第九十三話 別れ
無事に俺達は、ジルドとカンヴィアを撃退することができた。
戦闘後、俺は【Lv:35】から【Lv:36】へと上がっていた。
魔導尉の部隊二つなんて、絶対俺達じゃ敵わないと思っていた。
だが、こうして無事に倒すことができた。
最初は不可能に思えていたパルムガルトへの道も、どんどんと現実味を帯び始めていた。
無論、次の戦いはきっと、ここまで上手くいくとは限らない。
ジルドとカンヴィアの連携が取れていないことから始まり、両者が俺達を舐めていたのが、無事に勝利できた最大の要因であるからだ。
最初から慢心なく二部隊が殺しに来ていれば、俺達にまず勝ち目はなかった。
村の決定で軍人達の死体は隠されることになった。
当然だろう。俺達と関わったと分かれば、村がどんな報復を受けるかわかったものではない。
戦闘後、改めて《
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魔導器:《
VIT(頑丈):+40
ATK(攻撃):+28
MAG(魔力):+48
AGI(俊敏):+37
特性:
《悪魔の自我[--]》《太古の知識[A]》
《暴食の刃[--]》《
適合属性:
《火属性》《水属性》《風属性》
《土属性》《闇属性》《光属性》
適合魔法:
《
《
《
《
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
まず、闘気の補正値がこれまでとは桁外れだった。
《魔喰剣ベルゼラ》ほ補正値など、平均で十程度だ。
そう考えればほぼ四倍である。
《魔喰剣ベルゼラ》のお陰でレベルアップが速かった分、いつの間にやら俺のステータスに武器の補正値が全く追い付いていない領域まで来ていたのだ。
数値で比較して、それが明白になった。
適正レベルの魔物に白兵戦で押し負け続けていたので、薄っすらとそろそろ武器を変えるべきなのだろうなとは思っていたが、ここまで差があったとは俺も思っていなかった。
適合魔法の数も跳ね上がっている。
これまでは精々、中位の魔法までだったのだが、上位の魔法も扱えるようになりつつある。
それに何より、《
機会があれば、この辺りの魔法も習得していきたいところだ。
もっとも、悪魔や人間との戦いの機会はそう多くない。
それに、戦いを仕掛けてくる人間や、
気軽に《暴食の刃》で魔法集めをできるような、そんな温い戦いにはならないだろう。
それから……魔導剣に、見知らぬ特性が増えていた。
《魔喰剣ベルゼラ》には、このような特性はなかったはずだ。
【《
……さらっとS級特性が生えていた。
そんな便利な特性があったのならば、戦闘中にでも教えて欲しかった。
戦いの後、俺達は特別にもう一夜村に泊めてもらえることになった。
しっかり休息を摂り、朝に荷物を纏め始めた。
昼の前にはここを出発する。
「ベルゼビュート、《
『うむ、妾がよく使っていた技であるの。百の悪魔に囲まれても、《
「百の悪魔……!?」
さすがにそれはベルゼビュートの元の膨大な魔力があってこそのものだろう。
しかし、それならやっぱり教えておいて欲しかった。
ジルドやカンヴィアとの戦いの中で、使う機会もあったのではなかろうか。
『そうであるか? 別に、使う機会もなかったと思うがの。せいぜい、ジルドの
……まあ、ジルドの
知らなくてよかった、というのも一理あるのかもしれない。
頭に入れておけば優位に動ける場面もあったかもしれないが、命のやり取りの中で、初見の技に頼った行動を取るべきではない。
また、《
できることを全てやらなければ、軍の連中には勝てない。
俺はマニ、エッダ、セリアを連れ、ロービの家を出発した。
「ありがとうございました、ロービさん。本当に、お世話になりました」
「礼を言うのは、こちらの方だ。久々に、賑やかな食卓を囲めた」
ロービは穏やかな笑みを浮かべる。
「それに……村のことも、助かった。お前さん方が来なければ、
「ですが、軍人が来たのは元々、俺達が来たからです」
「それは、元々この村が承知したリスクであった。その上で、お前さん方を匿うという約束だったのだ。戦うことを選んで、村を救ってくれたのはお前さん方だ」
俺は村を見回す。
しかし、またいずれ、この村は魔獣災害に襲われることになる。
マルテイが魔導佐である以上、そのことはきっと変わらない。
こんなこと……ロマブルクは、数ある不幸の一つでしかないのだ。
必ずセリアをパルムガルトへ送り届け、マルティを今の地位から落とさなければならない。
俺は改めてそう思った。
「お元気でいてください。この村は今は大変ですが、きっと、近い内にいい方に向かうはずです」
いや、そうしてみせると思いながら、俺はそう口にした。
ロービと話していると、三人の男が現れた。
ゴヴィンとその取り巻きだ。
ゴヴィンは身体中包帯だらで杖をついていたが、気丈な雰囲気はそのままだった。
「よう、冒険者共。よくぞあれだけ軍人とやりやって、ピンピンしてるもんだ。しかし、これでようやく、厄介者共が去ってくれるわけだな」
「ゴヴィンさん……ゴヴィンさんも、ありがとうございました」
彼がいなければ、きっと村の意見が、俺達を置いておく、と纏まることはなかっただろう。
「チッ、礼なんか言うんじゃねえ。俺らもお前らも、目的を果たすのに丁度良くて、お互い最低限の義理を返しただけだ。だがまさか、あんなにゾロゾロ軍人様が押しかけてくるとは思ってなかったがな。俺らは散々迷惑掛けてくれたお前らが、ちゃんと村から出てってくれるのを確認しに来ただけだ」
「心配しなくても、ちゃんと出発しますよ」
俺は苦笑しながら彼らに頭を下げ、エッダとマニに目で軽く合図をし、歩き始めようとした。
「おい」
背を向けようとした俺へ、ゴヴィンが声を掛けてきた。
「どこまで行きたいのか知らねぇし、知る気もねぇが、死ぬんじゃねえぞ」
「……本当に、ありがとうございました。ゴヴィンさん」
俺達は村を後にして、パルムガルトへの旅路を再開した。
元々、そこまで遠回りをするつもりはなかった。
しかし、これからはより急いだ方がいいだろう。
カンヴィア達と連絡が取れなくなったことに気づけば、軍はより警戒を強め、場所を絞って俺達の捜索に当たってくる。
戦闘を避けるために遠回りする余裕など、もうなくなってしまったのだ。
この方面をカンヴィア達に任せていたと信じて、全力でパルムガルトへ向かうしかない。
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