異能力者たち

@tamaneginegio

第1話 出会い①

 一宮春は深夜二時に最寄りのコンビニに行くためにジャージに着替えていた。どうしてこんな夜遅くにそんなことをしているかと言うと、深夜に小腹が空き冷蔵庫の中にあるものを適当に何か食べようと冷蔵庫の扉を開けてみたら悲しいことに何も入っていなかったのである。


そのため俺はわざわざジャージに着替えてコンビニに行くことにしたのだった。

三月の夜は意外と冷える。俺は両手をポケットに突っ込みながら夜道を一人で歩いていた。


 高校二年生の自分がこんな時間に外に出ていると警察に補導される可能性もあるが、コンビニまで五百メートルくらいなのでよっぽど大丈夫だろう。仮に補導されたとしてもコンビニに行っていただけと言えばすぐに家に帰してくれるはずだ。


 コンビニにたどり着き、自動ドアをくぐる。コンビニ店員のやる気のなさそうな「いらっしゃいませ~」という声が聞こえてきた。なぜ深夜のコンビニ店員って長髪の男性が多いのだろう。偏見かもしれないが俺にはそんなイメージがあった。

 適当に商品棚を物色し、小腹を満たせそうなものを手に取りレジへと向かう。


無事に買い物を済ませた俺はのんびりと家までの道を歩いていた。数年前はこんな夜中に外に出歩くと、それだけでなんだか悪いことをしているようで謎にテンションが上がったものだ。高校二年生となった今ではそんなこと全く思わなくなってしまったが。


俺は特に何も考えずぼーっと暗い夜道を一人で歩いていた。

そのとき、背中に何か衝撃を受けた。


「い、いってえ。なんだ?」

思わず大きめな独り言を言いながら後ろを振り返ると、そこには茶髪ショートヘアの女の子が尻もちをついていた。


 突然の出来事に俺は戸惑ったが、相手の女の子は俺にぶつかって尻もちをついてしまったのでとりあえず謝罪する。後ろから急に突撃されただけなので俺は一ミリも悪くないが、一応俺にも最低限紳士としても心構えはあるのだ。


「すみません、大丈夫ですか?」

「いいからこっちに隠れて!」

女の子を起き上がらせようと伸ばした俺の手を、その女の子は遠慮なくつかみ草むらの中へと詰め込んだ。

「痛い痛い!何するんですか!」

「少しの間黙ってじっとしてて」


まったく状況がつかめなかったが、その女の子の迫力に負け素直に従うことにした。


数分後、スーツを着た男たちが走ってくるのが見えた。手にはスマホをもち誰かと通話している。すべての会話が聞き取れたわけではなかったが、何となく、きっと自分の隣にいる女の子のことを探しているのだろうと察せられた。スーツの男たちが遠くへ走って行くのを確認したあと、謎の少女は口を開いた。


「お願い、私を助けてくれない?」


 三月の夜、深夜の人気のない道路で起きたその出会いは一宮春のこれからの人生を大きく変えるものだった。

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