桜坂の道

霜花 桔梗

第1話 わたしが可愛い?

 わたしはクラスで孤立していた。中学の頃はそれなりの成績で孤独を好む性格でも楽しかった。いわゆる、高校デビューで失敗してダラダラと一年が過ぎていた。


 二年生になるとわたしは何も求めないでいた。この竹ヶ丘高校でわたしは独りでいる。名前は『今野 麗子』中学の時代はコンレイ等と呼ばれていた。


「どうした、コンレイ?」


 中学の時の特待生である『町田 陸華』である。高校の二年になったので同じクラスになったのだ。陸華はサッカー部のレギュラーでもあり女子にモテモテのイケメンである。そう、わたしとは違う世界の住人であった。何故、わたしに話しかけるのかと言うと……。わたしの机の上に雑巾と汚れたモップが置かれていたからだ。完全な嫌がらせである。陸華は泣きそうなわたしに優しくしてくれた。でも、迷っていた。陸華の存在が嫌がらせを増す気配があったからだ。


「安心しろ、コンレイ。今、片付けるからな。辛かったろうに俺の胸で泣くか?」


 嫌がらせなんて関係ない、わたしの体は素直に陸華の胸の中に飛び込んでいた。


「コンレイが本当は勇気が有って素直なのは知っているぞ」


 わたしはシンデレラになった気分だ。陸華は弱い者イジメをするクラスメイトよりシンデレラを選んだ王子様である。三人ほどの冷たい視線を感じる。


わたしは急いで陸華の胸の中から出るのであった。その日の嫌がらせは昇降口にあった靴がゴミ箱に捨ててあった。


 わたしは『コンレイ参上』とゴミ箱に張り紙をして帰るのであった。自転車置き場に行くと陸華が追ってきた。どうやら『コンレイ参上』の張り紙を見たらしい。


「お前は危なっかしくていけない」


 半分呆れている陸華だが真剣にわたしを心配してくれた。わたしはシンデレラになれるのであろうか……?人生は何があるか分からない。陸華の存在はわたしに希望を与えてくれた。


 わたしは学校から自宅に帰ると自室に入り、学校の机の中にあった封筒を取り出す。大きな文字で『今野さんへ』と書かれていた。ラブレターか思いきや、わたしは封筒を蛍光灯に透かしてみる。すると、カッターの刃のような物が見える。わたしはため息をつくと封筒をゴミ箱に捨てる。


手紙か……。


 そう言えば、陸華に電話番号を今日、教えたっけ。何やら、ショートメールの交換をしたいらしい。気がつくと陸華からショートメールが届いていた。それから、イケメンでモテモテの陸華にわたしの何処が良いのと聞く。


『コンレイは普通に可愛いよ』


 うむ、困った答えだ。確かに陸華はモテモテだが特定の恋人の噂は聞かない。わたしはショートメールで『わたしの机に手紙を入れた?』と打ってみた。


『知らない』


 淡泊な返事だ、嫌がらせの手紙は初めてでは無いので。この話題は終わりである。わたしは気分転換にお風呂に入る事にした。陸華とは初日から深い付き合いをしても困るので。早々にお休みなさいのメッセージを入れる。わたしはお風呂に浸かると『コンレイ』と呼ばれる事を考える。


 『婚礼』ではなく『近霊』に近いあだ名だなと思うのであった。


 長い黒髪は放っておくと本当に幽霊に見られる。中学時代は『コンレイ』と呼ばれてとも抵抗は無かったが。高校に進学すると独りになり、来るのは嫌がらせばかりである。


『コンレイ』と呼ぶのは陸華だけである。


 わたしは少し胸がキュンとする。これは陸華への恋心に近い。陸華に会いたい……。お風呂あがりに髪を梳かしながら。わたしはショートメールを打つか迷っていた。

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