第20話 イチャイチャと不機嫌
香織は俺のあぐらをかいた足の間に座り俺に身体を預けてきている。俺は両腕で香織をかかえ込むように抱きしめ、時折見つめ合ってはキスをするというのを繰り返していた。
要するに田んぼの真中で星空の下イチャイチャしていただけなんですけど、二人して緊張や不安でいっぱいだったところからのカップル成立なので、タガが外れまくってやや暴走気味だったのは否めないと思う。
ピコン
スマホのメッセージか届き、画面が明るくなる。その光に照らされた香織の顔がまた可愛くてキスしてしまうが、メッセージは連続してピコンピコンと煩い。
『お兄ちゃん、どこにいるの! お腹すいた!』
『誰も帰ってこないんだから、はやく帰ってきて!』
『どうせ香織さんと一緒なんでしょ? 連れてきて構わないからご飯』
恋春がお腹空かせた
時間は八時を少し過ぎた頃、仕方ない、もう少し香織と一緒にいたいけど帰ろう。
最後に香織の首筋に顔をうずめて、香織の香りを堪能する。香織はピクリと身震いしたけど、また身体を預けてくれた。
香織の家の前まで送る。
「じゃ、また明日」
「うん。あした、来てね。待ってる」
さっきまでずっとくっついていたのにいざ離れるとなると寂しくなる。香織も同じらしく、俺のシャツの裾をちょこんと掴んで離さない。街灯から少し離れた暗がりに移動して軽くキスを落とすと「へへへ」っと笑って香織が手を放した。無茶苦茶甘えたがりになった香織が可愛すぎる。
家に帰ると恋春がモノスゴク
野菜や肉を切って炒めて和えるだけの簡単野菜炒めと冷奴、ぬか床からきゅうりを出して切って皿に並べただけの夕飯だけど、恋春的に満足な様子。
これだけなのだから自分で作ればいいのに。
「お兄ちゃんの料理が食べたいの」
つい
祖父母は九時過ぎに、両親は九時半ころ帰宅。
両親は違う会社に勤めているのに帰りが遅い時はほぼ帰宅時刻が一緒なので、多分仕事帰りにどこかで
寝る準備を終えて、自部屋に戻ると今日もまた恋春が俺のベッドに寝転んで漫画を見ている。
「恋春。おまえ、宿題は終わったのか? 」
「ん~あとちょっとぉ」
「じゃあ自分の部屋行ってやってこいよ」
「え~だって、明日香織お
「は? 何言ってるんだ? 明日、香織は俺と一緒にいるんだぞ」
(あ、ヤバい)と気づいたけど既に遅かった。これ
「ふ~ん。お兄ちゃんも明日は香織さんと一緒だんだぁ~ へぇ~ わたし一昨日からお義姉ちゃんと約束していたのになぁ~ おっかしいなぁ~ 何かお二人にあったのかしら?」
コイツ絶対わかっている。分かっていて
「お兄ちゃんはど~して帰ってからず~っと嬉しそうにしていたんだろうねぇ~ あ、お兄ちゃん、唇になにか付いてるよ」
ビクッと思わず唇に手をやってしまった。ニヤニヤが一段と増した恋春、ムカつく。
ピコン 香織からのメッセージが着信。
『ごめんなさい。早速恋春ちゃんにバレました。ちょっと話しちゃったのであとはよろしくおねがいします』
丸投げいただきました。
どうせ後からバレるのなら、恋春にだったら知られても構わないだろうと思い香織個人のことを除いて全部話した。
最初はベッドに座り普通に聞いていた恋春も、段々と寝転がったり俺の膝に寝転んだり、仕舞いにはコアラ抱っこになったりと何時も以上に甘えるようになっていた。
「どうした? 今日はやたらと甘えてくるじゃないか?」
「……だって」
「ん?」
「お兄ちゃん、どこか行っちゃわない?」
まるで赤ちゃんが生まれてお姉ちゃんになった途端お母さんに甘えだした子供みたいだ。
そうか。恋春にとっての甘える相手は未だに俺だったんだよな。小さい頃からずっとだからそうそう変わらないか。俺が香織に『とられちゃう』みたいな感覚なのかな。
俺は恋春を抱いて頭を撫でてやる。
「大丈夫。何があってもどこに行っても俺は恋春のお兄ちゃんだよ。安心していいよ、こーたん」
ガバっと顔を上げて真っ赤な顔の恋春がわちゃわちゃし始めた。因みに「こーたん」は恋春が小学生の頃自分のことを差して言っていた一人称だったりする。
「もうっもうもうっ、そんなんじゃないから! バカ兄ちゃん!」
ぽかぽか叩いてくるけど痛くないし! なんだこの可愛い生き物は!
「いいぞ~甘えてきていいんだぞ~」
「もうっ、そんなことよりちゅーしたの? したんでしょ? どんなだった? レモンの味なの? ねえねえ、教えてよ~」
ギャーギャー騒いでいたら、扉がドンと開く。
「ううううっるさいっ! さっさと寝なさいっ」
母に無茶苦茶に怒られました。いい歳して親にゲンコツ食らうとは思いませんでした。
ボーリョクハンターイ……
(ʘдʘ╬) キッ
……ゴメンナサイ。
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