第14話 元勇者 ここがキャンプ地と叫んで半ギレする
その言葉に周囲の冒険者たちは互いに視線を合わせ、自身の部屋に帰っていく。
そして部屋に戻るとローザやセフィラ、ルシフェルの姿。
ルシフェルは腕を組みながらつぶやく。
「魔獣だったわね──」
「ああ、また魔王軍にでくわすとはね、偶然では考えられないな」
「恐らくそうね、この中の誰かが魔王軍の人間──、それかそれに通じるパイプを持った奴だな」
「まあ、考えたくはないがそうかもしれないな」
このタイミングで魔獣、間違いなく誰かが呼び寄せている。
この中に魔王軍に内通している奴がいると言う事だ──。
「警戒はする必要がある」
「ええ──」
そしてルシフェルは布団にもぐる。今はこれ以上出来ることはない。この話はこれくらいにしよ。
次に俺はセフィラに話しかける。
「セフィラ、ちょっといいかな?」
「何でしょうか?」
「ローザの事なんだけどさ、いつもこんなんなの?」
ローザ、最初に出会った時とずいぶん印象が違う、意外と明るく、よく笑っていた。
ちょっとそのギャップに戸惑っていたので聞いたのだが──。
「いつもはここまで笑顔を見せる事はありません。私も正直驚いています」
セフィラは微笑を浮かべながら答える。
「というかあれが本来のローザの性格かもしれないな」
「そうかもしれません。いつもお嬢様は孤独で味方もいませんでした。ですのでこうして信頼できる人はいたのがうれしいんでしょう」
「元勇者様、とても感謝です。ありがとうございます」
「あ──、いえいえ」
セフィラもとても嬉しそうな表情をしている。。
今はまだ会って間もないけれど、ローザとももっと親しくなりたい。セフィラとだってもっと仲良くなって、本音で打ち明けられるような仲になりたい。
そんな事を考えながら俺は眠りにつく。
2日目、森の中の道を一日中進む。
そして山道を進んでいくうちに夜に。昨日なら一夜を過ごすため、小屋に入る時間なのだが──。
「そろそろ小屋で寝ないと、俺、疲れちったぜ」
「ガイドブックを見てみましょう。どれどれ……」
案内人が持っていたガイドブックを見る。するとさっきたどり着いたこの山のふもとに小屋があり、そこで泊まる指示があった。
「すいません、よく読んでいませんでした~~」
その言葉に冒険者達の中に動揺した雰囲気が流れた。そして一斉に案内人に詰め寄る。
恐らくこいつは俺達の世界で言うと、ゲームをする時に説明書を全く読まないままはじめるタイプなのだろう。
「待ってよ、どういう事だよ! この場所、来た事無いのかよ!」
「そう言われましても俺、こっちの方に来るのは初めてで。よくわからないんっすよ」
完全にあたふたしてモメだす案内人と冒険者達。気持ちはわかるが、今は犯人探しをしている時ではない。とりあえず話の中に入る。
「まて、とりあえず今はそんな争いをしているときじゃない」
俺が慌てて彼ら間に入りの話に割って入る。冒険者は不満げな顔をして話してくる。
「まあ、そうですけど……」
「っていうか初めてなのに一人で行かせているのかよ。最初はベテランの人が付き添いで行かせたりしないの?」
俺はそう案内人に話掛ける、そりゃそうだ。冒険者の案内って結構大変だ。何十人と集団で移動しなければならないし、魔獣が襲ってくることだってある。
新人にいきなりやらせて、うまくいくような代物ではない。
すると案内人は、困り果てた表情をしながら言葉を返してきた。
「最近うちら案内人も国の直轄になりまして。上納金を納めなきゃならなくなって報酬が減ったんです。それでベテランの案内人たちが報酬のいい他国にいっちゃって、案内人がたりないんですよ」
「金の切れ目が縁の切れ目ね」
まあ、今のルシフェルの言葉通りだ──。
とりあえず今やらなきゃいけないのは、寝床の確保。この時間じゃ麓には戻れない。
どうするか──。っていうかあれがあるじゃん!!
「そういえばキャンプみたいなものって人数分あったよな?」
「はい、有事のために人数分のテントを用意して、数人の冒険者に運んでもらっています」
あ、確かさっき歩いている道にあったな。ちょっと岩場だけど平らな場所。あそこなら──。
おまけに他は山道でテントを立てられそうな場所じゃない。
「とりあえず俺に作戦がある。2~3分来た道を戻る。ちょっと来てくれ」
ちょっとごつごつしてるけど仕方ない。これなら寝床は確保できそうだ。
「えっ?」
「どういうことだよ、元勇者さんよ!!」
文句他タラタラの冒険者も中に入る。疲れと困惑から軽くイライラしていた俺はプチっとなる。
そして岩場の方角にピッと指をさす。
「魔獣がいるかもしれないジャングルだここは」
「まあそうですけれど……」
おどおどする冒険者、しかし俺は強気な姿勢を崩さない。
「どこだかよくわからない、そんな場所でテントを張るって言ってるんだよ!!」
「え! 元勇者さん、マジでいってるんですか?」
その言葉に冒険者達は動揺。
「そうじゃなきゃ、寝れねぇんだよ俺達!!」
俺は半ばキレ気味になりながら叫ぶ。俺のその叫びに周囲の冒険者は黙りこくり沈黙。
そしてあきらめたような表情で囁く。
「わかったよ。まあ、他に手段が無いんだもんな」
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