海都オーフェンス 1
駅前広場から郊外の傾斜に作られている高級別荘地帯が広がっており、その中の1つ丁度別荘地帯のど真ん中にその家がある。
豪華な門構えとその奥に広がる整えられた芝生、色とりどりの花々が咲いていて見るからに高級そうなガーデニングを視界に見せてくれる。
街中のレンガ造りとはまるで違う白で彩られた外見、実際内装も天使やらが高級性をだしている。
実際家の中に入ると大きなため息を吐き出してしまうぐらい高級さにドン引きした。
「まあ、この高級さを味わえない奴も数名いるわけだけど」
奈美、海、キャシー、エリー、万理、メイちゃんはすぐさまに街中に駆け出していき、俺達に荷物を一方的に預けて人込みに紛れ込んでいった。
俺は海の荷物を持って自室の隣に奈美の荷物と一緒に投げ入れ、俺は一人部屋を選択して一番ベストポジションを獲得した。
「ソラ! 行こう! 行こう!」
「昼食食べてからな」
ちなみに俺がレクターの財布をご両親から預かっているためこの場に一人残っているのだが、先ほどまで「行きたい」とうるさかった。
俺は実質に荷物をある程度分け、エアロードの尻尾を掴みながら下に降りていく。
食堂では母さんとジュリが昼食の準備をすっかり終えており、既にレイハイムが食事を終えて部屋から出ていくところだった。
レイハイムの無表示が俺の横を通り過ぎる。
「今日一日俺達は出かけるけどレイハイムはどうする?」
「僕は今日一日は本を読んで過ごす」
食堂から「面白くな」というレクターの素直な声が聞えてくるが、レイハイムはその声を華麗にスルーし自室へと帰っていく。
「過ごし方は人それぞれだろ? それより、これからどうする? 奈美達と合流でもするのか?」
「えー! なんで俺がエリーと一緒に過ごさなくちゃいけないわけ?」
「お前………本当に素直だよな。ならどうするんだ?」
俺はレクターの隣に座り、目の前に出てくる食事に手を付け始める。
パンを手に取り、真ん中に切れ目を入れてその中にハムとタマゴサラダを挟んで食べる。
「エリー達はどこに行くって言ってたっけ?」
「その場にお前も居たと記憶しているが………水族館と商店街を見てくるって言っていた気がするけど?」
「じゃあ港行く!」
「何をもってして「じゃあ」なのか分からにけれど、港で良いんだな?まあ、俺も楽しみではあるけれどな。母さん何か買ってこようか?」
「そうね………好きなのでいいわよ。美味しそうなのでお願いね」
パンを食べ終え残りのハムを口の中に放り込み、最後にサラダを食べ終えるのだが、その途中でエアロードとシャドウバイヤが俺の方にグラスを差し出してくる。
「「オレンジジュース!」」
「はいはい。お前達はどうするんだ?母さんと父さんは今日は家に居るらしいけど?」
「「ついて行く! そして何か美味しい物を!!」」
まあ、そういうだろうことは既に予想していたわけだけど。
ジュリも誘うとして最終的なメンバーは俺とジュリ、レクター、エアロード、シャドウバイヤというメンバーになった。
「こういう時ってさ、小説では女の子多数に主人公一人というのが定番だけど、俺達の場合は男二人女一人に性別不明が二人だからね」
「言うな。分かっているから悲しいんだ」
直視しないようにしている場面なのだから、最も今それを味わっているのは間違いなく海である。
「クソ……ソラが財布を握ってさえいなければついて行ったのに!」
「それを言うのならお前の両親に言えよな。お前の財布を預かってほしいって言ってきたのお前の両親だぞ」
まあ、実の息子が信用ならないなんて言われたら笑う気も起きないけどな。
息子の目の前でそれを言いますか。
「お前何をやらかしたんだ?」
「別に………七夏祭のお金が入った時に高級な武器を購入しようと思ったら止められ……」
「それじゃねぇかよ。それ以外に無いだろうに」
俺はサラダの最後の一切れを口の中に放り込み、ジュースで飲み干すと皿をまとめてキッチンに持っていく。
鞄にタオルや財布をいれて街中に出かける準備を終えたころにはすっかり午後二時を迎えており、帝都と違って少々熱い熱気がドアを開けた瞬間に俺達に襲い掛かってくる。
エアロードとシャドウバイヤはものすごい嫌そうな顔に変わる。
ちなみにエアロードは俺のバックの中に、シャドウバイヤはレクターの背中にくっついている。
熱気に負けるわけにもいかないし、街中まで行けば多少は涼しいだろうと思い港行の船着き場まで移動することに。
「しっかし、住みにくそうな場所だよね」
「まあ、実際住んだら案外いい場所なのかもしれないけどな」
坂道の途中からでも見える街並み、複雑に入り組んだ水路と陸路がまるで迷宮のようになっている。
船着き場まで十分も掛からない場所にある。
「フム………この辺は
エアロードの独り言、海竜ってどんな姿だったかな?
「ウミヘビみたいな奴?」
「それはヴァルーチャだろ?この辺はオルルガだ。四つのひれを持っている首の長い奴」
ああ、なんか海竜って二人いるから分かりずらいんだよな。
船着き場に到着すると港まで乗せてもらう事にし、五人分の料金を支払ってから船に乗り込み、複雑な街並みへと入っていった。
「へえ………やっぱり水路から見た街並みは結構違うな。さっき駅前から見た景色と違って見える」
「だね。私結構好きかな………珍しいよね。帝都じゃ見れないもん」
「そうそう。魚介が有名らしいけど、もう一つ
意味の分からない話の切り替え方をしてくるが、聞きなれない言葉を聞いた気がした。
水肉?魚の肉じゃなくてか?
「違う違う。水肉。港で売っているらしいけどねぇ」
「結局なんなんだ? 水肉って」
「バルバルっていう名前の動物のお肉だよ。さっき言っていたオルルガに似ている肉食動物のお肉なの。この辺じゃバルバルのお肉を水肉って呼んで売っているの。堅すぎずほどよく脂ののったお肉なんだけど、水肉の名前通りすごく水っぽいらしいの」
「「へぇ~そんなんだ」」
俺とレクターがほぼ同時に「へぇ~」というのだが、言い出しっぺが知らないというのはどういう事だろうか?
バルバルっか………恐竜みたいなやつなのだろうか?
「見てみたいな」
「肉食動物だろ? 水族館ならともかく、街中にいるとも思えないけど?」
そういう奴は野生か水族館ぐらいでしか存在しないだろうに………。
まあ街中にバルバルなる肉食動物がウロウロしている場所ってすごい嫌だな。
「港の方なら見えるって聞いたけど……噂なのかな?」
「なら港に行けば会えるかもな」
適当な事を言いながら船はあっという間に港へと辿り着いていった。
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