第10話 元勇者 ようやくホテルへ
「セフィラちゃ──ん、陽平さん、ルシフェルさん。ホテルあったよ、いってみようよ!!」
その言葉に「どうせ」とか、「無理」なんてネガティブな感情は存在しない。どんな時も前を向ける子なんだろう。
そしてローザが指を差した先──。
そこには5軒目のホテル。3階建てくらいでやや古びている。今度こそ空き部屋があるといいな──。
カウンターに行くと、先頭を歩いていたローザがフロントの人に質問をする。
「すいません、しばらく止めてほしいんですけれど部屋は空いていますか?」
するとカウンターにいるおじさんが、腕を組んで何かを思い出し言葉を返す。
「あんたたち団体さんかい。4人で1部屋。それでいいんだったら空きがあるよ。ちょうど今日出て行った人がいてねぇ──」
本当か、やっと泊まるところが見つかったんだ──。
俺は思わず心の中でガッツポーズをした。ルシフェルもどこかほっとした表情になる、やはり泊まるところが決まるとほっとするな。
4人で1部屋というのが気になるが、この状況では贅沢は言っていられない。
「部屋は3階の奥に行って右です。ただ少し準備が必要なので少し待っていただけますか?」
「わかりました」
そう言うとフロントの人はカウンターの奥へ。他の従業員と何やらひそひそ話し始めこちらへ向かい階段へ上がっていく。
10分ほどすると再び従業員たちがカウンターにやって来た。
「準備が整いました。部屋は3階に上がって右の奥の部屋です。これがルームキーです」
「わかりました」
そして俺はルームキーを受け取り、階段を上がる。
指示通り3階に上がり廊下を進む。そしてドアのかぎを開け、部屋の中へ。
中はワンルームでそこそこな広さを持つ部屋、その中にベッドが二つある。
「いまさらだけど、ローザたちとも一緒の部屋なんだな」
「そうみたいです、これからよろしくおねがいします。陽君」
すると、ルシフェルがジト目で俺に視線を向け、たしなめるように注意してきた。
「陽君、後部屋が一緒だからって変なことしないでね」
「そんなことしないよ」
皮肉を込めてルシフェルに言葉を返す。長旅の疲れもあり、荷物を床に置くとベッドに身を投げる。しかし以前勇者だった時、魔王と戦った時には考えもしなかったな。
まさかその魔王とルームメイトとなり、一緒に寝る関係になるなんて──。
ずっと歩いたせいか、久しぶりのこの世界と長旅、疲労感がどっと全身を襲う。
「とりあえず、一緒に行動するならステータスが知りたい。教えてくれるかな? 俺達も教えるから」
俺は優しい声色で、2人に質問。すると2人は1回顔を見合わせたあと、セフィラが話始める。
「わかりました、でも笑わないでくださいね。そこまで高くないですし」
「大丈夫、そんなことしないよ」
当たり前だ。ステータスというのは、あくまで強さの物差しの一つでしかない。
低くても長所を活かしたり、策を練ったりして高ランク冒険者に負けないくらい活躍している人だっている。
とりあえず俺達から見せよう。
「じゃあまずは俺達からだな。ステータス・オン」
「私も教えるわ。ステータス・オン」
俺とルシフェルが自分のステータスを2人に見せた。
その数値を見て2人は驚愕し目を点にする。しばしの間言葉を失い唖然としてまう。
「流石は元勇者。種族値600、私たちとは強さが全く違いますね」
「ルシフェルさんも高い種族値、私より断然高いです……」
ローザとセフィラは自信を無くしたような顔つきになってしまう。
「わかりました。まずは私のステータスがこれです」
ランクC
体力 90
物理攻撃 105
物理防御 70
魔法攻撃 60
魔法防御 72
速度 95
種族値487
う~ん、速度がやや高め、物理攻撃が高い後は低い。高い速度と攻撃を活かして活躍する物理アタッカーということか……。
「すいません。私の能力じゃ、役に立つかどうか──」
「そ、そんなことないよ。別に弱いわけじゃないし、うまくやれば強くなれるよ」
謙遜するセフィラ。そ、そんなことないって──。
そうだ、戦いは種族値だけじゃない。彼女ならきっと活躍できる。それにランクCというのは冒険者でも上位4割くらいしかない。これでも冒険者の中でも上位に位置する方なんだ。
「大丈夫だよ、セフィラなら活躍できるよ」
そんなふうに俺は言うと、セフィラは微笑し囁く。
「あ、ありがとうございます。足を引っ張らないよう頑張ります」
「こちらこそよろしく」
「次は私です。これがステータスです」
次にローザが自身のステータスを見せた。
ランクC
体力 71
物理攻撃 35
物理防御 64
魔法攻撃 115
魔法防御 110
速度 81
種族値476
魔法攻撃と魔法防御がかなり高い。速度は並、物理防御は低めで攻撃にいたてはさらに悲惨。
確かにこのステータスじゃ魔法攻撃がしずらいダンジョンだといらない子になってしまう。
おまけに接近戦も弱く、単独だとあまり活躍出来ないだろう。
「私もそこまで強くないです」
うなだれながらしゃべるローザ。
けど彼女にだっていいところはある。俺より上の高い魔法攻撃と魔法防御。
長所を活かせばきっと活躍できるはず。彼女を後方に配置し、前線で俺達が戦っている中、強い攻撃を打ちこませるとか役割をうまく持たせれば十分強いと思う。
「大丈夫、魔法攻撃は高いんだし立派な長所はある。俺達がサポートすれば絶対活躍できるよ。よろしくね」
「はい、わかりました……。です」
ローザはうつむきながら自信なさそうに返事をする。彼女にも自信を取り戻させてあげたいよな──。
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