺しても生き残って欲しい。

 だから人の道に外れた畜生の殺戮の術、全て伝えよう。


 それでも……

 殺戮は彼の心の中に痛みを……

 辛くて仕方無いと……

 平気には成らないで欲しい……

 辛いまま……それが、人間の最後の砦……

 殺戮の術を教えておいて、何とも都合の良い事だが……

 せめて、

 心に痛みを……


 傷みを……


 悼みを……

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