チャプター3 面白爺さんと面白好き天使

 ワシが爺さんとして転生してきた意味……。ワシは頭をフル回転してさらに思考した。物凄く深いテーマじゃ、爺さんという生き物は何処か神がかった神聖な雰囲気もある。

 ましてや、御年90歳じゃから90年という長い年月を積み上げた上に存在している爺さんじゃ。

 という事はつまり……。難しそうなテーマじゃから翔太が好きなネムバーまとめ風にまとめてみるかのぅ。


 ――爺さん(石頭 権蔵いしあたまごんぞう)――

 ‘‘大正、群馬生まれ‘‘一般人・餅屋 ■出典:爺様大辞典


 ‘‘餅屋『ゲンコツ堂』を一代で築く。餅の可能性を最大限に引き出した味はたちまち話題となり県外から訪れるお客も。餅と言えばゲンコツ堂と大評判だ。■出典:YANAFOO


 ‘‘県内の餅つき大会にてゲンコツ堂の店主、石頭さんが餅を喉に詰まらせ救急車で毎年搬送される事はもはや伝統となっている。■出典:市民新聞


 ――最近神隠しにあったように姿を消す爺さんが急増しているらしい……。――


 ‘‘目の前に急に後光が差して吸い込まれるようにして消えてしまったんです、うちの爺さんが‘‘

 ■出典:婆さん自身7月号 梅さん証言


 ‘‘あの人は星になったと思ってる。僕たちをずっと照らしてくれているんだ‘‘

 ■引用:小説『転生した爺・星になった爺さん物語』著 猫太郎


 ニャンコ師匠@neko-〇×@『鳥』フォローする?

 ■ウチも爺さんが転生するの見た事あるぅ!ウケるけど本当に吸い込まれる感じ。ブラックホール?みたいなのに。

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 可笑しなパンダ@ pancyara-〇×@『鳥』フォローしちゃう?

 ■俺ん家の爺さんはまぁ、なにがあってもやっていけそう。異世界でもチートで無双しそう。

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 カマンベール夫人@ camancyu-dayone-〇×@『鳥』フォローしてまうよ?

 ■とにかく不思議な現象。お婆様ではなくお爺様に限定されているのが摩訶不思議。今後の動向が気になります。

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 ――姿を消した爺さん達が転生しているという説も――


 ‘‘年齢は関係ないんです。彼等は選ばれた存在だったという事です。‘‘

 ■出典:和子の証言


 ‘‘生まれ変わってるんですよ。今流行りの転生です。間違いない。

 ■引用:転生マニアのブログ

                        

 ――そんな中、爺さんとして転生してきた理由を考える爺さんが……――


 それはまぁつまりワシの事なんじゃが、結局の所まとめてみたがよく意味が解らない事になってしまったのぅ。まとめた所で結論は出ないという事じゃ。


「あはははっ。まぁ、なんてお茶目な方なんでしょう。とても面白いまとめでしたよ」

 

 パチパチパチとミカエルが絶賛し拍手する。


「まぁ、結論からいいますと爺さんとして転生してきた理由は……」


 ミカエルは澄み切った美しい瞳を柔らかく歪め言い放ったのじゃ。


「僕等天使のになる為です」


 はわー、思わずせき込み愕然とする。

 そうか、ワシはおもちゃになる為に転生しよったんかぁー。驚愕じゃぁー。


「だって、じゃないですか。僕等天使は面白好きのイタズラ好きですから。日々面白い事を探求してる訳ですよ。そんな所にあなたが転生してきた訳ですから勿論遊びますよね。ワイン樽じゃ張り合いがないじゃないですか。なんせ樽だし反応ないし」

  

 ウフフ、と無邪気な笑みを浮かべ、ミカエルは続けおった。


「はーい、それじゃあ早速みんなのチートスキルを付与して最強の爺さんを製造しますよー。サルエル、ありったけの天使ちゃんを呼んでおいでー」


「ちっす」


 サルエルがバサッバサッと羽を羽ばたかせ、舞い上がり何処かへ向かいおった。

 ワシは小鹿のようにプルプルと震えてしもうた。

 チートスキルとはなんぞや?最強爺さんの製造という事は機械化するという事じゃろうか……世も末じゃ。


「そんな小鹿みたいに震えなくても大丈夫ですよ。ちょっと遊んでそしたらすぐ元に戻しますから」


「そんなの嫌じゃ!ワシはカリちゃん人形ではないぞ!」


その時、頭上から幾重に折り重なる羽音と楽しそうな笑い声が降ってきよった。


「俺が先だからな、爺さんの変化を楽しみたいんだから、まずは俺のデーモンズアイ悪魔の目を付与させて」

 

「だめよ、そんな面白そうな事まずは私よ!ワタシが爺さんにコンセプトチャーム誘惑を付与するんだから!」


「お前らいい加減にしろよ!そんな面白そうな事この俺が先に決まってるだろ!アンチトラップ罠解除を付与させてトラップ満載のダンジョンに爺さんを置いてけぼりにしてみてぇーよ」


 それは悪魔の囁きじゃった。空から何十と現れた天使達の顔には好奇心という文字が張り付き、まるで子供のようにキラキラした眼差しをしておる。これは確実にワシが玩具おもちゃとしか見えていないようじゃ。

 まずいのぉ~。爺さん大ピンチじゃ。


「皆さん静粛に!」


 パンッと子気味良い音を立てミカエルが手を打ち鳴らす。

 辺りの空気が静まり返ったようじゃった。


「皆さん解っていると思いますが、天界一の面白好きは誰ですか?」


 ミカエルの目が怪しく光を放つ。


「そりゃー、ミカエル様です」


 やんちゃそうな天使が答える。


「その通りです。という事はつまり面白い事を一番面白い状態で面白く楽しみたい、楽しむ権利があるのも私だという訳です。なんせ一番の面白好きは私ですからね」


 なんじゃその自分本位全開な思想は!?


「という事でこの大天使ミカエルが始めにスキル付与します。異論はないですね」


 周りの天使達がおもちゃを奪われた子供のように落胆した表情で渋々といった感じに頷きおった。


――大ピンチじゃ。ワシはどうなってしまうんじゃ。

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